介護で一番お金がかかるのは何?平均費用と負担を減らす方法

家族の心配と介護の費用のイラスト

「親の介護では、結局何に一番お金がかかるの?」

介護サービスの利用料だけでなく、施設の食費や居住費、医療費、紙おむつ代、家族の交通費など、介護ではさまざまな支出が発生します。

公益財団法人生命保険文化センターの2024年度調査によると、介護にかかった月々の費用は平均9万円、一時的な費用は平均47万2,000円でした。また、介護期間は平均4年7か月となっています。

ただし、実際の負担額は、在宅介護か施設介護か、要介護度、利用するサービス、本人の所得などによって大きく異なります。

この記事では、介護で家計を圧迫しやすい費用と、見落としやすい支出、負担を抑えるために確認したい制度をわかりやすく解説します。


介護で家計を圧迫しやすいのは「毎月続く支出」

介護で家計への影響が大きくなりやすいのは、介護サービスの自己負担分や施設費、食費、日用品費などの「毎月続く支出」です。

住宅改修や介護用品の購入など、一度にまとまった費用が発生することもあります。しかし、介護が数年にわたって続くと、毎月の支出の積み重ねが大きな負担になります。

生命保険文化センターの2024年度調査では、介護にかかった費用は次のようになっています。

費用・期間平均
一時的な費用47万2,000円
月々の費用9万円
介護期間4年7か月

単純計算すると、一時的な費用と月々の費用を合わせて約542万円になります。

ただし、この金額はあくまで調査回答者の平均です。自宅で家族が介護する場合、施設に入居する場合、医療的ケアが必要な場合など、状況によって実際の費用は大きく変わります。


介護費用の内訳(どこにお金がかかる?)

では、介護費用は具体的に何に使われているのでしょうか。

主な内訳を見てみましょう。

① 介護保険サービスの自己負担額

要介護・要支援認定を受けて介護保険サービスを利用すると、原則としてサービス費用の1割を自己負担します。一定以上の所得がある65歳以上の方は、2割または3割負担です。

主なサービスには、次のようなものがあります。

  • 訪問介護
  • デイサービス
  • 訪問看護
  • ショートステイ
  • 福祉用具貸与

ただし、在宅で利用する介護保険サービスには、要介護度ごとに1か月の支給限度額が設けられています。限度額を超えてサービスを利用した分は、原則として全額自己負担になるため注意が必要です。

また、食費、居住費、日用品費などは介護保険サービスの自己負担額とは別に必要です。


② 施設で暮らすための費用

介護施設に入居する場合は、介護サービスの自己負担分だけでなく、居住費や食費なども必要です。

主な費用には次のものがあります。

  • 介護サービスの自己負担分
  • 居住費・家賃
  • 食費
  • 管理費
  • 医療費・薬代
  • 日用品費
  • 理美容代
  • 加算サービスの費用

特別養護老人ホームなどの公的施設は、民間の有料老人ホームと比べて費用を抑えやすい傾向があります。ただし、居室の種類、要介護度、所得区分、施設の所在地などによって負担額は異なります。

民間の有料老人ホームでは、月額費用に加えて入居一時金が必要な施設もあります。一方で、入居一時金を設けていない施設もあるため、月額表示だけで判断せず、追加費用を含めた総額を確認することが大切です。


③ 食費・居住費・日用品費

施設やショートステイを利用する場合、食費や居住費・滞在費は、原則として介護保険の給付対象外です。

また、衣類、理美容、嗜好品、テレビ利用料など、介護保険の対象にならない費用が別途必要になることがあります。

紙おむつ代の扱いは施設の種類によって異なります。特別養護老人ホームなどでは施設サービス費に含まれますが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などでは、別途自己負担になることがあります。

所得や資産などの条件を満たす方は、施設の食費・居住費を軽減する「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」を利用できる場合があります。

施設を比較するときは、パンフレットに掲載された月額費用だけでなく、「別途必要になる費用」も確認しましょう。


④ 医療費

介護が必要な方は、通院や薬、訪問診療、入院などの医療費がかかることもあります。

介護サービスは介護保険、診察や治療は医療保険と、適用される制度が異なります。また、通院時のタクシー代、家族の付き添いにかかる交通費、入院中の日用品費などは自己負担になることがあります。

医療費の自己負担が高額になった場合は「高額療養費制度」、医療費と介護費の年間負担が大きい場合は「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用できる可能性があります。


⑤ 住宅改修・福祉用具

在宅介護では、転倒を防いだり、介助しやすくしたりするために、住宅改修や福祉用具が必要になることがあります。

例えば、次のようなものです。

  • 手すりの設置
  • 段差の解消
  • 滑りにくい床材への変更
  • 介護ベッド
  • 車いす
  • 入浴補助用具

生命保険文化センターの調査で示されている「一時的な費用47万2,000円」は、住宅改修や介護用ベッドの購入などを含む一時費用全体の平均であり、住宅改修だけの平均額ではありません。

介護保険では、対象となる住宅改修や福祉用具の購入・貸与に給付を受けられる場合があります。ただし、工事や購入の前に申請が必要なこともあるため、先にケアマネジャーや市区町村の窓口へ相談しましょう。


在宅介護と施設介護では費用が大きく違う

生命保険文化センターの2024年度調査では、月々の介護費用は、在宅介護が平均5万3,000円、施設介護が平均13万8,000円でした。

介護を行った場所月々の費用の平均
在宅5万3,000円
施設13万8,000円

調査上は施設介護のほうが高くなっていますが、在宅介護なら必ず安く済むとは限りません。

在宅でも、訪問介護やデイサービスを多く利用する場合、紙おむつ代や配食費、住宅改修費などがかかります。さらに、家族が仕事を減らしたことによる収入減まで含めると、家計への影響が大きくなることがあります。

金額だけでなく、本人の状態、家族が介護できる時間、仕事との両立、安全に生活できる環境なども含めて検討することが大切です。


親の貯金がない場合、介護費用はどうなる?

介護費用は、まず介護を受ける本人の年金や貯金から支払うことを基本に考えます。家族がすぐに自分たちの生活費や老後資金を取り崩してしまうと、介護が長期化したときに共倒れになるおそれがあるためです。

本人の収入や貯金だけでは足りない場合は、次のような制度を利用できる可能性があります。

  • 高額介護サービス費
  • 高額医療・高額介護合算療養費制度
  • 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
  • 自治体独自の助成制度
  • 生活保護制度

ただし、制度ごとに所得・資産・世帯状況などの条件があり、食費や居住費、日用品費など対象にならない費用もあります。

支払いが難しくなってからではなく、不安を感じた段階で、ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口などに相談しましょう。

実は見えにくい「介護の隠れコスト」

介護にかかるお金は、介護サービスの利用明細に記載される費用だけではありません。

家計への影響を考えるときは、次のような「見えにくい負担」も確認する必要があります。

  • 実家へ通うための交通費
  • 通院や手続きに付き添うための休業
  • 残業や勤務時間を減らしたことによる収入減
  • 介護のための引っ越し費用
  • 配食、見守り、家事代行など保険外サービスの費用
  • 介護離職による収入や将来の年金への影響

特に介護離職は、現在の収入だけでなく、再就職や将来の年金にも影響する可能性があります。

介護休業や介護休暇は、家族が介護をすべて担うためではなく、介護サービスを整え、仕事と両立できる体制をつくるために活用する制度です。仕事を辞める前に、勤務先の担当部署や地域包括支援センター、ケアマネジャーへ相談しましょう。


介護費用を抑えるためのポイント

介護費用を抑えるために大切なのは、単純にサービスを減らすことではありません。必要な支援を我慢すると、本人の状態が悪化したり、家族の負担が増えたりして、結果的に費用が増えることもあります。

次のポイントを確認しましょう。

① 早めに要介護認定と相談を進める

介護が必要になったら、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談し、要介護認定の申請を検討します。認定を受けることで、所得などに応じて1~3割の自己負担で介護保険サービスを利用できます。

② 利用できる軽減制度を確認する

高額介護サービス費や負担限度額認定などは、対象になっていても申請が必要な場合があります。本人の所得や資産、世帯状況によって利用できる制度が異なるため、自治体の窓口で確認しましょう。

③ 月額ではなく総額で比較する

施設を選ぶときは、家賃や基本料金だけでなく、食費、管理費、医療費、日用品費、加算、入居一時金などを含めて比較します。在宅介護でも、介護サービス費のほかに交通費や保険外サービス、家族の収入減を含めて考えることが大切です。

④ 福祉用具や住宅改修は購入前に相談する

介護保険の対象になる福祉用具や住宅改修でも、指定事業者の利用や事前申請などが必要な場合があります。自己判断で購入・工事をすると給付を受けられないことがあるため、先にケアマネジャーへ相談しましょう。


よくある質問

Q1. 介護費用の平均「月9万円」には何が含まれていますか?

月9万円は、生命保険文化センターの調査で、実際に介護を経験した方が回答した月々の費用の平均です。公的介護保険サービスの自己負担分に加え、介護に伴って支払ったさまざまな費用が含まれています。

ただし、すべての家庭で毎月9万円かかるわけではありません。在宅か施設か、要介護度、利用するサービスなどによって金額は大きく異なります。

Q2. 高額介護サービス費を利用すれば、食費や居住費も戻りますか?

原則として、施設の食費・居住費、ショートステイの食費・滞在費、日用品費などは、高額介護サービス費の対象になりません。

一方、所得や資産などの条件を満たす方は「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」によって、施設の食費や居住費の負担を軽減できる場合があります。

利用できる制度は世帯状況によって異なるため、市区町村の介護保険窓口で確認しましょう。

Q3. 親の介護費用は、子どもが払わなければなりませんか?

親の介護費用を、子どもが一律にすべて支払わなければならないわけではありません。まずは、介護を受ける本人の年金や貯金から支払うことを基本に考えます。

親子には法律上の扶養義務がありますが、子どもが負担する範囲は、親の収入や資産、子どもの収入や生活状況などによって異なります。

子どもが無理に負担を続けると、介護が長期化したときに、自分たちの生活費や老後資金まで不足するおそれがあります。親の収入や資産だけでは足りない場合は、家族だけで解決しようとせず、利用できる公的制度がないか確認しましょう。

地域包括支援センターやケアマネジャー、市区町村の窓口に相談することで、家計状況に合った支援を案内してもらえる場合があります。

Q4. 在宅介護なら、施設介護より必ず安くなりますか?

一般的には在宅介護のほうが月々の費用を抑えやすい傾向がありますが、必ず安くなるとは限りません。

在宅でも、介護サービスの自己負担分だけでなく、紙おむつ、配食、見守りサービス、住宅改修、通院の交通費などがかかることがあります。また、家族が仕事を減らした場合は、収入減も大きな負担になります。

費用だけでなく、本人の状態や家族の介護力、仕事との両立、安全に生活できる環境なども含めて判断することが大切です。

Q5. 介護費用が払えなくなりそうなときは、どこへ相談すればよいですか?

支払いが難しくなる前に、次の窓口へ相談しましょう。

  • 担当のケアマネジャー
  • 地域包括支援センター
  • 市区町村の介護保険窓口
  • 福祉事務所

高額介護サービス費、負担限度額認定、自治体独自の助成制度などを利用できる可能性があります。

すでに施設を利用している場合も、施設へ早めに事情を伝えてください。サービスの利用回数を自己判断で減らしたり、支払いをそのまま滞納したりせず、負担を抑えられる方法がないか相談することが重要です。

まとめ

介護で家計への負担が大きくなりやすいのは、介護サービスの自己負担分、施設の食費・居住費、医療費、日用品費など、毎月続く支出です。

ただし、在宅介護では家族の交通費や収入減、施設介護では入居一時金や追加費用など、平均額だけでは見えない負担もあります。

介護費用を考えるときは、次の点を確認しましょう。

  • 本人の年金・貯金でどこまで支払えるか
  • 毎月必要な費用と一時的な費用
  • 介護保険の対象外になる費用
  • 利用できる負担軽減制度
  • 家族の仕事や生活への影響

必要なサービスを我慢するのではなく、公的制度を使いながら、本人と家族の生活を無理なく続けられる方法を考えることが大切です。

費用に不安があるときは、一人で抱え込まず、地域包括支援センターやケアマネジャー、市区町村の介護保険窓口へ早めに相談しましょう。

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