
「最近、親が昼間によく寝るようになった」
「食後だけでなく、会話中もウトウトしている」
このような変化が見られると、「認知症が始まったのでは?」と心配になる方もいるでしょう。
認知症のある方には、睡眠と覚醒のリズムが乱れ、昼間に眠る時間が増えたり、昼夜が逆転したりすることがあります。しかし、うたた寝が増えたことだけで、認知症かどうかを判断することはできません。
高齢者の日中の眠気には、夜間の睡眠不足、薬の影響、脱水、感染症、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな原因が考えられます。急に眠り方が変わった場合は、単なる疲れや年齢のせいと決めつけないことが大切です。
この記事では、高齢の親のうたた寝が増えたときに確認したいこと、認知症との関係、医療機関へ相談する目安について分かりやすく解説します。
親のうたた寝が増えたときに最初に確認すること
まず確認したいのは、昼寝の長さだけではなく、以前と比べて眠り方や体調が変わったかどうかです。
- いつごろから眠る時間が増えたか
- 呼びかけると普段どおり目を覚ますか
- 会話や受け答えに不自然なところはないか
- 食欲や水分摂取量が減っていないか
- 発熱、せき、息苦しさ、痛みなどがないか
- 薬が追加・変更されていないか
- 夜に眠れているか、いびきや無呼吸がないか
- 物忘れや行動の変化も一緒に見られるか
食後に少し眠ることが以前からの習慣で、起きたあとは普段どおりに過ごしている場合は、直ちに認知症を疑う必要はありません。
一方で、急に眠る時間が増えた、起こしても反応が鈍い、食事や会話が難しくなったという場合は、体調の変化が隠れている可能性があります。
すぐに対応した方がよい眠り方・症状
次のような様子が見られる場合は、「うたた寝」として様子を見続けないでください。
- 呼びかけても目を開けない、反応が極端に鈍い
- 会話がかみ合わず、意識がもうろうとしている
- ろれつが回らない、顔や手足の片側に力が入らない
- 息苦しそう、呼吸の仕方がいつもと違う
- 突然の激しい頭痛や胸の痛みがある
- けいれんを起こした
- 自分で水を飲めない、ぐったりして動けない
このような場合は、認知症ではなく、脳卒中や重い脱水、感染症など緊急性のある状態も考えられます。迷わず119番へ連絡してください。
救急車を呼ぶべきか迷う場合は、利用できる地域であれば救急相談センター「#7119」へ相談する方法もあります。また、消防庁の全国版救急受診アプリ「Q助」でも、症状に応じた緊急度を確認できます。
うたた寝が増えることと認知症に関係はある?
認知症になると、睡眠と覚醒のリズムが変化し、昼間に眠る時間が増えることがあります。
たとえば、夜中に何度も目を覚ます、早朝に起きてしまう、昼と夜が逆転するといった睡眠の変化です。夜に十分眠れないため、日中のうたた寝が増える場合もあります。
また、認知症が進むと外出や家事などの活動が減り、日中に刺激を受ける機会が少なくなることもあります。その結果、横になって過ごす時間が増え、そのまま眠ってしまうことがあります。
ただし、昼間によく眠るという変化だけでは、認知症の有無や進行を判断できません。
次のような変化も一緒に見られる場合は、かかりつけ医や認知症を相談できる医療機関へ相談しましょう。
- 同じことを何度も尋ねるようになった
- 薬の管理や支払いが難しくなった
- 慣れている場所で道に迷うようになった
- 日付や時間が分からなくなることが増えた
- 以前できていた家事や身支度が難しくなった
- 怒りっぽくなる、意欲が低下するなど性格や行動が変わった
認知症を心配して受診する場合は、眠っている時間だけでなく、物忘れや生活上の変化も記録しておくと、医師へ状況を伝えやすくなります。
高齢者のうたた寝が増える主な原因
高齢者の日中の眠気には、さまざまな原因が考えられます。認知症だけに結びつけず、最近の体調や生活の変化を振り返ってみましょう。
夜に十分眠れていない
年齢を重ねると、夜中に目を覚ましたり、早朝に起きたりすることが増えます。
本人は「夜は寝ている」と思っていても、睡眠が細切れになり、日中に眠気が出ていることがあります。夜間のトイレの回数や就寝・起床時刻も確認してみましょう。
薬の影響
睡眠薬や抗不安薬だけでなく、痛み止め、アレルギー薬、かぜ薬など、眠気が出ることのある薬は複数あります。
高齢者は複数の薬を服用していることも多く、薬の追加や変更をきっかけに、眠気やふらつきが強くなる場合があります。
気になる症状があっても、処方薬を自己判断で中止してはいけません。お薬手帳を用意し、処方した医師や薬剤師へ相談してください。
脱水や体調不良
高齢者は、のどの渇きを感じにくくなることがあります。水分不足によって、だるさや食欲低下、反応の鈍さなどが現れる場合もあります。
発熱や下痢、嘔吐、食欲低下があるときや、暑い時期に急に眠る時間が増えたときは、脱水にも注意が必要です。
また、高齢者では肺炎や尿路感染症などが起きても、典型的な症状が目立たず、元気がない、食べない、よく眠るといった変化として現れることがあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすると、夜に十分な休息を取れず、日中に強い眠気が出ることがあります。
大きないびき、睡眠中の無呼吸、起床時の頭痛などが見られる場合は、かかりつけ医へ相談しましょう。
活動量の低下
外出や人との会話が減り、日中を座ったまま過ごす時間が長くなると、眠る機会も増えやすくなります。
ただし、活動しないから眠るのか、体調が悪いため活動できないのかは、家族だけでは判断できないことがあります。急な変化や長く続く変化は、医療機関へ相談してください。
気分の落ち込みやうつ状態
気分の落ち込みや意欲の低下によって、横になって過ごす時間が増えることもあります。
眠る時間の変化に加えて、好きだったことに興味を示さない、食欲が落ちた、人と会いたがらなくなったといった様子が続く場合も、医療機関へ相談しましょう。
食後にうたた寝するのは認知症のサイン?
食後に眠くなることは、年齢にかかわらず見られます。そのため、食後にうたた寝をするだけで認知症のサインとはいえません。
以前から食後に短く眠る習慣があり、起きたあとは普段どおりに会話や活動ができている場合は、過度に心配する必要はないでしょう。
ただし、次のような変化が見られる場合は、食後の自然な眠気だけではない可能性があります。
- 以前より眠り込む時間が長くなった
- 食後以外にも一日中ウトウトしている
- 呼びかけてもなかなか目を覚まさない
- 冷や汗、手の震え、動悸などを伴う
- 食欲や体重が大きく変化している
- 食後にふらつく、転倒しそうになる
糖尿病の治療中で、食後の強い眠気とともに冷や汗や震え、意識がもうろうとするなどの症状がある場合は、低血糖の可能性もあります。事前に医師から指示されている対応を行い、改善しない場合や意識状態がおかしい場合は、救急車を呼んでください。
また、高齢者では食後に血圧が下がり、眠気やだるさ、ふらつきが起こることもあります。食後の転倒を繰り返す場合や、症状が強い場合は医療機関へ相談しましょう。
食事内容だけを原因と考えて、家族の判断で糖質を極端に減らすことはおすすめできません。高齢者では食事量の減少や低栄養にも注意が必要です。持病や服薬状況を含めて、かかりつけ医へ相談してください。
親のうたた寝が増えたときに家族ができること
日中に眠る親を見て、何度も起こしたり、無理に運動させたりする必要はありません。まずは、眠り方と体調の変化を確認しましょう。
眠っている時間と体調を記録する
受診時に状況を説明できるよう、数日から1週間程度、次のことを記録しておくと役立ちます。
- 夜に寝た時刻と朝起きた時刻
- 夜中に起きた回数と理由
- 昼寝を始めた時刻とおおよその長さ
- 呼びかけたときの反応
- 食事量や水分摂取量
- 発熱、せき、痛み、排尿・排便などの変化
- 物忘れや行動で気になったこと
「よく寝るようになった」だけでなく、「以前は昼寝をしなかったが、3日前から食後に2時間ほど眠る」など、具体的に記録すると伝わりやすくなります。
薬の追加や変更がなかったか確認する
新しい薬を飲み始めた時期と、眠気が増えた時期が重なっていないか確認します。市販のかぜ薬やアレルギー薬、健康食品なども含め、お薬手帳へ記録しておきましょう。
眠気が気になっても、処方薬を家族の判断で減らしたり中止したりせず、医師や薬剤師へ相談してください。
無理のない範囲で生活リズムを整える
体調に問題がなければ、朝にカーテンを開けて光を取り入れ、食事や就寝の時間をできるだけ一定にします。
日中は本人の体力や体調に合わせて、散歩、簡単な家事、趣味、家族との会話などを取り入れてみましょう。
ただし、眠気の原因が分からない段階で無理に活動を増やすと、転倒や体調悪化につながることがあります。ふらつきや息切れ、痛みがある場合は、活動を促す前に医療機関へ相談してください。
水分と食事の様子を確認する
水分や食事が十分に取れているか確認します。一度に多く飲むことが難しい場合は、本人の状態に合わせて少量ずつ勧める方法もあります。
ただし、心臓や腎臓の病気などで水分量を制限されている方は、医師の指示に従ってください。
眠っているときの呼吸を確認する
大きないびきが続く、呼吸が何度も止まる、息苦しそうに目を覚ますといった様子がないか確認します。
気になる様子がある場合は、可能であれば本人の同意を得て、スマートフォンなどで短く記録しておくと、受診時の参考になることがあります。
離れて暮らしている場合は見守りサービスも検討する
親と離れて暮らしていると、日中にどのくらい活動しているのか、いつから眠る時間が増えたのかを家族が把握するのは難しいものです。
毎日電話をかけても、電話に出ないだけで「何かあったのでは」と不安になることもあります。また、親にとっても、何度も安否を確認されることが負担になる場合があります。
このような場合は、スマートフォンから家族や家の様子を確認できる見守りサービスを取り入れる方法もあります。
ソニーネットワークコミュニケーションズの「MANOMA(マノマ)」には、離れて暮らす親の生活を見守るためのセットがあります。対応する機器やアプリを利用し、室内の様子を確認したり、家族とコミュニケーションを取ったりすることができます。
離れて暮らす親の見守り方法を探している方は、サービス内容や料金、設置条件を確認してみてください。
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ただし、見守りサービスは医療機関や救急サービスの代わりになるものではありません。体調の異変が疑われる場合や、呼びかけに反応しないなど緊急性のある場合は、サービス上の情報だけで判断せず、近くにいる家族へ確認を頼む、119番へ連絡するなど状況に合った対応が必要です。
うたた寝が増えたときは何科へ相談する?
親のうたた寝が増え、以前との違いが気になる場合は、まずかかりつけ医へ相談しましょう。
眠気の原因は、認知症だけでなく、薬の影響、脱水、感染症、睡眠障害、心臓や呼吸器の病気などさまざまです。普段の持病や服薬状況を把握しているかかりつけ医であれば、必要な検査や専門医への紹介について判断してもらえます。
かかりつけ医がいない場合は、次のような医療機関や相談先があります。
- 近くの内科
- もの忘れ外来
- 脳神経内科
- 老年内科
- 認知症の診療に対応している精神科
- 地域包括支援センター
認知症が心配だからといって、最初から専門外来を受診しなければならないわけではありません。まず内科で全身状態や薬の影響を確認し、必要に応じて専門医を紹介してもらう方法もあります。
どこへ相談すればよいか分からない場合は、地域包括支援センターへ相談できます。本人が住んでいる地域を担当するセンターへ連絡し、受診先や介護に関する困り事を伝えてみましょう。
受診するときに家族が伝えたいこと
診察では、本人が「特に変わりない」「ちゃんと寝ている」と答えることもあります。家族が感じている変化を、できるだけ具体的に伝えましょう。
- 眠る時間が増え始めた時期
- 昼寝の回数とおおよその長さ
- 呼びかけたときの反応
- 夜間の睡眠、いびき、無呼吸の様子
- 食欲、水分摂取、体重の変化
- 発熱、せき、痛み、排尿・排便の変化
- 最近追加・変更された薬
- 物忘れや日常生活でできなくなったこと
- 転倒やふらつきの有無
「最近よく寝ています」だけではなく、「1週間ほど前から、昼食後に2時間以上眠り、声をかけてもなかなか起きないことが3回あった」など、時期や回数を添えると状況が伝わりやすくなります。
お薬手帳、マイナ保険証または資格確認書、過去の検査結果なども、必要に応じて持参しましょう。
すでに認知症と診断されている場合は?
認知症と診断されている方でも、眠る時間が急に増えた場合に「認知症が進んだから」と決めつけるのは危険です。
体調不良、脱水、感染症、便秘、痛み、薬の影響などによって、急に元気がなくなったり、反応が鈍くなったりすることがあります。
特に、数時間から数日の間に様子が変わった場合や、時間帯によって受け答えや意識状態が大きく変わる場合は、せん妄が起きている可能性もあります。
せん妄とは、病気や薬、入院などをきっかけに、注意力や意識の状態が一時的に乱れることです。落ち着きがなくなるだけでなく、ぼんやりして眠っているように見えることもあります。
普段と明らかに違う場合は、次回の定期受診まで待たず、かかりつけ医へ連絡してください。呼びかけへの反応がおかしい、会話ができない、呼吸が苦しそうなどの症状がある場合は、119番へ連絡しましょう。
親が受診を嫌がるときはどうする?
本人に「認知症かもしれないから病院へ行こう」と伝えると、否定されたように感じ、受診を拒むことがあります。
その場合は、認知症の検査を前面に出さず、次のように伝える方法もあります。
「最近よく眠そうだから、薬が合っているか先生に確認してもらおう」
「食後にふらつくことがあるから、血圧や体調を一度診てもらおう」
本人をだまして連れて行くのではなく、家族が実際に心配している体調の変化を理由として説明することが大切です。
それでも受診が難しい場合は、家族だけでかかりつけ医へ相談できるか確認したり、地域包括支援センターへ対応方法を相談したりできます。
高齢者のうたた寝に関するよくある質問
Q.昼寝が増えただけで認知症と判断できますか?
昼寝やうたた寝が増えただけでは、認知症かどうかを判断できません。
夜間の睡眠不足、薬の影響、脱水、感染症、睡眠時無呼吸症候群、気分の落ち込みなど、ほかの原因も考えられます。
同じことを何度も尋ねる、薬やお金の管理が難しくなる、慣れた場所で迷うなど、物忘れや生活上の変化も見られる場合は、医療機関へ相談しましょう。
Q.食後に毎回寝るのは問題がありますか?
以前からの習慣で、起きたあとは普段どおりに過ごしている場合は、食後に眠ることだけで病気とは判断できません。
ただし、急に眠り込むようになった、呼びかけへの反応が鈍い、ふらつきや冷や汗を伴う、食事量が減っているといった変化がある場合は、かかりつけ医へ相談してください。
Q.昼寝は何分までなら大丈夫ですか?
年齢、夜間の睡眠、体調、持病などによって異なるため、「何分以内なら問題ない」と一律には判断できません。
昼寝の長さだけでなく、以前より眠る時間が増えていないか、起きたあとに普段どおり活動できるか、夜の睡眠に影響していないかを確認しましょう。
Q.寝ている親を起こした方がいいですか?
いつもの昼寝で、呼びかけると普段どおり反応する場合は、無理に何度も起こす必要はありません。
一方、呼びかけても目を覚まさない、反応や会話がおかしい、呼吸の様子がいつもと違う場合は、単なる睡眠ではない可能性があります。緊急性を感じる場合は119番へ連絡してください。
まとめ|うたた寝だけで認知症と決めつけず、普段との違いを確認しよう
高齢者のうたた寝が増えることと認知症には、関係がある場合もあります。しかし、昼間によく眠るという変化だけで、認知症の有無や進行を判断することはできません。
日中の眠気には、夜間の睡眠不足、薬の影響、脱水、感染症、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな原因が考えられます。
- いつから眠る時間が増えたのか
- 呼びかけると普段どおり反応するか
- 食事や水分を取れているか
- 薬の追加や変更がなかったか
- 物忘れや行動の変化も起きていないか
このような点を確認し、気になる変化が続く場合は、まずかかりつけ医へ相談しましょう。
すでに認知症と診断されている方でも、急に眠る時間が増えたときは、認知症の進行だけが原因とは限りません。普段との違いが大きい場合は、次回の定期受診まで待たずに医療機関へ連絡してください。
呼びかけても反応しない、会話ができない、ろれつが回らない、呼吸がおかしいといった症状がある場合は、様子を見続けず119番へ連絡しましょう。
離れて暮らしていて普段の様子を確認しにくい場合は、家族間で連絡方法を決めたり、本人と相談したうえで見守りサービスを利用したりする方法もあります。
うたた寝そのものを止めさせるのではなく、眠り方や体調の変化に気づき、必要な相談先につなげることが大切です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、病気の診断や治療に代わるものではありません。症状に不安がある場合は、医療機関へご相談ください。
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