「親の年金だけでは介護費用が足りない」
「親には貯金もなく、自分の生活にも余裕がない」
「子どもである自分が払うしかないのだろうか」
親の介護が必要になると、このようなお金の問題に直面することがあります。
親に十分な年金や預貯金があれば、必要な介護サービスを選びやすいかもしれません。しかし、親の収入だけでは足りず、子どもにも継続して援助できる余裕がない家庭もあります。
そのような場合に、子どもが生活費や老後資金を削り続けるだけでは、いずれ親子ともに生活が立ち行かなくなる可能性があります。
介護費用を負担できないと感じたときは、家族だけで解決しようとせず、早めにケアマネジャーや行政の窓口へ相談することが大切です。
この記事では、親の年金が少なく貯金もない場合に、どこへ相談すればよいのか、利用できる可能性がある制度とあわせて解説します。

親にも子どもにもお金がないときは、まず相談してよい
親の介護費用が足りないとき、「家族の問題だから、子どもが払うしかない」と考えてしまう方もいます。
しかし、子どもにも住宅費や教育費、日々の生活費があります。さらに、自分自身の老後資金を準備しなければならない年代と、親の介護が重なることも珍しくありません。
一時的な立て替えならできても、毎月数万円の負担が何年も続けば、子どもの生活にも大きな影響が出ます。
大切なのは、無理をして支払い続けることではなく、次の事実をそのまま相談先へ伝えることです。
- 親の年金だけでは介護費用が足りない
- 親には取り崩せる預貯金がほとんどない
- 子どもから継続的に援助することは難しい
- 現在の介護サービスや施設費を払い続けられない
「家族がお金を出せないと言うのは恥ずかしい」と思う必要はありません。
収入と支出の状況が分からなければ、ケアマネジャーや行政も、その家庭に合った支援を検討できません。支払いが滞ってからではなく、足りなくなると分かった段階で相談しましょう。
最初に親のお金と子どものお金を分けて整理する
相談する前に、親本人の収入・資産・支出を簡単に整理しておくと話が進みやすくなります。
確認したいものは次のとおりです。
親本人の収入
- 老齢年金、遺族年金などの受給額
- 年金生活者支援給付金
- その他の定期的な収入
年金額は、通帳に振り込まれた金額だけでなく、年金振込通知書や年金額改定通知書でも確認できます。
親本人の資産
- 普通預金・定期預金
- 有価証券
- 解約返戻金のある生命保険など
- 土地や建物
- その他、換金できる資産
制度によっては、収入だけでなく預貯金などの資産も確認されます。
毎月かかっている費用
- 家賃や住宅にかかる費用
- 食費・水道光熱費
- 医療費・薬代
- 介護サービスの自己負担額
- おむつや介護用品代
- 配食・交通・日用品などの費用
- 施設に入所している場合は食費・居住費・管理費
細かく家計簿を作る必要はありません。まずは「毎月いくら入り、いくら足りないのか」を把握することが目的です。
なお、親の介護費用と子どもの生活費は、できるだけ分けて考えましょう。
子どもが援助できる金額を先に決めるのではなく、まず親本人が利用できる制度や支援を確認することが大切です。
相談するときは「子どもからの継続援助は難しい」と伝える
介護費用について相談するときは、遠慮して「少しなら何とかします」と言うより、継続できないことを具体的に伝えたほうが状況を理解してもらいやすくなります。
例えば、次のように伝えます。
親の年金と預貯金だけでは、今後の介護費用を支払えません。私自身も生活に余裕がなく、継続的な援助は難しい状況です。現在のサービス内容や、利用できる制度について相談したいです。
すでに支払いが苦しくなっている場合は、そのことも隠さず伝えましょう。
来月以降の支払いが難しくなる可能性があります。滞納する前に、費用を抑える方法や相談できる窓口を教えてください。
家族が援助できる前提で話を進められそうになった場合も、「毎月の援助はできません」と伝えて構いません。
最初に相談したい4つの窓口
介護費用を払えないと感じたときは、次の窓口へ相談します。
1.担当のケアマネジャー
すでに介護保険サービスを利用している場合は、まず担当のケアマネジャーに相談します。
ケアマネジャーには、本人の状態だけでなく、家族が負担できる費用にも限界があることを伝えましょう。
現在のケアプランを確認し、必要な支援を残しながら、サービスの回数や組み合わせを見直せる場合があります。
ただし、費用を抑えるために必要なサービスまで減らすと、家族の介護負担が増え、結果として在宅介護を続けられなくなることがあります。
金額だけでなく、家族が無理なく続けられるかも含めて相談することが重要です。
2.地域包括支援センター
担当のケアマネジャーがいない場合や、介護・生活・お金の問題が重なっている場合は、親が住んでいる地域の地域包括支援センターへ相談できます。
地域包括支援センターは、高齢者の介護や暮らしに関する総合相談窓口です。
介護保険だけでは解決しにくい場合も、行政や福祉関係の窓口につないでもらえることがあります。相談は無料です。
3.市区町村の介護保険窓口
高額介護サービス費や負担限度額認定など、介護保険に関する軽減制度については、市区町村の介護保険担当窓口で確認できます。
同じように見える制度でも、対象になる費用や申請条件は異なります。
「親の収入と預貯金では介護費用を払い続けられない」と伝え、利用できる制度をまとめて確認してもらいましょう。
4.福祉事務所や生活困窮に関する相談窓口
親の年金だけでは介護費用だけでなく、食費や住居費などの生活費も足りない場合は、福祉事務所や自治体の生活相談窓口へ相談します。
生活保護を含め、本人の収入・資産・生活状況に応じた支援を検討してもらえます。
「まだ生活保護を申請するか決めていない」という段階でも、相談することは可能です。
介護費用が足りないときに確認したい制度
利用できる制度は、親本人の所得・資産・世帯状況・利用しているサービスなどによって異なります。
以下は代表的な制度です。
高額介護サービス費
1か月に支払った介護保険サービスの自己負担額が、所得区分ごとに定められた上限額を超えた場合、超過分が支給される制度です。
ただし、食費・居住費・日用品費、介護保険の支給限度額を超えて利用した分などは、原則として対象になりません。
対象になる方には自治体から案内が届く場合もありますが、分からないときは介護保険窓口へ確認しましょう。
介護保険負担限度額認定
所得や預貯金などが一定の要件を満たす場合、介護保険施設やショートステイを利用したときの食費・居住費が軽減される制度です。
原則として申請が必要です。親が施設に入所している、またはショートステイを利用している場合は、対象になるか確認してみましょう。
高額医療・高額介護合算療養費制度
同じ医療保険に加入している世帯内で、医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、年間の上限額を超えた場合に、超過分が支給される制度です。
医療費と介護費の両方が継続してかかっている家庭では、対象になる可能性があります。
加入している医療保険や市区町村の窓口へ確認しましょう。
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
低所得で生活が特に困難な方について、制度を実施している社会福祉法人が、対象となる介護サービスの利用者負担を軽減する仕組みです。
利用できるサービスや条件、実施状況は自治体などによって異なります。
現在利用している事業所が対象かどうか、ケアマネジャーや市区町村へ確認してみましょう。
自治体独自の助成・減免制度
自治体によっては、次のような支援を行っている場合があります。
- 紙おむつ代の助成・現物支給
- 配食サービスへの助成
- 通院や移送に関する支援
- 介護保険料の減免・徴収猶予
- 緊急通報装置などの貸与
- 高齢者向けの生活支援
制度の名称や内容は地域によって異なります。
自治体のホームページだけでは分かりにくいこともあるため、「低所得の高齢者が利用できる支援をまとめて知りたい」と窓口で尋ねる方法もあります。
年金生活者支援給付金
公的年金などの収入やその他の所得が一定基準以下の方に、年金へ上乗せして支給される給付金です。
対象となる場合は請求手続きが必要です。親が受給しているか分からない場合は、年金の通知書を確認するか、年金事務所などへ相談しましょう。
詳しい要件は、日本年金機構の年金生活者支援給付金の案内で確認できます。
生活保護と介護扶助
年金などの収入や活用できる資産があっても、最低限度の生活を維持できない場合は、生活保護の対象になる可能性があります。
生活保護を受給し、介護が必要と認められた場合は、介護扶助によって介護サービスに必要な費用が給付されます。
年金を受給している方でも、収入が最低生活費に満たなければ対象になる可能性があります。ただし、実際に利用できるかどうかは、収入・資産・生活状況などをもとに福祉事務所が判断します。
「年金をもらっているから相談できない」と決めつけず、生活そのものが成り立たない場合は福祉事務所へ相談しましょう。
在宅介護の費用が払えない場合
在宅介護では、介護サービスの自己負担以外にも、おむつ代、配食費、医療費、交通費、日用品費などがかかります。
費用が足りないからといって、訪問介護やデイサービスをすべてやめてしまうと、家族の負担が急激に増える可能性があります。
まずはケアマネジャーに、次の点を相談してみましょう。
- 本人に本当に必要なサービスは何か
- 回数や時間を調整できるサービスはあるか
- 他のサービスへ変更できるか
- 自治体の助成を利用できるか
- 家族の介護負担が増えすぎないか
単純に利用回数を減らすのではなく、介護を続けるために必要な支援を残すことが大切です。
施設費用が払えない場合
親が施設に入所している、またはこれから入所を検討している場合は、表示されている月額料金だけでなく、実際の総額を確認します。
施設では、介護サービス費の自己負担に加えて、食費・居住費・管理費・医療費・おむつ代・日用品費などがかかる場合があります。
すでに入所していて支払いが難しくなった場合は、滞納するまで黙って待たず、早めに施設の相談員やケアマネジャーへ伝えましょう。
- 負担限度額認定を利用できないか
- 所得に応じた軽減制度はないか
- 費用の低い居室へ変更できないか
- 特別養護老人ホームなど、別の選択肢を検討できないか
- 行政の福祉窓口へつないでもらえないか
施設を変更する場合も、すぐに入所先が決まるとは限りません。支払いが難しくなる見込みが分かった時点で相談を始めることが重要です。
子どもが避けたい3つのこと
借金をして介護費用を払い続ける
一時的に支払えても、翌月以降も不足が続けば借金が増えてしまいます。
不足が毎月発生している場合は、立て替えを繰り返す前に介護サービスや生活全体の見直しが必要です。
自分の生活費や老後資金をすべて取り崩す
親を助けたいと思うのは自然なことです。
しかし、子ども自身の生活が維持できなくなれば、親子ともに支援が必要な状態になる可能性があります。
援助できないことを責めるのではなく、継続できる範囲を明確にしましょう。
お金がないことを相談先に隠す
経済状況を伝えないままでは、支援者も現在のサービスを支払える前提で考えてしまいます。
「払えなくなってから相談する」のではなく、「このままでは払えなくなる」と分かった段階で相談することが大切です。
よくある質問
子どもが親の介護費用を払えないと言ってもよいですか?
子ども自身の生活に余裕がなく、継続的な援助が難しい場合は、その状況をそのままケアマネジャーや行政窓口へ伝えましょう。
援助できることを前提にせず、まず親本人の収入・資産と、利用できる制度を確認します。
兄弟姉妹が費用を負担してくれない場合はどうすればよいですか?
一人の子どもだけが立て替え続けると、経済的にも精神的にも負担が集中します。
家族間で解決できない場合も、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ現在の状況を伝え、公的な支援を含めて相談しましょう。
立て替えた場合は、金額・日付・目的が分かるように領収書や記録を残しておくことも大切です。
親が生活保護を嫌がる場合はどうすればよいですか?
生活保護という言葉に抵抗を感じる方もいます。
まずは「申請を決めるため」ではなく、「今後の生活について相談するため」と説明し、福祉事務所や地域包括支援センターへつながる方法があります。
本人だけで相談することが難しい場合は、家族が先に相談できるか窓口へ確認してみましょう。
まだ滞納していなくても相談できますか?
相談できます。
むしろ、滞納する前のほうが、サービスの見直しや申請手続きを進めやすくなります。
「あと何か月なら支払えるか」「毎月いくら不足しているか」が分かれば、その情報も伝えましょう。
まとめ|親子で共倒れになる前に「払えない」と伝える
親の年金が少なく、貯金もなく、子どもにも介護費用を負担する余裕がない場合、家族だけで解決しようとする必要はありません。
まずは親本人の収入・資産・毎月の支出を整理し、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談しましょう。
利用できる可能性がある制度には、次のようなものがあります。
- 高額介護サービス費
- 介護保険負担限度額認定
- 高額医療・高額介護合算療養費制度
- 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
- 自治体独自の助成・減免
- 年金生活者支援給付金
- 生活保護・介護扶助
制度の対象条件は、親の所得や預貯金、世帯状況、自治体などによって異なります。
「子どもが何とかしなければ」と一人で抱え込まず、継続的な援助が難しいことを率直に伝えてください。
親の生活を支えることと、子ども自身の生活を守ることは、どちらも大切です。支払いが滞る前に相談することが、親子の共倒れを防ぐ第一歩になります。
介護にかかる費用の目安や、年金だけで介護できるケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。

