介護が必要になった初期段階にする暮らしの工夫7選

「あれ、ちょっと最近おかしいかな?」

家族が認知症かもしれないと気づいたとき、いきなり介護生活が始まるわけではありません。初期の段階だからこそ、家庭の中でできる工夫や環境づくりがあります。

この記事では、認知症の初期に取り入れやすい“7つの暮らしの工夫”をご紹介します。筆者自身の体験も交えて、実際に効果があったことや、補助金の活用法なども含めて丁寧にお伝えします。

1. 手すりの設置で「転ばない家」をつくる

家の階段に手すり工事をしてもらっているイラスト

認知症の初期でも、体の機能が一気に落ちるわけではありません。しかし、判断力や反応の遅れから、つまずきや転倒のリスクが高まります。

特に階段、トイレ、浴室の手すりは安心感を与えるだけでなく、実際の事故防止にも直結します。

介護保険の「住宅改修制度」を使えば、最大20万円まで(1割〜3割負担)で設置が可能です。

私も1番最初に利用したのは「住宅改修制度」です。

気をつけないといけないのは

「施工してしまってからではダメ」ということ。

業者に見積もってもらい、申請し承認が出てからの施工でないと補助金は出ません。

【補足】介護保険の住宅改修の流れ

「手すりや段差解消に補助が使える」と言っても、手順がわからず後回しにしてしまう人も多いです。以下が基本の流れです。

  • ① 介護認定(要支援1以上)が必要
  • ② ケアマネージャーが必要性を判断
  • ③ 工事前に市区町村へ事前申請
  • ④ 承認後に工事を実施(上限20万円)
  • ⑤ 領収書や写真を添えて事後申請→費用の一部が返金される

自治体によって補助内容や事前相談の窓口が異なるため、まずは地域包括支援センターに問い合わせるのがスムーズです。

鍵の管理「うっかり」から守るために

家を出た後、「鍵を閉めたか覚えていない」「外に出て戻れない」などのトラブルも増えてきます。

おすすめは「自動施錠つきの電子錠」や「家族が遠隔で確認できるスマートロック」。また、玄関ドアの内側に二重ロックを設けて、徘徊予防にするケースもあります。

福祉用具や見守り機器として扱われる製品もあり、自治体によっては助成金が使える地域もあります。

冷蔵庫・薬・電気製品の「見える化」

認知症の初期では日常動作の「抜け・忘れ」が起こりやすくなります。

たとえば、冷蔵庫に同じ食品を何度も買ってしまったり、薬の飲み忘れ・重複が起きたり。

以下のような工夫が効果的です。

  • 薬は「1週間分を朝・昼・晩に分けるピルケース」に
  • 冷蔵庫に「買い置きリスト」や写真を貼る
  • 使用しないコンセントにカバーをつける

「ラベリング」や「定位置収納」も、混乱を減らす大事な工夫になります。

カレンダー&予定表で時間感覚を支える

認知症の初期では、日付や曜日の混乱が起こりがちです。

大きな字で予定が書き込める「日めくりカレンダー」や、「今日は何曜日・何日かがわかる時計」などを活用すると、安心感を得られるうえ、生活のリズムが整います。

市販のデジタル日付表示器も便利で、「朝・昼・夜」の感覚もサポートできます。

超大事!生活の中に「できること」を残す

家族が心配するあまり、すべてを代わってしまうと、本人の自信が失われ、症状が進行しやすくなることがあります。

たとえば、以下のような工夫をしてみましょう。

  • 料理は材料を用意してもらうだけにする
  • 洗濯物をたたむ、花に水をやるなど簡単な家事を任せる
  • 本人の「役割」を尊重する声かけをする

「してもらう」ではなく「一緒にやる」ことが、心の支えになります。

家族の不安は、早めに共有

認知症などは、家族が抱え込むことで孤立感や疲れが増してしまうこともあります。

気になることがあれば、地域包括支援センターやかかりつけ医、民間の家族会に相談しましょう。

「この時期にどんな支援があるか」「家の改修に補助金が使えるか」など、情報を共有することで次の一歩が見えてきます。

💡「うっかり」を見守るやさしい道具たち

最近は、認知症の初期段階に使える見守りグッズや福祉機器が増えています。

たとえば

  • 徘徊予防に「GPSタグ」や「靴に入れる追跡端末」
  • ガスの消し忘れに対応する「自動消火機能つきガスコンロ」
  • 室温が高すぎるとアラームが鳴る「温度感知機器」

これらは自治体の高齢者支援制度で無料・一部助成される場合もあるため、お住まいの地域の情報を確認してみてください。

やってよかった工夫、失敗した工夫(私の経験談)

私の親の場合も、最初は「たまに忘れっぽい」程度でしたが、薬の飲み間違いが2回続いたことをきっかけに環境を見直しました。

ピルケースやラベル整理はうまくいきましたが、失敗だったのが「最新のスマート家電」を導入してしまったことです。

音声で操作するタイプの電子レンジは、逆に混乱を招いてしまい、結局「一つのボタンで温めだけできるタイプ」に買い直しました。

この経験から、「新しい=便利」ではなく、“わかりやすくて迷わない”ことが一番大切だと実感しました。

家族は「頑張りすぎない」こと

つい「もっとちゃんと見てあげないと」と思い詰めてしまいがちですが、家族が倒れてしまっては元も子もありません。

だからこそ、暮らしの中で「がんばらなくてもできる工夫」を取り入れましょう。

カレンダーに予定を書くときも、「見せる」のではなく「一緒に書く」。
鍵やガスも、「心配だから」ではなく「安心のため」と伝える。
このやさしい一工夫が、本人の尊厳も家族の気持ちも守ってくれます。

「まだできる」今だからこそ、暮らしを整える

認知症の初期段階は、介護が始まる前の「準備期間」。この時期に何をするかで、これからの生活が大きく変わります。

できなくなったことばかりに目を向けず、できることを支え、暮らしの安心を増やすことが家族の支援になります。

補助金制度や地域支援を上手に使いながら、本人も家族も心穏やかに過ごせる環境を一歩ずつ整えていきましょう。

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