親が「そんなの必要ない」と言い張るとき

――介護を拒否された家族のために

「介護なんて、まだ必要ない」と言われてしまったら

「介護はまだ早い!」と怒る高齢の父親と、戸惑いながら胸に手を当てる娘のイラスト。家庭内での介護拒否の場面を描写。

親が高齢になり、歩き方がふらついてきたり、物忘れが増えたりしても、

本人はなかなか「介護が必要」とは認めません。

うちの親もそうでした。

■ 体験談:私の母の場合

当時、母は76歳。

よく物を探すようになり、薬の飲み忘れが増え、冷蔵庫の中には賞味期限切れの食品が何品も。

何度も転び、その度に救急で病院に駆け込んでいました。

「先生に相談しようかな・・」

ぽつりと言葉にしてしまった時、母は

「そんなもの必要ない!まだ自分で何でもできる!」

「他人にうちのこと話すなんて絶対ダメ」

と、私に対して怒りだしました。

そのまま数ヶ月が経ち、とても悩んだ挙句

「何かあってからでは遅い」

と思い、こっそり地域包括支援センターに電話相談しました。

その中で言われた言葉が、今でも心に残っています。

「介護は“支配”ではなく“支援”です。ご本人が“支配される”と感じた瞬間に、拒否が始まるんです」

それから私は、「手伝いたい」「守りたい」ではなく、

「一緒に考えよう」「ちょっとだけ手を借りようか」と伝えるよう努力しました。

なぜ親は介護を拒むのか?

では、なぜ親は「介護」や「相談」を拒むのでしょうか?それは

  • プライドがある
  • 「迷惑をかけたくない」という気持ち
  • 「介護される=人生の終わり」と感じてしまう

これらはとても人間らしい反応だといえます。

頭の中は昔のまま・・それが認知症という病気なのです。

■ 家族ができる3つの工夫

① 「お願いごと」スタイルで伝える

「手伝わせて」よりも、「一緒に役所に行ってくれない?」などの“頼みごと”形式で。

② 他人の言葉を借りる

医師や支援センターの職員など、家族以外の第三者の言葉を利用する。

③ “介護”という言葉を使わない

代わりに「見守り」「配食」「生活支援」など、生活の延長線にある言葉を選ぶ。

家族の心が壊れてしまう前に…

家族だけで抱え続けると、「言うことを聞かない親」「怒ってばかりの自分」に、

苦しくて涙が出る日もあります。

でも、あなたが悪いわけではありません。

怒りや悲しみの奥には、「なんとかしたい」という気持ちがあるからこそです。

親への愛情と、今までの歴史・・その大切な記憶が

パラパラと消えていく親を正面から見ることはとても辛いことです。

介護する家族の方が、よほど泣きたいはずです。

親が介護を拒否する場合の対処ポイント

そんな、誰もが最初にぶち当たる「介護を拒否された」時に、家族ができることを以下に、まとめてみました。

課題家族ができること
親が「まだ元気」と言い張るお願いベースで「一緒に行って」と頼む
ケアマネを拒否医師や第三者に勧めてもらう
「介護」という言葉で怒る「支援」「見守り」など優しい表現に変える
家族が疲れてしまう地域包括支援センターに家族だけでも相談

今日うまくいかなくても

いま、あなたがひとりで悩んでいることは、
多くの家族が同じように経験してきたことです。

「今日うまくいかなかった」としても、
それは“無駄”ではありません。

どんなに気をつけても、うまくいかない日はあります。

それでも、それは「失敗」ではありません。

むしろ、「何とかしたい」と考えたことが、すでに大きな前進です。

家族が疲れ切ってしまう前に、以下の行動も検討してみましょう。

  • 地域包括支援センターに家族だけで相談
  • 高齢者向けの無料電話相談窓口を活用
  • ケアマネジャーへの“事前相談”という選択肢

介護は“愛”のかたちが試される場面が多く、

「どうしてわかってくれないの?」と苦しくなることもあります。

でもそれは、あなたが真剣に向き合っている証拠です。

今日うまくいかなかったとしても、

明日また「少し話してみようかな」と思えたなら、それだけで十分ですからね。


最後に

もしかすると、この記事を読んでいるあなたは、

「誰にも相談できなくて」

「いつも怒ってしまって」

「もう疲れた」

と感じているかもしれません。

でも、そんな中でも情報を探し、

「親のためにできることはないか」と行動しているあなたは、

すでに立派に親を支えている存在です。

今日のまとめの表を作っておくので、今後の参考にしてみてください。

よくある状況親の反応家族ができる対処法
体が不自由になってきた「まだ歩ける」「運動不足なだけ」転倒リスクを伝え、「一緒に散歩しよう」と誘導
薬の飲み忘れが目立つ「飲んだよ(実際は飲んでいない)」ピルケースの活用や、声かけアプリの導入
ケアマネジャーを紹介しようとした「そんなのいらない」「赤の他人に任せるな」「役所の人が来るだけだよ」とやわらかく伝える
地域包括支援センターに行こうと誘った「病人じゃないのに行く意味がない」まずは家族だけで相談に行き、進め方を確認
生活支援サービスを提案「そんなお金かける必要ない」「保険が使えるから負担は少ないよ」と説明

介護は、“正解”のない毎日の連続です。

うまくいかなくて当然、怒ってしまって当然です。

それでも、こうしてまた「知ろうとしている」ことが、

次のあなたとご家族をきっと助けてくれるはずです。

小さなことでも、ひとつでも、「やってよかった」と思えることが見つかるように。

そして、あなたの心が少しでも軽くなりますように。



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