認知症の人と穏やかに会話する5つのコツ|安心・共感・否定しない接し方

認知症の方との会話は、思うように通じなかったり、予想外の反応が返ってきたりと、日々の中で悩みが尽きませんよね。

ですが、少しだけ接し方の「コツ」を知っているだけで、会話の雰囲気がぐっと穏やかになります。

この記事では、介護現場や家族向け講習でも繰り返し伝えられている「認知症の人とやさしく向き合う5つの基本」について、わかりやすく紹介します。

■ 1. 安心や共感の言葉を大切に

笑顔の若い女性と高齢の女性が寄り添うように立ち、青空と草花に囲まれた穏やかな風景を背景にした、介護をテーマにしたやさしいタッチのイラスト

認知症の方は、記憶が曖昧でも、「不安」「緊張」といった感情は強く残りやすいと言われています。

だからこそ、まずは「安心できる言葉かけ」が何よりの基本です。

  • 「大丈夫ですよ」
  • 「そうですよね、不安になりますよね」
  • 「私も一緒に考えますからね」

このような、共感・安心を伝えるひとことがあるだけで、相手の表情がふっと和らぐことも少なくありません。

■ 2. 強く否定しない|記憶よりも「感情」が残る

「そんなこと言ってないよ!」

「また忘れたの?」

つい口にしたくなる言葉ですが、否定されたり怒られたりしたことは、記憶が曖昧でも「イヤだった」という感情だけが残ってしまうことがあります。

これは、認知症の方の脳の働きが「エピソード記憶」より「感情記憶」の方が強く働くためです。

間違いに気づかせるより、「そう思われたんですね」と一度受け止める姿勢が、関係を穏やかに保つ第一歩です。

■ 3. 納得してもらえるように話す

認知症の方が「話がわからない」のではなく、“理由が理解できない”ことに不安や混乱を感じているケースがよくあります。

「もう行きますよ!」ではなく、

「このあとお食事があるので、そろそろ向かいましょうか」など、行動の意味や流れを説明すると、納得しやすくなります。

時間はかかっても、「急に何かされる」と感じさせないことが大切です。

■ 4. 小さな「できた」を大きく褒める

認知症が進んでも、「褒められた」「役に立った」という感覚は、心を穏やかにする力があります。

たとえば

  • 「靴を履けた」
  • 「手を洗った」
  • 「ありがとう、と言ってくれた」

どれも素晴らしいことです。「すごいですね!助かりました!」と笑顔で伝えることで、本人の自尊心が守られ、穏やかな表情につながります。

■ 5. 絶対に急かさない|さりげないサポートを

認知症の方は、思考の速度がゆっくりになっており、せかされると不安や混乱が一気に増してしまいます。

時間がかかっても、

「ゆっくりでいいですよ」

「ゆっくりやりましょう」

と声をかけ、どうしても難しい動作は、気づかれないようにさりげなくサポートするのが理想です。

無理にやらせるのではなく、

「一緒にやる」

という気持ちが伝わると、自然に受け入れてくれることも増えます。

■ こんなとき、どうする?よくある悩みと工夫

介護をされている方からは、こんな声をよく耳にします。

  • 「同じ話を何度も繰り返されて、ついイライラしてしまう…」
  • 「外では笑っているのに、家では急に怒りっぽくなってしまう」
  • 「やさしくしたいのに、余裕がない…」

そんなときは、“すべてをうまくやろうとしないこと”が大切です。

認知症のある方は、周囲の雰囲気や言葉のトーンにとても敏感です。

言葉が足りなくても、安心できる空気や穏やかな表情があるだけで、気持ちが落ち着くこともあります。

■ 実際に効果があった「ちょっとした工夫」

以下は、現場や家族の方が実践して「これは良かった」と感じた声です。

  • 「声をかける前に、そっと手に触れてから話しかけると、スムーズに聞いてくれるようになった」
  • 「できたことに“ありがとう”を添えると、本人の表情がやわらいだ」
  • 「“お茶を入れてくれる?”と頼むことで、自信を取り戻してくれた」

どれも大げさな工夫ではありませんが、本人の“できる力”を尊重することが、安心や笑顔につながるという共通点があります。

■ あなた自身も、いたわってください

認知症の方への接し方を学ぶことはとても大切ですが、それを続けていくには、介護する側の心の余裕も必要です。

「今日はうまくできなかった」と落ち込む日もあるかもしれません。

でも、そんな日があるのは当たり前です。

完璧を目指すよりも、「ちょっと気をつけてみよう」と思えるその気持ちが、何より大切なのです。

■ まとめ|“伝える”より“伝わる”を大切に

認知症の方と接するとき、「言葉の正しさ」よりも「心の温度」が何より伝わります。

  • 否定せず
  • 焦らせず
  • 褒めて安心させる

その積み重ねが、お互いにとって心地よい関係を築く鍵になります。

しかし、認知症のある方との毎日は、大変です。

言葉で言い表せないような、気持ちが湧き出ることもあります。

うまくいかない日。。そんなの毎日・・と言われるかもしれません。

「こんなこと、言いたくないのに・・」

と、怒ってしまった後で、優しいあなたなら自分を責めることもあるでしょう。

でも、大切なのは根っこにある「心を通わせたい」というたった一つの気持ちです。

少しずつで大丈夫です。

あなたのその優しさは、きっと伝わっています。

時には、言いすぎてしまう日もあって当たり前です。

でも大丈夫。

明日から、また少しだけ意識してみてください。

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