親の介護をしていると、ほんの少しの言葉や行動にイライラしてしまうことがあります。
「優しくしなければ」と分かっているのに、同じことを何度も言われると強い口調になる。自分の予定を諦めることが続き、「どうして私ばかり」と思ってしまう。そして後から、そんな自分を責めてしまう——。
けれど、イライラするのは親への愛情がないからではありません。
自分ももう若くはなく、自由に使える時間には限りがあります。子どもや孫との時間も大切にしたい。それでも親を放っておくことはできない。その板挟みが続けば、心に余裕がなくなるのは無理もないことです。
介護中のイライラが収まらないときは、無理に優しくしようとするより、親と少し離れることが必要な場合があります。
この記事では、「今日だけ誰かに代わってほしい」「数時間、一人になりたい」というときに頼れるサービスと相談先を、必要な時間別に紹介します。

「もう限界」と感じたら、まず親と少し距離を取る
声を荒らげそうなときや、親にきつく当たりそうなときは、その場で問題を解決しようとしなくて大丈夫です。
親の安全を確認できる状態であれば、いったん別の部屋へ移動する、ベランダや玄関先に出るなどして、少し距離を取りましょう。
親を一人にすることが危険な場合は、家族や近所の協力者、担当のケアマネジャーなどへ連絡します。「こんなことで連絡してよいのだろうか」と迷うかもしれませんが、限界になる前に助けを求めることも介護の一部です。
自分や親を傷つけてしまいそうなほど切迫している場合や、安全を確保できない場合は110番へ連絡してください。けがや体調の急変がある場合は119番です。緊急ではないものの、このまま介護を続けることが難しいと感じる場合は、市区町村の高齢者福祉窓口や地域包括支援センターに相談できます。
数時間・1日だけ介護を代わってもらう方法
一時的に頼れるサービスは、必要な時間や緊急度によって異なります。
| 休みたい時間・状況 | 考えられる方法 | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 今日、数時間だけ | 家族への交代依頼、自費の介護・見守りサービス | 自費サービスは比較的柔軟ですが、空き状況と料金の確認が必要です |
| 日中だけ | デイサービスの臨時利用・利用日の追加 | ケアマネジャーと事業所への相談が必要です |
| 自宅で数時間 | 訪問介護、自費の見守りサービス | 介護保険の訪問介護は、本人に必要な支援が対象です |
| 1泊以上 | ショートステイ | 介護者の休息も利用目的になりますが、早めの予約が必要です |
| 介護者の急病など | 自治体の緊急ショートステイ | 対象要件や利用方法は自治体によって異なります |
デイサービスを臨時で利用・追加する
普段からデイサービスを利用している場合、事業所に空きがあれば、利用日を一時的に追加できることがあります。
朝から夕方まで預かってもらえれば、介護者はまとまった時間を確保できます。外出しなくても、家で眠る、何もせずに過ごすといった使い方で構いません。
ただし、介護保険の利用限度額やケアプランとの調整が必要になる場合があります。まずは担当のケアマネジャーへ、「今週だけでもデイサービスを1日増やせませんか」と相談してみましょう。
デイサービスには、本人の心身機能の維持や孤立の解消だけでなく、家族の介護負担を軽くする目的もあります。
訪問介護を利用して、その間だけ離れる
訪問介護では、ホームヘルパーが自宅を訪れ、本人に必要な食事・排泄・入浴などの介助や生活援助を行います。
ヘルパーが対応している間に、介護者が休んだり、近所へ買い物に出たりできる場合があります。
ただし、介護保険の訪問介護は、単なる留守番や家族のための家事を頼むサービスではありません。本人にどのような支援が必要かによって利用できる内容が決まるため、ケアマネジャーに確認が必要です。
全額自費の介護・見守りサービスを利用する
介護保険外の自費サービスでは、数時間の見守り、散歩や通院の付き添い、家族の外出中の対応などを依頼できることがあります。
全額自己負担になりますが、介護保険よりも時間や内容を柔軟に選びやすく、要介護認定を受けていない人でも利用できるサービスがあります。
「3時間だけ一人になりたい」「子どもや孫と食事に行く間だけ見守ってほしい」というときの選択肢になります。
事業者によって、最低利用時間、交通費、夜間・休日の追加料金、医療行為への対応などが異なります。利用前に料金と対応範囲を確認しましょう。
ショートステイで1泊以上離れる
ショートステイは、介護施設などに短期間宿泊し、食事や入浴、排泄などの介護を受けるサービスです。
介護者の病気や冠婚葬祭だけでなく、身体的・精神的な負担を軽くするためにも利用できます。「特別な用事がないから使えない」というものではありません。
一晩ぐっすり眠る、家族とゆっくり過ごす、一人で何も考えない日をつくる。そのために利用してもよいのです。
一方で、ショートステイは希望日に空きがないことも少なくありません。初めての場所を本人が嫌がる場合もあるため、限界になる前に見学や短期間の利用を経験しておくと安心です。
【関連記事】ショートステイは何をするところ?親を数日預けたいときの利用方法と申し込み先
自治体の緊急ショートステイを確認する
自治体によっては、介護者の急病や事故などで、突然介護できなくなった場合に利用できる「緊急ショートステイ」「緊急生活支援宿泊サービス」などを設けています。
ただし、単に疲れたという理由だけで利用できるとは限らず、対象者や利用できる日数、申込先も自治体によって異なります。
住んでいる市区町村のサイトで、次の言葉を組み合わせて検索してみてください。
- 「市区町村名 緊急ショートステイ 高齢者」
- 「市区町村名 介護者 緊急 宿泊」
- 「市区町村名 家族介護 支援」
見つからない場合は、市区町村の高齢者福祉窓口または地域包括支援センターに尋ねると、地域で利用できる制度を案内してもらえます。
今日すぐ休みたいときは、どこへ連絡すればよい?
介護保険のサービスは、ケアプランの調整や事業所の空き確認が必要なため、当日に必ず利用できるわけではありません。
今日すぐに誰かへ代わってほしいときは、次の順番で連絡すると動きやすくなります。
- 同居・別居を問わず、交代できそうな家族や親族
- 担当のケアマネジャー
- 現在利用しているデイサービスや訪問介護事業所
- 地域包括支援センターまたは市区町村の介護相談窓口
- 登録済みの自費介護・見守りサービス
ケアマネジャーには、遠回しに伝える必要はありません。例えば、次のように話して構いません。
親にイライラしてしまい、今日はこのまま介護を続ける自信がありません。数時間でも離れたいのですが、今から利用できるサービスはありますか。
「家族なのだから頑張らなければ」と、本当の状態を隠してしまうと、支援する側にも緊急度が伝わりません。サービスを探すためにも、今どれほどつらいのかを率直に伝えることが大切です。
要介護認定を受けていない場合の相談先
まだ要介護認定を受けていない場合や、担当のケアマネジャーがいない場合は、住んでいる地域の地域包括支援センターへ相談します。
地域包括支援センターは、高齢者の介護・福祉・保健などに関する総合相談窓口です。本人だけでなく、介護している家族も相談できます。
要介護認定の申請方法だけでなく、自治体独自の見守り支援、家族介護者向けの支援、民間や地域のサービスなどにつないでもらえる場合があります。
地域包括支援センターが分からない場合は、市区町村役場へ「親の住所を担当する地域包括支援センターを教えてください」と尋ねてください。
イライラしてから探さなくて済むように「休むための連絡先」を決めておく
限界に近づくと、サービスを比較したり、何か所も電話をかけたりすることさえ難しくなります。
少し余裕があるときに、次のことをケアマネジャーへ確認しておきましょう。
- 急に数時間休みたくなった場合、最初にどこへ連絡するか
- デイサービスを臨時で追加できるか
- 利用できそうなショートステイはどこか
- 緊急時に受け入れてくれる施設があるか
- 地域に自費の見守りサービスがあるか
- 家族以外の緊急連絡先を登録できるか
連絡先をスマートフォンに登録し、紙にも書いて見える場所に置いておくと、考える余裕がないときにも役立ちます。
「まだ何とかできるから」と先延ばしにせず、ケアマネジャーへ次のように聞いてみてください。
今すぐではありませんが、私が限界になったときに、数時間または1日だけ介護を代わってもらう方法を一緒に考えてほしいです。
この相談をすること自体が、介護を長く続けるための準備になります。
介護から離れることは、親を見捨てることではない
親の介護でイライラするのは、親を大切に思っていないからではありません。
自分の時間がなくなり、仕事や家事、子どもとの時間まで後回しになる生活が続けば、誰でも余裕を失います。介護する側にも、休む時間と自分の人生があります。
数時間でも誰かに任せることは、親を見捨てることではありません。自分と親の両方を守り、これからも介護を続けるための方法です。
特別な用事がなくても、「介護に疲れて休みたい」とケアマネジャーへ相談して構いません。介護者の休息も、ショートステイやデイサービスなどの利用を検討する大切な理由になります。
ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談し、自分の地域で使える「数時間だけ」「1日だけ」の支援を、元気なうちに一つでも見つけておきましょう。
よくある質問
介護に疲れたという理由だけで、ショートステイを利用できますか?
はい。ショートステイは、介護者の病気や冠婚葬祭だけでなく、家族の身体的・精神的負担を軽くする目的でも利用できます。ただし、ケアプランへの位置づけや施設の空き確認が必要です。早めにケアマネジャーへ相談しましょう。
デイサービスは予定のない日にも追加できますか?
事業所の空き、本人の状態、介護保険の利用限度額などによっては、一時的に利用日を追加できる場合があります。担当のケアマネジャーへ「介護者の休息のために追加したい」と伝えてください。
今日すぐにショートステイを利用できますか?
通常のショートステイは予約が必要なため、当日利用できるとは限りません。介護者の急病など緊急性が高い場合は、ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護窓口へ連絡し、緊急ショートステイなどがないか確認してください。
親がサービスを嫌がる場合はどうすればよいですか?
最初から宿泊を勧めると、本人が不安を感じることがあります。まずは短時間のデイサービスや見学から始める、本人が納得しやすい目的をケアマネジャーと考えるなど、段階的に進める方法があります。介護者だけで説得しようとせず、専門職にも間に入ってもらいましょう。
参考情報
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム・短期入所生活介護(ショートステイ)」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group12.html - 厚生労働省「介護サービス情報公表システム・通所介護(デイサービス)」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group7.html - 厚生労働省「介護サービス情報公表システム・訪問介護(ホームヘルプ)」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group2.html - 厚生労働省「介護サービス情報公表システム・地域包括支援センター」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish_seikatsu/
※介護保険サービスの利用条件、自己負担額、自治体独自の支援内容は、本人の状態や地域によって異なります。担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の窓口へご確認ください。

