夜中に何度も起きて、家族のトイレを手伝う。
朝、眠たいまま学校へ行き、授業中に居眠りしてしまう。
それでも、「昨夜は家族の介護をしていた」とは、なかなか言い出せない——。
ヤングケアラーのなかには、このように家族の世話を担うことで、睡眠や勉強、友達と過ごす時間に影響が出ている子どもや若者がいます。
「自分がしなければ」と頑張り続け、つらさを周囲に話せないことも少なくありません。
もし、この記事を読んで「自分のことかもしれない」と感じても、一人で抱え込む必要はありません。家族を大切にしながら、あなた自身の生活や将来を守るために利用できる相談先や支援があります。

「ヤングケアラー」とは?
ヤングケアラーとは、家族の介護や身の回りの世話、家事などを日常的に担い、その負担によって自分の生活にも影響が出ている子どもや若者のことです。
2024年6月に施行された改正「子ども・若者育成支援推進法」では、ヤングケアラーが「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定められ、国や自治体が支援に努める対象として法律上明確になりました。
ここでいう「過度」とは、家族を手伝っていること自体を問題にするものではありません。
家族の世話によって、睡眠や勉強、遊び、友達と過ごす時間が十分に取れない、心身に大きな負担がかかる、進学や就職の準備ができないなど、本人の生活や成長に影響が出ている状態を指します。
たとえば、次のような役割を日常的に担っている場合があります。
- 病気や障害のある家族の見守りや介助
- 入浴・着替え・排せつの手伝い
- 食事の用意、洗濯、掃除などの家事
- 幼いきょうだいの世話
- 日本語が得意ではない家族の通訳
- 家計を支えるためのアルバイトや金銭管理
- アルコール・薬物・心の問題を抱える家族への対応
本人にとってはそれが「いつもの生活」になっているため、自分がヤングケアラーだと気づいていないこともあります。
国の調査では、「世話をしている家族がいる」と回答した割合は、小学6年生で6.5%、中学2年生で5.7%、高校2年生で4.1%、大学3年生で6.2%でした。
中学2年生では、およそ17人に1人にあたります。
ただし、家族の世話をしている人がすべて支援を必要としているという意味ではありません。世話の内容や時間、本人の心身や学校生活への影響などを含めて考える必要があります。
なぜ周囲から気づかれにくいの?
ヤングケアラーは、外から見ただけでは気づかれにくいことがあります。
本人が「家族なのだから自分がするのは当然」「ほかの家庭も同じだろう」と考え、負担を負担として認識していない場合もあります。
また、
- 家族の病気や障害について話しにくい
- 相談すると家族が責められるのではないかと心配
- 家族と離されるのではないかと不安
- どこに相談すればよいか分からない
- 相談しても状況は変わらないと思っている
といった理由から、事情を話せないこともあります。
遅刻や欠席、居眠り、宿題を忘れるといった行動の背景に、家庭でのケアが隠れている可能性があります。本人の努力不足と決めつけず、周囲の大人が生活全体に目を向けることも大切です。
学校や職場へ、どのように伝えればいい?
家庭の事情をすべて詳しく話す必要はありません。
まずは、担任、養護教諭、スクールカウンセラー、大学の学生相談室、職場の相談担当者など、話しやすい人を一人選んで伝えてみる方法があります。
たとえば、次のような言い方でも構いません。
- 「家で家族の世話をしていて、十分に眠れない日があります」
- 「家庭の事情で、遅刻や欠席が増えるかもしれません」
- 「自分がヤングケアラーにあたるのか、相談したいです」
- 「家族にはまだ知られずに、まず相談だけしたいです」
口で説明するのが難しければ、紙やメールに書いて渡してもよいでしょう。
相談したからといって、すぐに家族と離されると決まるわけではありません。本人と家族の状況を確認しながら、利用できる支援や負担を軽くする方法を一緒に考えていきます。
親や先生に相談しづらいときは?
身近な大人に話しづらいときは、電話やチャットなどで相談できる窓口もあります。
チャイルドライン(18歳まで)
電話:0120-99-7777
受付:毎日16時~21時
通話料は無料です。名前を言わなくても相談できます。
チャイルドラインでは、曜日や時間帯によりチャット相談も行われています。受付日時は変更される場合があるため、利用前に公式サイトをご確認ください。
24時間子供SOSダイヤル
電話:0120-0-78310(なやみいおう)
受付:24時間・年中無休
子ども本人だけでなく、保護者からも相談できます。
このほか、自治体によってはヤングケアラー専用の電話・LINE・メール相談を設けています。「自治体名+ヤングケアラー+相談」で検索すると、地域の窓口を探せます。
どこへ相談すればいい?
相談先は、家族の状況や本人の年齢によって異なります。どこが適切か分からない場合でも、最初に相談した窓口から別の支援先につないでもらえることがあります。
- 学校の担任・養護教諭・スクールカウンセラー
学校生活への影響を相談し、遅刻や欠席、学習面などの支援を一緒に考えてもらえます。 - 市区町村のこども家庭センター・子ども家庭支援窓口
子どもや家庭に関するさまざまな相談を受け付けています。 - 自治体のヤングケアラー相談窓口
専門の相談員やコーディネーターが配置されている地域もあります。 - 地域包括支援センター
高齢の家族を介護している場合に、介護保険サービスや生活支援について相談できます。 - 障害福祉や生活困窮に関する窓口
家族に障害がある場合や、家計・生活に困りごとがある場合の支援につながります。
相談方法や匿名で相談できるかどうかは、窓口によって異なります。最初に「名前を伝えずに相談できますか」と確認しても構いません。
自分や家族のことを、初対面の人に話すのは簡単ではありません。
うまく説明できなくても、「家族の世話が大変です」「学校生活に影響が出ています」と伝えるだけで大丈夫です。
電話がつながりにくい場合は、時間をおいてかけ直すほか、別の相談窓口やチャット、メール相談を利用する方法もあります。
利用できる支援は家庭によって異なります
ヤングケアラーへの支援内容は、自治体や家庭の状況によって異なります。
たとえば、次のような支援につながることがあります。
- 家事や育児を手伝う訪問支援
- 介護保険・障害福祉サービスの利用
- 福祉担当者や支援員による家庭訪問
- 学校と福祉機関の連携
- 学習支援や居場所づくり
- 就職・進学に関する相談
- 家計や生活困窮に関する支援
介護や家事をすべて子どもや若者から取り上げるのではなく、本人と家族の希望を聞きながら、負担を軽くする方法を考えていきます。
あなた自身の生活や将来も大切です
家族を大切に思い、できることをしようとする気持ちは、とても自然なものです。
けれど、家族の世話によって眠れない、学校や仕事へ行けない、友達と過ごせない、進学や就職を諦めそうになっているなら、一人で抱えるには負担が大きすぎる可能性があります。
誰かに相談することは、家族を見捨てることではありません。
あなたと家族の両方が、今より少し安心して暮らせる方法を探すための一歩です。
最後に
この記事を読んで、「自分のことかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。
すぐにすべてを話したり、大きな決断をしたりする必要はありません。
相談窓口を調べる、話しやすい人を一人思い浮かべる、「家のことが少し大変」と伝えてみる。それだけでも一歩になります。
家族の生活と同じように、あなたの睡眠、勉強、仕事、友達との時間、そしてこれからの人生も大切です。
困ったときに利用できる人や制度があることを、どうか覚えておいてください。
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