「あれ、最近少し様子が違うかも」
物忘れが増えたり、これまでできていたことに戸惑ったりする姿を見ると、「認知症かもしれない」と心配になりますよね。
ただし、物忘れや行動の変化だけで、家族が認知症と判断することはできません。体調不良や薬の影響など、別の原因が関係している場合もあります。
気になる変化が続いている場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターへ相談しながら、家庭内の安全や暮らしやすさも見直していきましょう。
この記事では、認知症が疑われるときに、本人の安全や気持ちに配慮しながら取り入れられる6つの暮らしの工夫をご紹介します。
1.手すりや段差を確認して転倒を防ぐ

認知症の有無にかかわらず、高齢になると身体機能や注意力の変化によって、転倒しやすくなることがあります。
まずは、階段、廊下、トイレ、浴室、玄関など、つまずきやふらつきが起こりやすい場所を確認しましょう。
要支援・要介護認定を受けている人が手すりの取り付けや段差解消などを行う場合、介護保険の住宅改修費が利用できることがあります。
支給対象となる工事費の上限は、原則として一人につき20万円です。そのうち、所得に応じて1~3割を利用者が負担します。
住宅改修費を利用する場合は、原則として工事前の申請が必要です。先に契約や工事を進めず、担当ケアマネジャーや市区町村の窓口へ相談しましょう。
介護保険を利用する場合の基本的な流れ
- ケアマネジャーや市区町村の窓口へ相談する
- 本人の身体状況や住宅の状態を確認する
- 見積書や住宅改修が必要な理由書などを用意する
- 工事前に市区町村へ申請する
- 市区町村の確認後に工事を行う
- 工事後に必要書類を提出する
申請書類や支払い方法は自治体によって異なります。必ず工事前に、お住まいの市区町村へ確認してください。
2.外出時の安全と見守り方法を考える
外出したあとに帰り道がわからなくなる、鍵や持ち物をなくすといった変化がある場合は、本人が安心して外出を続けられる方法を家族で考えてみましょう。
外出を防ぐために、本人が内側から開けられない鍵を取り付ける方法は、火災や災害時に避難できなくなる危険があります。行動を制限する前に、安全を保ちながら外出を見守る方法を検討しましょう。
- 玄関の開閉を家族に知らせるセンサー
- 本人の持ち物や衣類に付ける連絡先
- 本人の気持ちやプライバシーに配慮したGPS機器
- 自治体の見守りネットワークや事前登録制度
- 近隣の人やケアマネジャーとの情報共有
機器を利用するときは、本人が使い方を理解できるか、負担に感じないかも確認しましょう。自治体によっては見守り登録や機器への助成を行っている場合があります。地域包括支援センターや市区町村の窓口へ相談してみてください。
3.冷蔵庫・薬・電気製品をわかりやすく整える
認知機能が低下すると、同じ食品を何度も買う、薬を飲んだことを忘れる、電気製品の操作に迷うといったことが起こる場合があります。
本人の状態に合わせ、次のような工夫を検討しましょう。
- よく使う物の置き場所を決める
- 扉や引き出しに、本人が理解しやすい表示を付ける
- 冷蔵庫の中を整理し、食品の重複や期限を確認しやすくする
- 操作が複雑な電気製品は、わかりやすいものへ変更する
- ガスや暖房器具には、安全機能のある製品を検討する
薬の飲み忘れや重複がある場合は、ピルケースだけで対応しようとせず、医師や薬剤師へ相談してください。
薬を一回分ずつまとめる「一包化」、お薬カレンダー、訪問薬剤管理など、本人の状態に合った方法を提案してもらえる場合があります。薬の内容や分け方を家族だけで変更しないことも大切です。
4.カレンダーや時計で時間を確認しやすくする
認知機能が低下すると、日付や曜日がわかりにくくなることがあります。
大きな字のカレンダーや、曜日・日付が表示される時計を見やすい場所へ置くと、本人が予定や時間を確認しやすくなる場合があります。
ただし、表示が多すぎるとかえって混乱することもあります。本人が使い慣れているものや、見やすく操作の簡単なものを選びましょう。
5.本人ができることを大切にする
家族が心配するあまり、本人ができることまで先回りして行ってしまうことがあります。
しかし、本人の希望を聞かずにすべてを代わると、自信や役割を失ったように感じる場合があります。
安全を確認しながら、本人が続けられることは残していきましょう。
- 洗濯物をたたむ
- 花に水をやる
- 食卓を整える
- 一緒に買い物リストを作る
- 得意だった家事の一部を一緒に行う
大切なのは、無理に何かをさせることではありません。本人の体調や気持ちを確認しながら、「一緒にやりませんか」と声をかけてみましょう。
6.家族だけで抱え込まず、早めに相談する
認知症が疑われる家族を支えるなかで、悩みを家庭内だけで抱え込むと、介護する人の孤立感や疲れが大きくなることがあります。
気になることがあれば、地域包括支援センターやかかりつけ医、地域の家族会や認知症カフェに相談しましょう。
「この時期にどんな支援があるか」「住宅改修に介護保険を利用できるか」など、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談すると、利用できる制度や次の一歩を確認できます。
家族は「頑張りすぎない」こと
つい「もっとちゃんと見てあげないと」と思い詰めてしまいがちですが、家族が倒れてしまっては元も子もありません。
だからこそ、暮らしの中で「がんばらなくてもできる工夫」を取り入れましょう。
カレンダーに予定を書くときも、「見せる」のではなく「一緒に書く」。
予定を書くときは、家族が代わりに記入するのではなく、本人と一緒に確認する。使い慣れた物の置き場所は、できるだけ変えずに分かりやすく整える。そんな小さな工夫が、本人の尊厳と家族の安心につながります。
よくある質問
家族が認知症かもしれないと感じたら、どこへ相談すればよいですか?
まずは、本人の普段の様子を知っているかかりつけ医へ相談する方法があります。
かかりつけ医がいない場合や、本人が受診を嫌がっている場合は、地域包括支援センターへ相談してみましょう。家族だけで相談することもできます。
物忘れや行動の変化には、認知症以外の病気や薬の影響などが関係している場合もあります。家族だけで認知症と判断せず、専門家へ相談することが大切です。
介護認定を受ける前でも住宅改修費を利用できますか?
介護保険の住宅改修費を利用するには、原則として要支援または要介護の認定が必要です。
また、工事を始める前に市区町村への申請が必要です。先に契約や工事を進めると支給対象にならない場合があるため、ケアマネジャーや市区町村の介護保険担当窓口へ確認しましょう。
介護認定を受けていない場合でも、自治体独自の助成制度を利用できる可能性があります。
外出が心配な場合、玄関に本人が開けられない鍵を付けてもよいですか?
本人を家の中へ閉じ込めるような鍵は、火災や災害時に避難できなくなる危険があります。
玄関の開閉センサー、GPS機器、連絡先を記した持ち物、自治体の見守りネットワークなど、本人の安全と尊厳の両方に配慮した方法を検討しましょう。
外出への対応に困っている場合は、地域包括支援センターや担当ケアマネジャーへ相談できます。
まとめ|本人に合った暮らしやすい環境を整えよう
認知症が疑われる初期の段階でも、急にすべてのことができなくなるわけではありません。
本人の様子や困っていることを確認しながら、
- 手すりや段差など、住まいの安全を見直す
- 外出時の見守り方法や地域の支援を確認する
- 薬や日用品を本人に分かりやすく整える
- カレンダーや時計で予定を確認しやすくする
- 本人ができることや役割を大切にする
- 医療機関や地域包括支援センターへ相談する
といった方法があります。
ただし、本人に合う工夫は、症状や身体の状態、生活環境によって異なります。
家族の判断だけで生活を大きく変えたり、本人の行動を制限したりせず、本人の気持ちも確認しながら進めることが大切です。
家族だけで抱え込まず、医師や薬剤師、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどの力も借りながら、本人と家族の双方が無理なく暮らせる方法を探していきましょう。
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