アメリカでは親の介護どうしてる?

「日本の介護制度は恵まれている」と言われることがありますが、アメリカでは親の介護をどのようにしているのでしょうか?

この記事では、アメリカにおける親の介護の仕組みと、日本との違いをわかりやすく解説します。

日本と違う5つの特徴と制度

アメリカと日本の国旗に囲まれたタイトル「アメリカでは親の介護をどうしているのか?」が中央に配置され、下部に介護者と車椅子、チェックリスト、金袋のアイコンが並ぶ比較解説用のアイキャッチ画像。

1.アメリカには「介護保険制度」がない

アメリカには、日本のような全国共通の公的介護保険制度はありません。そのため、介護サービスの利用には主に次の3つの方法があります。

  • 私費での自費介護サービス利用
  • 民間の長期介護保険(LTCI:Long Term Care Insurance)
  • 低所得者向けの公的支援(Medicaid)

つまり、介護にかかる費用は「自己責任」が基本なのです。

2. 費用は高額。老人ホームは月50万円以上が相場

アメリカでは介護サービスの費用が非常に高く、以下のような例があります。

サービス内容月額の平均費用
訪問介護(週数回)約3,000〜4,000ドル(約45〜60万円)
アシステッドリビング(軽介護付き住宅)約4,500ドル(約70万円)
スキルド・ナーシング施設(重度介護)約9,000ドル(約140万円)

※地域により大きな差があります。

3. 家族介護が基本、特に娘が担い手に

日本と同様、家族が介護を担うケースが多く、特に「娘」「義理の娘」が主な担い手となっている点も似ています。ただし、共働きが主流のアメリカでは、介護離職よりも「仕事を続けながら遠隔で支援する(Distance Care)」という選択がよく取られます。

🏛 4. 公的支援制度「Medicaid」とは?

低所得者の場合、Medicaid(メディケイド)と呼ばれる州ごとの医療・介護の支援制度が利用できます。ただし以下のような特徴があります。

  • 所得・資産制限が非常に厳しい
  • 州によって給付内容・対象施設が異なる
  • 希望してもすぐに入れない「待機リスト」問題もある

つまり、対象者は限られており、すぐに使えるわけではありません。

💡 5. 在宅介護を支える支援や工夫

アメリカでは、次のような支援策や仕組みも普及しています。

  • 遠隔介護(Distance caregiving):Zoomや電話を活用し、離れた場所から管理
  • 地域NPOによる支援:買い物代行、食事配達(Meals on Wheels)など
  • 成年後見制度(Guardianship):認知症や意思判断困難な親の資産を管理
  • 訪問看護+テクノロジーの活用:AIやカメラによる見守りシステム

このようにアメリカでは、「離れて暮らす子ども」が高齢の親を支えるケースが多く、IT技術や地域コミュニティの支援が重要な役割を果たしています。特に、ZoomやLINEのようなビデオ通話の活用は、日常の見守りや医師との遠隔診療にも応用されており、「デジタル介護」とも呼ばれる動きが進んでいます。

また、近年注目されているのが「ケアギバー(Caregiver)支援プログラム」です。これは、介護を担う家族がうつ病やストレスを抱えるのを防ぐために、メンタルケアやレスパイト(介護休息)を提供する制度です。多くの州やNPOでは、こうした家族向けサポートに力を入れており、「介護する人も守られるべき」という認識が広がりつつあります。

さらに、アメリカではボランティアや地域教会のネットワークも強力で、食事配達や見守り訪問などを無料で受けられる場合もあります。これらの工夫を組み合わせることで、「施設に入れなくても安心して暮らせる地域づくり」が模索されています。

日本との違いをまとめると…

比較項目アメリカ日本
公的制度なし(Medicaidは限定的)介護保険制度あり
利用費用非常に高い所得に応じて1〜3割負担
支援の主体自助・家族・民間保険公助+家族
利用までのハードル高い(費用・審査)比較的低い(要介護認定)

この様にな表にしてみると、日本とアメリカの違いがよくわかります。

🌎 余談:移民国家アメリカと「多様な介護観」

アメリカは多民族国家であり、介護のあり方も文化や宗教、出身地によって大きく異なります。例えばラテン系の家庭では、親を施設に預けることを「家族の責任放棄」と見なす傾向が強く、世代を超えた同居や親の介護を当然と考える文化も根付いています。

一方で、白人家庭では早期からアシステッドリビング(介護付き住居)を利用することが一般的になってきています。アジア系移民は日本や韓国、中国などと同様に、親を自宅で看取る文化を重視する家庭もあります。

つまり、アメリカでは「公的制度がないから皆が同じ苦労をしている」というわけではなく、文化背景によって“介護の選択肢”も変わるという現実があります。

また、富裕層は専属の介護士(ライブインケアギバー)を雇って自宅で介護する一方で、低所得層は地域NPOの助けやMedicaidで何とか暮らす…という“介護格差”も大きな問題になっています。

🤝 読者へのメッセージとして(日本で介護する方へ)

この記事を読んで「アメリカの方が大変そう…」と感じた方も多いかもしれません。しかし、日本でも「制度はあるけど、知られていない」「相談先がわからない」といった壁がまだ多くあります。

だからこそ、日本の介護制度を正しく知って活用することが、今できる最大の備えかもしれません。

最後に:アメリカの介護から学べること

アメリカでは「親の介護はまず自分で何とかする」「公的支援は使いにくい」という現実があります。日本の介護保険制度は、まだまだ改善点はあるものの、家族の負担を軽減するしくみが整っていると言えるでしょう。

だからこそ、私たちも利用できる制度やサービスを知り、活用することが大切です。「アメリカはこうしているから、日本も…」と考えるのではなく、「日本の制度をうまく使う」ことが、今の私たちにとって現実的な答えかもしれません。

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