「親には糖尿病や心臓病があるけれど、介護施設に入れるのだろうか」
「透析やインスリン注射が必要だと、施設から断られる?」
介護施設を探すとき、持病のある方のご家族は、医療面についても不安を感じると思います。
結論からいうと、持病があるだけで介護施設へ入れないわけではありません。
ただし、受け入れの可否は病名だけでは決まりません。必要な医療処置、通院回数、症状の安定性、看護職員の勤務時間、協力医療機関との連携などをもとに、施設ごとに判断されます。
また、施設に医師が関わっていても、外部の病院を受診するときは家族の付き添いが必要になることがあります。
この記事では、持病があっても介護施設へ入れるのか、受け入れ先が限られやすいケース、透析やインスリンなどの医療対応、入居前に確認しておきたい通院や付き添いについて解説します。
持病があっても介護施設に入れる?

高血圧、糖尿病、心臓病、腎臓病などの持病があっても、症状が安定しており、施設で必要な支援を受けられる場合は入居できます。
実際には、高齢になるほど複数の持病を抱えている方が多く、「持病がある」という理由だけで一律に入居を断られるわけではありません。
施設が確認するのは、病名そのものより、次のような内容です。
- 症状が安定しているか
- 急変する危険性が高くないか
- 毎日どのような薬を飲んでいるか
- 本人が服薬や医療処置を自己管理できるか
- 看護師による処置が必要か
- 夜間にも医療的な対応が必要か
- 定期的な通院が必要か
- 食事や水分に制限があるか
- 認知症により治療や処置を拒否することがあるか
- 施設の職員体制で安全に対応できるか
同じ糖尿病でも、飲み薬だけで安定している方と、決まった時間の血糖測定やインスリン注射が必要な方では、施設側に求められる対応が異なります。
そのため、「糖尿病の人を受け入れていますか」と尋ねるだけでなく、必要な処置の内容と時間帯まで伝えることが大切です。
医師と連携している施設なら安心?
近年は、介護施設と協力医療機関との連携が強化されています。
2024年度の介護報酬改定では、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などについて、入居者の急変時に相談・診療・入院受け入れを行う協力医療機関との連携体制が見直されました。
厚生労働省の2025年度調査の速報値では、一定の要件を満たす協力医療機関を定めている割合は、特別養護老人ホームで67.9%、介護老人保健施設で83.3%、介護医療院で84.9%でした。厚生労働省「高齢者施設等と医療機関の連携体制」
ただし、協力医療機関があることと、医師が施設に常駐していることは同じではありません。
常勤医師
常勤医師とは、その施設で常勤している医師です。介護老人保健施設や介護医療院には医師の配置基準がありますが、必要な人数や勤務形態は施設の種類や規模によって異なります。医師が配置されていても、24時間いつでも施設内にいるとは限りません。
一方、特別養護老人ホームで常勤・専従の医師を配置している施設は限られます。
配置医・嘱託医
定期的に施設を訪れ、入居者の健康管理や療養上の指導を行う医師です。
施設内に診療所があるとは限らず、医師が毎日いるわけでもありません。
協力医療機関・提携医療機関
入居者が体調を崩したときの相談、診療、入院などについて施設と連携する医療機関です。
協力医療機関があっても、すべての病気を施設内で治療できるわけではありません。
施設の種類によって医療対応が違う
施設を選ぶときは、名称だけでなく、実際の医療・看護体制を確認する必要があります。
| 施設の種類 | 医療対応の特徴 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 生活介護が中心。配置医や協力医療機関と連携するが、医師が常駐しているとは限らない |
| 介護老人保健施設 | 在宅復帰を目指し、リハビリ、必要な医療、介護を提供する |
| 介護医療院 | 長期療養が必要な方に、療養上の管理、看護、介護、機能訓練などを提供する |
| 介護付き有料老人ホーム | 看護職員の配置時間や医療対応は施設による差が大きい |
| 住宅型有料老人ホーム | 外部の訪問診療、訪問看護、介護サービスなどを組み合わせる場合が多い |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 基本は住まい。介護・看護・医療の提供体制は住宅によって異なる |
| グループホーム | 認知症の方が対象。医療対応や看護職員の配置は事業所によって異なる |
厚生労働省は、特別養護老人ホームを常に介護が必要な方へ日常生活上の支援などを提供する施設、老健を在宅復帰に向けてリハビリや必要な医療・介護を提供する施設と説明しています。
介護医療院は、長期にわたって療養が必要な方を受け入れ、療養上の管理や看護、介護などを提供する施設です。厚生労働省「介護サービス情報公表システム」
ただし、医療対応が比較的充実している施設でも、どのような状態の方でも入れるわけではありません。
受け入れ先が限られやすいケース
次のような状態では、対応できる施設が限られることがあります。
- 病状が安定していない
- 頻繁に急変する可能性がある
- 夜間にも看護師による処置が必要
- 決まった時間の医療処置が必要
- 頻繁な通院が必要
- 特殊な医療機器を使用している
- 感染症の治療中である
- 認知症により医療処置を強く拒否する
- 継続的な治療や入院が必要
- 施設の看護・介護職員では対応できない医療行為が必要
「看護師がいる施設」と紹介されていても、夜間は看護師が不在で、電話によるオンコール対応になっている場合があります。
日中に対応できる処置でも、夜間や早朝には対応できないことがあるため、処置が必要な時間まで伝えなければ正確な判断はできません。
医療処置・持病別に確認したいこと
糖尿病・インスリン注射
糖尿病があるだけで入居できないわけではありません。
確認が必要なのは、次のような点です。
- 飲み薬だけで症状が安定しているか
- 血糖測定が必要か
- 本人が自己注射できるか
- インスリン注射が必要な時間
- 低血糖を起こしたことがあるか
- 糖尿病食に対応できるか
- 看護師が不在の時間帯に処置が必要にならないか
本人がこれまで自己注射できていても、認知症や身体機能の低下によって管理が難しくなることがあります。
将来、自己注射ができなくなった場合の対応も確認しておくと安心です。
在宅酸素療法
在宅酸素を利用している方を受け入れている施設もあります。
ただし、酸素機器の管理、チューブによる転倒防止、火気の管理、停電時の対応などを確認する必要があります。
酸素を使っていることだけでなく、流量、使用時間、外出時の携帯酸素の有無も伝えましょう。
胃ろう・経管栄養
胃ろうなどの経管栄養は、注入する回数や時間帯によって受け入れの可否が変わることがあります。
日中は看護職員が対応できても、早朝や夜間の注入には対応できない施設もあります。
チューブを自分で抜いてしまう可能性がある場合などは、認知症の状態もあわせて相談します。
たんの吸引
たん吸引が必要な方は、対応できる看護職員や研修を修了した介護職員の配置が必要になります。
特に夜間も頻繁に吸引が必要な場合は、対応できる施設が限られます。
吸引の回数や時間帯を記録し、入居相談時に伝えることが大切です。
ストーマ
ストーマがあっても、本人が自分で管理できる場合や、施設側に対応できる職員がいる場合は入居できる可能性があります。
装具交換を誰が行うのか、皮膚トラブルが起きたときにどう対応するのかも確認します。
心臓病・腎臓病
薬で症状が安定していれば受け入れられる場合があります。
一方で、頻繁な検査、厳格な水分管理、急変時の対応などが必要な場合は、施設の医療体制との調整が必要です。
塩分や水分などの制限食に対応できるかも確認しておきましょう。
人工透析を受けていると入居は難しい?
人工透析を受けている方も介護施設へ入居できる場合があります。
ただし、週3回程度の定期的な通院が必要になるため、ほかの持病より受け入れ先が限られやすい傾向があります。
問題になりやすいのは、透析そのものよりも送迎と付き添いです。
- 現在の透析先へ通い続けられるか
- 施設近隣の透析医療機関へ変更できるか
- 透析先の送迎車を利用できるか
- 施設が送迎できるか
- 家族の付き添いが必要か
- 車いすのまま乗車できるか
- 透析後の血圧低下や体調不良に対応できるか
- 水分・塩分などの食事制限に対応できるか
- シャントの状態を観察できるか
透析クリニックを併設している施設や、透析患者の送迎に対応している施設もあります。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも、併設医療機関や併設透析診療所との連携により、人工透析が必要な方の入所に対応している施設を確認できます。介護サービス情報公表システム
また、2024年度には、透析が必要な特養入所者について、一定の条件のもとで施設職員が月12回以上通院送迎を行った場合に算定できる「特別通院送迎加算」が新設されました。厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」
ただし、この加算があるからといって、すべての特養が透析の送迎に対応しているわけではありません。
入居相談時には、「透析患者を受け入れていますか」だけでなく、送迎・付き添い・費用まで確認することが大切です。
提携医師がいても外部受診の付き添いは別
配置医や協力医療機関が診られる範囲を超えた場合、専門の診療科や外部の病院を受診することがあります。
その際、次の対応は施設によって異なります。
- 病院の予約
- 病院までの送迎
- 診察中の付き添い
- 医師からの説明の聞き取り
- 薬の受け取り
- 家族への報告
家族の付き添いを求める施設もあれば、施設職員が送迎や受診時の付き添いに対応する施設もあります。
どこまでが通常のサービスに含まれるか、別料金になるかは、施設の種類や契約内容によって異なります。
特に有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などでは、協力医療機関以外への通院、指定された範囲を超える送迎、長時間の付き添いなどが「個別に選択するサービス」とされ、別料金になる場合があります。
その場合、職員の付き添い料金、待機時間に応じた料金、施設車両の使用料、交通費、駐車料金、介護タクシー代などが必要になることがあります。
一方、特別養護老人ホームなどの介護保険施設では、通院介助や送迎の費用の扱いが異なるため、一律に別料金とはいえません。
また、職員体制や受診先によっては、有料でも付き添いを頼めない場合があります。契約前に、重要事項説明書や料金表で確認しておくことが大切です。
施設勤務で感じた通院付き添いの現実
私が施設で経理をしていたときも、施設には医師が関わっていました。
しかし、入居者の調子が悪くなり、施設外の病院や専門の診療科を受診する場合、付き添いを家族にお願いすることがありました。
施設の介護職員が付き添う場合は、別料金になることもあります。
「施設へ入ったら通院もすべて任せられる」と思われるかもしれませんが、実際には施設ごとに対応が異なります。
家族が遠方に住んでいる場合や、仕事で平日の付き添いが難しい場合は、入居前に必ず確認しておきたい部分です。
救急搬送時も家族の対応が必要になることがある
急変して救急車で病院へ運ばれた場合も、施設職員が最後まで付き添うとは限りません。
職員が救急車へ同乗しても、病院で家族と交代する場合があります。施設内の職員配置を維持するため、長時間病院に残れないこともあるためです。
救急搬送時については、次の点を確認しておくと安心です。
- 救急車に施設職員が同乗するか
- 病院で家族との交代を求められるか
- 夜間でも家族が病院へ行く必要があるか
- 家族が到着できない場合はどうなるか
- 救急搬送先は決まっているか
- 入院した場合、居室を確保できる期間
- 入院中の家賃や管理費
- 退院後に施設へ戻るための条件
緊急時には落ち着いて確認できないため、契約前や入居時に聞いておくことが大切です。
入居後に持病が悪化したら退去になる?
持病が悪化したからといって、すぐに退去になるとは限りません。
訪問診療や訪問看護、協力医療機関との連携によって、施設での生活を続けられる場合もあります。
一方、次のような状況になると、施設での対応が難しくなることがあります。
- 長期入院が必要になった
- 施設で対応できない医療処置が必要になった
- 夜間も継続的な医療管理が必要になった
- 頻繁な急変に対応できない
- 入院後、以前より介護・医療の必要性が高くなった
- 施設の退去条件に該当した
退去の条件は、施設の入居契約書や重要事項説明書などに記載されています。
特に有料老人ホームでは、重要事項説明書に記載されたサービス内容や費用、契約解除の条件を確認しておきましょう。厚生労働省も、重要事項説明書には実態に即した正確な記載を求めています。厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」
施設へ持病を正確に伝える
「病気を伝えると断られるかもしれない」と考え、持病や医療処置について詳しく伝えたくないと思う方もいるかもしれません。
しかし、情報が不足したまま入居すると、施設側が必要な準備をできず、本人の安全に関わる可能性があります。
入居相談時には、次の資料を用意しておくと話が進みやすくなります。
- 診療情報提供書
- 健康診断書
- お薬手帳
- 現在服用している薬の一覧
- 既往歴
- 入退院歴
- 医療処置の内容と時間帯
- 通院先と通院頻度
- 食事や水分の制限
- 緊急時の対応についての希望
施設指定の診断書が必要になることもあるため、先に必要書類を確認してから主治医へ依頼しましょう。
入居前に確認したい医療・通院チェックリスト
施設を見学するときは、「医療連携あり」という説明だけで決めず、具体的な対応を確認します。
医師・看護師について
- 医師は常勤か、定期訪問か
- 医師の診察は週何回または月何回か
- 看護師が勤務している時間
- 夜間は看護師がいるか
- オンコールは誰が対応するか
- 持病の薬を継続して処方してもらえるか
- どのような医療処置に対応できるか
外部受診について
- 今のかかりつけ医へ通い続けられるか
- 協力医療機関以外も受診できるか
- 予約は誰が取るか
- 送迎は誰が行うか
- 診察への付き添いは誰が行うか
- 家族の付き添いが必要か
- 施設職員へ頼む場合の料金
- 介護タクシー代や交通費
- 家族が付き添えない場合の対応
病状が変化した場合
- 受けられなくなる医療処置は何か
- 入院中も居室を確保できるか
- 入院中にかかる費用
- 退去を求められる条件
- 看取りに対応しているか
- 医療対応が難しくなった場合の転居先を相談できるか
可能であれば、説明を口頭で聞くだけでなく、料金表、重要事項説明書、入居契約書でも確認しておきましょう。
持病を理由に断られたらどうする?
一つの施設から断られても、すべての施設へ入れないと決まったわけではありません。
同じ種類の施設でも、医師や看護職員の配置、協力医療機関、受け入れ実績は異なります。
断られたときは、次の点を確認します。
- どの医療処置が理由だったのか
- 夜間の対応が難しいのか
- 通院や送迎が問題なのか
- 病状が安定すれば再検討できるか
- 別の施設種別なら対応できるか
- 訪問診療や訪問看護を組み合わせられるか
相談先としては、担当ケアマネジャー、地域包括支援センター、入院中であれば病院の医療ソーシャルワーカーなどがあります。
透析を受けている方の場合は、現在の透析医療機関にも相談してみましょう。送迎可能な施設や、過去に受け入れ実績のある介護施設について情報を得られる場合があります。
よくある質問
薬をたくさん飲んでいても施設に入れますか?
薬の数だけで入居できないとは限りません。
ただし、服薬時間が複雑な場合や、本人による自己管理が難しい場合は、施設が安全に管理できるか確認されます。
看護師がいる施設なら、インスリン注射もお願いできますか?
看護師が勤務していても、注射が必要な時間に不在であれば対応できないことがあります。
「看護師がいるか」だけでなく、勤務時間と注射が必要な時間を確認しましょう。
協力医療機関なら無料で診てもらえますか?
協力医療機関であっても、通常の診察や検査、薬などには医療保険の自己負担が生じます。
送迎、付き添い、交通費などが別にかかる場合もあります。
家族が遠方でも入居できますか?
家族が遠方でも入居できる施設はあります。
ただし、外部受診、救急搬送、入院手続き、病状説明などで家族の対応を求められる可能性があります。家族がすぐに行けない場合の対応を、入居前に相談しておく必要があります。
人工透析を受けていても特養に入れますか?
透析中の方を受け入れている特養もあります。
ただし、透析先、送迎、付き添い、食事管理、透析後の体調管理などの条件がそろう必要があります。施設ごとの受け入れ体制を確認しましょう。
まとめ
持病があるだけで、介護施設へ入れないわけではありません。
受け入れの可否は、病名だけでなく、症状の安定性、必要な医療処置、処置を行う時間帯、通院頻度、看護職員の配置などによって決まります。
また、施設に配置医や協力医療機関があっても、医師が24時間常駐しているとは限りません。外部の病院を受診するときは、家族の付き添いが必要になったり、施設職員への付き添い依頼が有料になったりすることもあります。
特に人工透析など定期的な通院が必要な方は、受け入れの可否だけでなく、送迎と付き添いを誰が担当し、どのくらいの費用がかかるのかまで確認することが大切です。
施設によって医療対応には大きな違いがあります。パンフレットの「医療連携あり」だけで判断せず、本人に必要な処置を具体的に伝え、重要事項説明書や料金表も確認して選びましょう。


