「デイサービスの日になると、親が嫌がる」
「施設から帰ったあとは、いつもより口数が少ない」
「職員の対応に気になるところがあるけれど、変更を申し出てもよいのだろうか」
介護サービスを利用するなかで、このような迷いを抱えることがあります。
本人が嫌がっていても、慣れない環境への戸惑いや、その日の体調が影響している場合があります。一方で、サービス内容や職員との関わり方が本人に合っていない可能性もあるため、すべてを「慣れるまでの我慢」で済ませることはできません。
デイサービスや訪問介護などの在宅サービスは、ケアプランや受け入れ状況を確認しながら、別の事業所へ変更できる場合があります。特養や有料老人ホームなどの入所先を変える場合は、空室、入所条件、費用、待機期間なども確認しなければなりません。
この記事では、介護サービスや施設が合わないと感じたときの確認ポイント、相談する順番、変更を検討するときの注意点を分かりやすく解説します。

この記事では、デイサービスなどの通所サービス、訪問介護などの在宅サービス、特養・老健・有料老人ホームなどの入所施設をまとめて取り上げます。変更の手続きや相談先はサービスの種類によって異なるため、それぞれを分けて説明します。
「合わない」と感じたら、まず理由を整理する
本人が介護サービスを嫌がっているからといって、必ずしも事業所や施設に問題があるとは限りません。
初めての場所や慣れない人への不安、集団で過ごすことへの疲れ、入浴やレクリエーションへの抵抗など、本人なりの理由が隠れていることがあります。
一方で、職員との関係、ケアの方法、活動内容、食事、送迎時間、ほかの利用者との関係などが合っていない場合もあります。
| 考えられる理由 | 確認したいこと |
|---|---|
| 慣れない環境への不安 | 利用を始めてからどのくらいか、特に嫌がる時間帯はあるか |
| 体調や疲労 | 利用時間が長すぎないか、帰宅後の疲れが翌日まで続いていないか |
| 活動内容が合わない | レクリエーションや集団行動を負担に感じていないか |
| 職員との関わり | 苦手な声かけや介助方法がないか |
| ほかの利用者との関係 | 落ち着かない席や苦手な人間関係がないか |
| サービス内容への不満 | 契約時の説明と実際の対応に違いがないか |
本人がうまく理由を説明できない場合は、「行きたくないの?」と結論を求めるより、「何をしている時間が疲れる?」「食事やお風呂はどう?」など、答えやすい質問に分けて聞いてみましょう。
認知症などで言葉による説明が難しい場合は、利用前後の表情、睡眠、食欲、排泄、落ち着かなさなどを記録しておくと、事業所やケアマネジャーへ相談するときに状況を伝えやすくなります。
介護サービスや入所施設は変更できる?
介護サービスを利用する事業所や入所施設は、変更を検討できます。ただし、利用しているサービスの種類によって手続きや注意点が異なります。
デイサービス・訪問介護などを変更する場合
デイサービスや訪問介護などの在宅サービスは、担当のケアマネジャーへ相談し、別の事業所の空き状況や対応できる曜日・時間、サービス内容などを確認します。
新しい事業所が決まったら、ケアプランの見直しや契約手続きを行います。現在利用している事業所へ伝える時期や解約方法は契約内容によって異なるため、重要事項説明書や契約書も確認してください。
特養・老健・有料老人ホームなどを変更する場合
入所施設を移る場合は、新しい施設への申し込みや入所判定、空室待ちなどが必要になることがあります。施設によって対象者、費用、医療的ケアへの対応、退去や解約の条件も異なります。
現在の施設を先に退去してしまうと、次の入所先がすぐに決まらない可能性があります。原則として、新しい受け入れ先と入所時期の見通しを確認してから、現在の施設との退去手続きを進めましょう。
老健は在宅復帰を目指す施設であり、特養や有料老人ホームへの住み替えとは事情が異なります。施設の相談員、担当のケアマネジャー、地域包括支援センターなどに早めに相談してください。
変更を繰り返す前に、希望条件を整理しておく
介護サービスを変更すること自体は、悪いことではありません。ただし、理由を整理しないまま次の事業所を選ぶと、同じ不満が繰り返される可能性があります。
変更先を探す前に、「何が合わなかったのか」「次の事業所には何を希望するのか」を具体的にしておきましょう。
- 少人数で落ち着いて過ごせる場所がよい
- レクリエーションへの参加を強く求められない方がよい
- 入浴介助の方法を相談したい
- 認知症への対応経験が豊富な事業所を希望している
- 家族への連絡方法や報告内容を確認したい
希望をすべて満たす事業所が見つかるとは限りません。本人と家族にとって譲れない条件と、調整できる条件を分けておくと、次の候補を選びやすくなります。
すぐに変更するか、しばらく様子を見るかの判断目安
本人が一度「行きたくない」と言っただけで、すぐにサービスを変更する必要があるとは限りません。その日の体調や気分、慣れない環境への緊張が影響していることもあります。
ただし、嫌がる状態が続いている場合や、利用前後の様子に大きな変化がある場合は、そのままにせず理由を確認しましょう。
少し様子を見ながら相談できるケース
- 利用を始めたばかりで、本人がまだ環境に慣れていない
- 特定の活動やレクリエーションだけを嫌がっている
- 利用時間が長く、帰宅後に疲れているように見える
- 送迎時間や座席など、調整できそうな不満がある
- 職員に希望が十分伝わっていない可能性がある
このような場合は、利用時間や過ごし方を調整することで改善することがあります。本人の様子を記録し、事業所やケアマネジャーへ具体的に伝えてみましょう。
早めに変更を検討したいケース
- 本人が継続して強い拒否を示している
- 利用後に不眠、食欲低下、強い落ち込みなどが続いている
- 相談しても状況が改善せず、説明も十分にない
- 契約時に聞いていたサービスが受けられていない
- 本人や家族と事業所との信頼関係を保つことが難しい
本人の心身への負担が続いている場合は、「もう少し慣れるまで」と長期間我慢せず、ほかの事業所や施設についても相談してみましょう。
虐待や重大な事故が疑われるときは、相性の問題で済ませない
次のような状況がある場合は、単に「施設が合わない」「職員との相性が悪い」という問題ではありません。
- 原因について説明のない傷やあざがある
- 怒鳴られる、無視される、侮辱されるなどの話を本人がしている
- 必要な食事、水分、排泄介助などが行われていない疑いがある
- 身体拘束が疑われる
- 事故があったのに、家族への説明や報告がない
- 預けた金銭や持ち物について不明な点がある
まず本人の安全を確認し、分かったことを日時とともに記録してください。傷や持ち物の状態などは、本人の尊厳に配慮したうえで記録しておくと、相談時に状況を伝えやすくなります。
事業所内で解決することが難しい場合や、事業所へ直接伝えることに不安がある場合は、市区町村の介護保険担当窓口や高齢者虐待の相談窓口、地域包括支援センターなどへ相談できます。介護サービスについての苦情は、都道府県の国民健康保険団体連合会へ相談する方法もあります。
本人の生命や身体に差し迫った危険がある場合は、ためらわず警察や救急へ連絡してください。
相談前に本人の様子を記録しておく
「なんとなく合わない」と伝えるだけでは、事業所やケアマネジャーも原因を判断しにくいことがあります。数回分でもよいので、利用前後の様子を記録してみましょう。
| 確認すること | 記録する内容 |
|---|---|
| 利用前 | 嫌がり方、本人の言葉、睡眠や体調 |
| 利用後 | 表情、会話、疲れ、食欲、落ち着かなさ |
| 嫌だったこと | 入浴、食事、活動、送迎、職員の声かけなど |
| 起きた日時 | いつ、何回くらい続いているか |
| 家族の希望 | 利用時間や過ごし方をどう変えてほしいか |
記録は、本人を問い詰めるためのものではありません。嫌がる場面や体調との関係を整理し、どのような調整が必要なのかを考えるために使います。
介護サービスが合わないときの相談と変更の流れ
本人の安全に関わる緊急性がない場合は、次の順番で状況を整理すると進めやすくなります。
1.本人の希望や困っていることを確認する
まず、本人が何を嫌がっているのかを確認します。「行きたくない」という言葉だけでなく、利用時間、入浴、食事、活動内容、人間関係などに分けて聞いてみましょう。
本人が言葉で説明することが難しい場合は、利用前後の表情や体調の変化を手がかりにします。
2.事業所や施設へ具体的に相談する
調整できそうな内容であれば、事業所や施設へ相談します。「本人が嫌がっています」だけでなく、いつ、どのような場面で、どんな変化があったのかを伝えると話し合いやすくなります。
- 利用時間や曜日を短縮・変更できるか
- 席や過ごす場所を変えられるか
- 苦手な活動への参加方法を調整できるか
- 介助方法や声かけについて希望を伝えられるか
- 家族への連絡方法を見直せるか
3.担当のケアマネジャーへ相談する
デイサービスや訪問介護などの在宅サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーにも状況を伝えます。
現在の事業所で調整できることがあるか、ケアプランの見直しが必要か、ほかに候補となる事業所があるかを相談しましょう。
4.候補を比較し、可能なら見学や体験利用をする
別の事業所を検討する場合は、空き状況だけで決めず、本人の希望に合うかを確認します。デイサービスでは、見学や体験利用ができる場合もあります。
現在の事業所で合わなかった点を、新しい候補ではどのように対応しているか確認しましょう。
5.契約内容を確認して変更手続きを進める
変更先が決まったら、利用開始日、現在の事業所の利用終了日、解約の申し出期限などを確認します。在宅サービスでは、必要に応じてケアプランの変更やサービス担当者との調整が行われます。
入所施設を移る場合は、退去後の行き先がない状態にならないよう、新しい施設の受け入れと入所日を確認してから手続きを進めてください。
希望どおりにならない理由も確認する
相談しても、本人や家族の希望がすべて通るとは限りません。人員配置、安全管理、ほかの利用者への対応、介護保険サービスの範囲などにより、事業所では対応できないこともあります。
希望どおりの対応が難しいと言われたときは、理由を確認したうえで、別の方法がないか話し合ってみましょう。
- 希望する対応が難しい理由は何か
- 一部だけでも調整できることはあるか
- ケアプランや利用時間の変更で対応できるか
- 別のサービスを組み合わせる方法はあるか
事情を説明してもらい、代わりの方法を一緒に考えられる事業所であれば、すぐに変更しなくても状況が改善する可能性があります。
一方で、質問しても説明がない、話し合いに応じてもらえない、本人の安全に関わる問題が改善されない場合は、別の事業所への変更や外部窓口への相談を検討してください。
次の事業所・施設を選ぶときに確認したいこと
新しい事業所や施設を探すときは、建物の新しさや設備だけでなく、本人がどのように過ごすことになるかを確認しましょう。
パンフレットやウェブサイトだけでは分からないことも多いため、可能であれば本人と一緒に見学します。デイサービスでは、体験利用ができるか尋ねてみてもよいでしょう。
本人の過ごし方に合っているか
- 一人で静かに過ごせる場所があるか
- 活動やレクリエーションへの参加はどの程度必要か
- 認知症や医療的ケアに対応できるか
- 食事や入浴について希望を相談できるか
- 本人が落ち着かないとき、どのように対応しているか
職員や利用者の様子を見る
- 職員が利用者へどのように声をかけているか
- 利用者が落ち着いて過ごしているか
- 質問に対して具体的に説明してもらえるか
- 本人の希望や生活歴を聞こうとしてくれるか
家族が無理なく利用を続けられるか
- 利用料や追加費用はどのくらいか
- 送迎の範囲や時間は生活に合っているか
- 急な欠席や予定変更にはどう対応するか
- 家族への報告は、いつ、どのような方法で行われるか
- 緊急時の連絡体制はどうなっているか
すべての条件が理想どおりの事業所を見つけるのは難しいこともあります。本人にとって譲れない条件と、家族が調整できる条件を分けて比較すると選びやすくなります。
困ったときの主な相談先
| 相談先 | 相談できる内容 |
|---|---|
| 事業所・施設の相談窓口 | サービス内容、職員の対応、利用中の困りごと |
| 担当のケアマネジャー | 在宅サービスの調整、ケアプランの見直し、変更先の相談 |
| 施設の生活相談員・支援相談員 | 入所中の生活、退所・転所についての相談 |
| 地域包括支援センター | 相談先が分からないとき、高齢者の生活や権利に関する相談 |
| 市区町村の介護保険担当窓口 | 介護サービスに関する相談や苦情、制度の確認 |
| 都道府県の国民健康保険団体連合会 | 介護保険サービスに関する苦情の相談 |
契約時に受け取った重要事項説明書には、事業所の相談窓口や外部の苦情相談先が記載されています。手元にある場合は確認してみましょう。
どこへ相談すればよいか分からないときは、地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口へ問い合わせる方法があります。
よくある質問
Q. デイサービスは本人が嫌がっていても続けた方がよいですか?
一度嫌がっただけで、すぐに中止や変更を決める必要があるとは限りません。体調や慣れない環境への不安が影響している場合もあります。ただし、強い拒否や利用後の不調が続くときは、利用時間や過ごし方を調整できないか、事業所やケアマネジャーへ相談してください。
Q. 介護サービスを変更すると、現在の事業所に嫌がられませんか?
変更を必要以上にためらうことはありません。ただし、契約で解約の申し出期限が決められている場合があるため、重要事項説明書や契約書を確認しましょう。変更理由を伝えられる範囲で整理しておくと、引き継ぎにも役立ちます。
Q. ケアマネジャーに言いにくい場合は、誰に相談できますか?
地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当窓口などへ相談できます。介護保険サービスへの苦情であれば、都道府県の国民健康保険団体連合会に相談する方法もあります。本人の安全に関わる問題は、施設やケアマネジャーだけで抱えず、自治体などの外部窓口へ相談してください。
まとめ
介護サービスや施設が合わないと感じたときは、本人が何を嫌がっているのか、利用前後にどのような変化があるのかを整理することから始めましょう。
デイサービスや訪問介護などの在宅サービスであれば、利用時間や過ごし方を調整することで改善する場合があります。それでも難しいときは、ケアマネジャーへ相談し、別の事業所を検討できます。
入所施設を移る場合は、空室や入所条件、費用、待機期間などの確認が必要です。現在の施設を退去する前に、新しい受け入れ先と入所時期の見通しを立てておきましょう。
また、説明のない傷、必要な介助の放置、暴言、身体拘束などが疑われる場合は、単なる相性の問題ではありません。本人の安全を優先し、市区町村や地域包括支援センターなどへ早めに相談してください。
介護サービスを変更することは、失敗ではありません。本人が安心して過ごせることと、家族が無理なく利用を続けられることの両方を考えながら、現在の状態に合う支援を探していきましょう。
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