
親が財布や鍵、眼鏡などを見つけられず、家の中を何度も探している。そんな様子が増えると、「認知症の始まりなのかな」「どう声をかければいいのだろう」と心配になりますよね。
物をなくしたり、しまった場所を忘れたりすることは、認知症のある方にも見られる変化の一つです。ただし、物をなくすことだけで認知症とは判断できません。まずは本人の不安を受け止めながら、探しやすい環境を整えていきましょう。
この記事のポイント
- 物をなくした本人を責めず、まずは一緒に探す
- よく使う物の置き場所を決め、見つけやすくする
- 「盗られた」と言われたときは、否定や反論を急がない
- 探し物が増え、生活に支障が出ているときは相談する
親が物をなくすのは認知症のサイン?
財布や鍵をどこに置いたか分からなくなり、いつも探している様子は、認知症の初期に見られることがあります。政府広報オンラインでも、「しまい忘れ・置き忘れが増え、いつも探し物をしている」「財布や通帳を盗まれたと人を疑う」といった変化が例として紹介されています。
一方で、年齢を重ねると、誰でも人の名前や物を置いた場所をすぐに思い出せないことがあります。物を一度なくしたからといって、認知症だと決めつけることはできません。疲れや体調、視力の低下、生活環境の変化などが影響することもあります。
大切なのは、「前と比べて探し物が増えたか」「同じ場所を何度も探すか」「家事や買い物など、ほかのことにも困りごとが出ているか」を落ち着いて見ていくことです。気になる変化が続くときは、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談しましょう。
地域包括支援センターで相談できる内容や利用のポイントについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
物をなくしたとき、家族ができる探し方
まずは本人の焦りに寄り添う
大切な物が見つからないと、本人は焦ったり不安になったりします。家族から見ると、いつもの場所にあるような物でも、本人にとっては「なくしてしまった」という切実な困りごとです。
「またなくしたの?」「ちゃんと片付けないから」と責めると、本人の不安や怒りが強くなることがあります。まずは「見つからないと困るよね」「一緒に探してみよう」と声をかけ、気持ちを落ち着けてから探しましょう。
よく使う場所から一緒に確認する
家中を一度に探すと、本人も家族も疲れてしまいます。財布ならバッグや上着のポケット、眼鏡なら食卓や枕元など、普段使う場所から順番に確認しましょう。
本人が自分で見つけられそうなときは、家族がすぐに取り出さず、「いつもはどこに置いているかな」「バッグの中を見てみようか」と、本人が探すのを手伝います。本人が見つけたときは、「あってよかったね」と一緒に安心できる言葉をかけましょう。
見つからないときは、少し時間を置く
探しても見つからないときに、何度も「どこに置いたの?」と聞くと、本人が責められているように感じることがあります。いったんお茶を飲む、別の用事をするなど、気持ちを切り替えてからもう一度探す方法もあります。
探し物が見つかったときは、本人が分かる場所に戻します。家族が別の場所に移すと、本人が「いつもの場所にない」と混乱することがあるためです。本人に無断で物を隠したり、処分したりするのは避けましょう。
探し物を減らすための家の工夫
毎日使う物の置き場所を決める
財布、鍵、眼鏡、携帯電話など、よく使う物は「帰宅したらここに置く」という場所を決めます。玄関近くのトレーや、食卓の端に置くかごなど、本人が見つけやすく、戻しやすい場所を選びましょう。
家族の都合だけで置き場所を決めるのではなく、本人が普段どこで使っているかを確認してから決めるのがポイントです。新しいルールを一度に増やすと混乱しやすいため、まずは鍵や眼鏡など一つから始めます。
置き場所を見つけやすくする
透明なケースを使う、引き出しに「眼鏡」「薬」などのラベルを貼る、暗い場所に小さな照明を置くといった工夫も役立ちます。収納場所を増やしすぎず、見れば分かる、手を伸ばせば届く状態を意識しましょう。
眼鏡や鍵など、なくすと困る物は、同じ種類の予備を用意しておく方法もあります。ただし、似た物をいくつも置くと本人が迷うこともあるため、必要な物だけにしましょう。
「財布を盗られた」と言われたときの声かけ
置いた場所を忘れてしまった不安から、「財布を盗られた」「通帳を隠された」と感じることがあります。本人にとっては、実際に盗られたと思えるほど不安な状態です。
「盗られていないよ」「あなたがどこかに置いたんでしょ」とすぐに否定すると、本人が「信じてもらえない」と感じて、話がこじれることがあります。まずは「なくなったと思うと心配だね」「一緒に確認しよう」と、困っている気持ちを受け止めましょう。
家族が犯人扱いされると、つらく感じるのは自然なことです。本人の言葉をすべて受け入れる必要はありませんが、その場では言い争いを避け、探すことや安心できる行動に気持ちを移していきます。家族だけで対応し続けるのが苦しいときは、医療機関や地域包括支援センターに相談してください。
通帳やキャッシュカードなどが本当に見当たらず、不正利用が心配な場合は、金融機関に連絡して手続き方法を確認しましょう。家族が本人の財産を管理する必要が出てきたときも、本人の意思や判断力、金融機関のルールを確認しながら、地域包括支援センターなどに相談することが大切です。
受診や相談を考えたい目安
次のような変化が続くときは、早めに相談を検討しましょう。
- 財布や鍵などを探すことが以前より明らかに増えた
- 同じ物を何度もなくし、生活に支障が出ている
- なくした物を家族や周囲の人に盗られたと思い込むことがある
- 物忘れのほかに、家事や買い物、薬の管理などでも困りごとが出てきた
- 本人の性格や生活の様子に、以前と違う変化が続いている
相談先は、かかりつけ医、もの忘れ外来、地域包括支援センターなどです。本人が受診を嫌がる場合は、まず家族だけで地域包括支援センターに相談する方法もあります。いつ頃から、どのような物を何回ほどなくしたか、ほかに気になる変化はあるかをメモしておくと、相談時に伝えやすくなります。
なお、物をなくす変化が数か月かけてゆっくり進んだ場合と違い、急に様子が変わったときは、体調不良や薬の影響などが関係している可能性もあります。急な混乱や意識の変化がある場合は、認知症と決めつけず、早めに医療機関へ相談してください。
まとめ|本人を責めず、探しやすい環境を整えよう
親が物をなくすようになると、家族は心配になり、つい「どこに置いたの?」と問い詰めたくなることがあります。しかし、本人も見つからないことに困り、不安を感じているかもしれません。
まずは気持ちを受け止め、一緒に探すこと。よく使う物の置き場所を本人と相談して決め、見つけやすい環境を少しずつ整えることが大切です。探し物が増えて生活に影響しているときは、家族だけで抱え込まず、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談しましょう。

