親に物忘れや転倒が増えたり、入浴や排せつに手助けが必要になったりすると、「そろそろ要介護認定を申請したほうがよいのかな」と迷うことがあります。
しかし、初めて申請するときは、
- どの段階で申請すればよいの?
- どこへ行き、何を用意すればよい?
- 認定調査では何を聞かれる?
- 結果が出るまでどれくらいかかる?
- 申請や認定調査に費用はかかる?
など、わからないことも多いものです。
要介護認定とは、病気の重さだけでなく、日常生活でどの程度の介護や支援が必要かを判定する仕組みです。訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルなどを介護保険で利用するには、原則として要支援・要介護認定を受ける必要があります。
申請すると、認定調査と主治医意見書などをもとに審査が行われ、「非該当」「要支援1・2」「要介護1〜5」のいずれかが通知されます。申請そのものや認定調査、主治医意見書の作成について、申請者が費用を負担する必要はありません。
この記事では、要介護認定を申請する目安から、申請先、必要なもの、認定調査で聞かれること、結果が届いた後にすることまで、初めての方にもわかりやすく解説します。
要介護認定はいつ申請する?迷ったときの目安
要介護認定は、寝たきりになってから申請するものではありません。
次のような変化が見られ、本人や家族だけでは生活を支えることが難しくなってきたら、申請や相談を考えるタイミングです。
- 立ち上がりや歩行が不安定になった
- 転倒することが増えた
- 入浴、着替え、排せつなどに手助けが必要になった
- 物忘れや同じ行動の繰り返しが増えた
- 薬やお金の管理が難しくなった
- 家族の見守りや介護の負担が大きくなってきた
- 退院後に自宅で介護サービスが必要になりそう
本人が申請を嫌がっている場合や、申請するほどの状態かわからない場合でも、まず地域包括支援センターへ相談できます。相談したからといって、必ず申請しなければならないわけではありません。
介護サービスが必要になってから慌てないためにも、「家族だけで支えるのが少し大変になってきた」と感じた段階で相談しておくと安心です。
要介護認定はなぜ必要?

介護保険サービスを利用するには、本人にどの程度の介護や支援が必要かを確認し、原則として要支援・要介護認定を受ける必要があります。
認定された区分によって、利用できるサービスや、介護保険が適用される1か月あたりの支給限度額などが変わります。
要介護認定が必要になる主なサービスには、次のようなものがあります。
- 訪問介護(ホームヘルプ)
- デイサービス
- ショートステイ
- 福祉用具のレンタル
- 特定福祉用具の購入
- 手すりの設置などの住宅改修
- 介護保険施設への入所
ただし、要介護認定を受けていない方や「非該当」となった方でも、自治体の介護予防・生活支援サービスを利用できる場合があります。
「認定を申請する状態なのかわからない」という場合は、本人が住んでいる地域の地域包括支援センターへ相談してみましょう。
<関連記事>地域包括支援センターで何を相談できる?相談内容一覧
要介護認定の申請先と必要なもの
要介護認定は、本人が住民票を置いている市区町村の介護保険担当窓口へ申請します。
窓口へ行くのが難しい場合は、家族が申請することもできます。また、地域包括支援センターなどへ相談し、申請手続きを支援してもらえる場合もあります。
一般的に、申請時には次のものを用意します。
- 要介護・要支援認定申請書
- 介護保険被保険者証(65歳以上の方)
- 加入している医療保険を確認できるもの(40〜64歳の方)
- 主治医の氏名や医療機関名、所在地がわかるもの
- 本人や申請者の本人確認書類
- マイナンバーを確認できる書類など、自治体から指定されたもの
65歳以上の方は、介護が必要になった原因を問わず申請できます。
一方、40〜64歳の方は、医療保険に加入しており、加齢に伴う16種類の特定疾病が原因で介護や支援が必要になった場合が対象です。
必要書類や本人確認の方法は自治体によって異なります。家族が代理で申請する場合も、申請前に市区町村のホームページや介護保険担当窓口で確認しておきましょう。
主治医がいない場合はどうする?
主治医意見書は、申請者が自分で作成を依頼して提出するものではなく、市区町村から主治医へ作成が依頼されます。
かかりつけ医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察が必要になることがあります。申請時に窓口へ相談してください。
主治医意見書の作成料を、申請者が負担する必要はありません。厚生労働省「サービス利用までの流れ」
要介護認定を申請してから結果が届くまでの流れ
要介護認定の申請から結果通知までは、次のように進みます。
① 市区町村へ申請する
本人が住んでいる市区町村の介護保険担当窓口へ、要介護・要支援認定申請書を提出します。
申請は本人や家族が行えるほか、地域包括支援センター、居宅介護支援事業者、介護保険施設などに代行を依頼できる場合があります。
② 認定調査の日程を決める
申請後、市区町村の担当者などから連絡があり、認定調査の日程を調整します。
調査は本人の自宅だけでなく、入院中であれば病院、施設に入所中であれば施設で行われることもあります。
家族が同席したい場合は、日程を決めるときに伝えておきましょう。
③ 認定調査を受ける
認定調査では、市区町村の職員や委託を受けた認定調査員が本人と面談し、心身の状態や普段の生活について確認します。
調査は、全国共通の74項目からなる「基本調査」を中心に、本人の生活環境を確認する「概況調査」と、基本調査だけでは伝わりにくい介助の状況などを記録する「特記事項」によって行われます。
主に確認されるのは、次のような内容です。
- 立ち上がり、歩行、寝返りなど身体の動き
- 食事、入浴、排せつ、着替えの様子
- 視力や聴力、意思の伝達
- 物忘れや場所・時間の理解
- 外出、徘徊、昼夜逆転などの行動
- 服薬や金銭の管理
- 医療的な処置の有無
- 家族による見守りや介助の状況
認定調査は試験ではありません。その場で動作ができたかどうかだけでなく、普段の生活でどの程度の見守りや介助が必要かを確認するものです。
本人の体調に波がある場合は、「週に何回くらいできないことがあるか」「そのとき家族がどのように手伝っているか」まで具体的に伝えましょう。
④ 主治医意見書が作成される
市区町村から主治医へ依頼し、病気や心身の状態について主治医意見書を作成してもらいます。
申請する前後に受診予定がある場合は、要介護認定を申請したことや、日常生活で困っていることを主治医へ伝えておくとよいでしょう。
⑤ 一次判定・二次判定が行われる
認定調査の結果などをもとに、コンピューターによる一次判定が行われます。
その後、一次判定の結果、認定調査の特記事項、主治医意見書などをもとに、介護認定審査会が二次判定を行います。
要介護度は病気の重さだけではなく、「日常生活でどの程度の介護の手間が必要か」をもとに判定されます。厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」
⑥ 認定結果が届く
市区町村から、認定結果と介護保険被保険者証などが届きます。
結果は、次のいずれかです。
- 非該当
- 要支援1・2
- 要介護1〜5
要介護認定の結果は、申請日から原則30日以内に通知されます。
ただし、認定調査の日程調整に時間がかかった場合や、主治医意見書の作成、介護認定審査会の開催状況などにより、30日を超えることもあります。
30日以内に認定できない場合は、通常、市区町村から遅れる理由や認定までの見込み期間について通知されます。
申請から時間がたっても認定調査の連絡や結果通知がない場合は、申請した市区町村の介護保険担当窓口へ確認してみましょう。
認定結果が出る前でもサービスを利用できる?
退院が迫っている場合など、すぐに介護サービスが必要なときは、認定結果が出る前でも「暫定ケアプラン」を作成し、申請日にさかのぼって介護保険サービスを利用できることがあります。
ただし、認定結果が「非該当」だった場合は、利用したサービスの費用が原則として全額自己負担になります。
また、想定より低い要介護度に認定され、利用額がその区分の支給限度額を超えた場合は、超過分が自己負担になる可能性があります。
結果が出る前の利用には費用面の注意点があるため、自分でサービスを手配せず、市区町村や地域包括支援センター、ケアマネジャーへ早めに相談しましょう。
認定調査で普段の状態を正しく伝えるポイント
認定調査では、調査当日にたまたまできたことだけでなく、普段の生活でどの程度の見守りや介助が必要かを正しく伝えることが大切です。
高齢の方の中には、緊張や遠慮から、普段は家族に手伝ってもらっていることでも「自分でできます」「困っていません」と答えてしまうことがあります。
家族が同席できる場合は、次のような内容を具体的に伝えましょう。
- 調子のよい日はできるが、できない日もある
- ひとりでできるように見えても、声かけや見守りが必要
- 入浴、排せつ、着替えなどを家族が手伝っている
- 転倒や転びそうになったことがある
- 薬の飲み忘れや重複がある
- 夜間のトイレや徘徊への対応が必要
- 同じ質問や電話を何度も繰り返す
- 火の消し忘れや金銭管理などに不安がある
「大変です」とだけ伝えるより、「週に3回ほど失敗する」「夜中に2回起きて付き添っている」など、頻度や実際の介助内容を伝えるほうが、普段の状態を理解してもらいやすくなります。
調査前の1週間ほど、困ったことや家族が手伝ったことをメモしておくと、伝え忘れを防げます。
本人の前では話しにくい内容がある場合は、事前にメモを渡したり、本人とは別に話す時間を設けてもらえないか相談したりする方法もあります。
状態を大げさに伝える必要はありませんが、本人への遠慮から、実際よりも軽く説明しないことが大切です。
認定結果によって利用できる支援が変わる
要介護認定の結果は、「非該当」「要支援1・2」「要介護1〜5」に分かれます。
認定区分によって、利用できるサービスの種類や介護保険が適用される支給限度額が異なります。
非該当の場合
介護保険によるサービスは原則として利用できません。
ただし、自治体が実施する介護予防・日常生活支援総合事業などを利用できる場合があります。地域包括支援センターへ相談してみましょう。
要支援1・2の場合
介護が必要な状態になることを防ぎ、生活機能を維持・改善するための介護予防サービスなどを利用できます。
要介護1〜5の場合
本人の状態や必要な介助に合わせて、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与などの介護サービスを利用できます。
要介護度が高ければ、すべての人が同じサービスを利用するわけではありません。本人の希望や生活環境を確認しながら、必要なサービスを組み合わせます。
<関連記事>
👉要支援1・要支援2とは?要介護との違いと使える介護サービス
認定結果が届いた後にすること
認定結果が届いたら、利用するサービスについて相談し、ケアプランを作成します。
相談先は認定区分によって異なります。
- 要支援1・2:地域包括支援センターなど
- 要介護1〜5:居宅介護支援事業所のケアマネジャー
- 施設への入所を希望する場合:希望する介護保険施設
ケアプランでは、本人や家族の希望、心身の状態、生活環境などを確認し、利用するサービスの種類や回数を決めます。
認定結果に納得できない場合や、認定後に本人の状態が大きく変わった場合も、市区町村や地域包括支援センターへ相談できます。
関連記事👉介護認定が出たら次にすること
要介護認定には有効期間がある
要介護認定は、一度受ければずっと有効というわけではありません。認定結果通知書や介護保険被保険者証には、認定の有効期間が記載されています。
有効期間は、初めての申請か更新申請か、本人の状態が安定しているかなどによって異なります。必ず届いた書類で自分の有効期間を確認してください。
引き続きサービスを利用する場合は更新申請が必要
有効期間が終わった後も介護保険サービスを利用したい場合は、更新申請が必要です。
更新申請は、有効期間満了日の60日前から行えます。市区町村から更新に関する案内が届くのが一般的で、担当のケアマネジャーなどに申請を支援してもらえる場合もあります。
手続きが遅れると介護保険サービスの利用に影響する可能性があるため、家族も認定の有効期限を確認しておくと安心です。
状態が変わったときは区分変更を申請できる
認定の有効期間中でも、入院や転倒、認知症の進行などによって必要な介護が大きく増えた場合は、「区分変更申請」ができます。
現在の要介護度では必要なサービスを十分に利用できないと感じたら、次の更新時期まで待たず、担当のケアマネジャーや市区町村へ相談しましょう。
区分変更を申請しても、必ず要介護度が上がるとは限りません。調査や審査の結果によっては、現在と同じ区分になる場合や、区分が下がる場合もあります。
よくある質問
Q.要介護認定は誰が申請できますか?
本人または家族が申請できます。
本人や家族による申請が難しい場合は、地域包括支援センター、指定居宅介護支援事業者、介護保険施設などに代行を依頼できる場合があります。まずは市区町村か地域包括支援センターへ相談してください。
Q.本人が入院中でも申請できますか?
入院中でも申請できます。認定調査を病院で受けることもあります。
退院後に介護サービスが必要になる可能性がある場合は、病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援担当者へ早めに相談しましょう。
Q.かかりつけ医がいなくても申請できますか?
申請はできますが、主治医意見書の作成に必要な診察を受けることになります。
かかりつけ医がいないことを申請時に伝え、市区町村の案内に従ってください。
Q.認定調査には家族が同席したほうがよいですか?
必須ではありませんが、本人が普段の状態を十分に説明できない場合は、家族が同席すると状況を伝えやすくなります。
家族が同席できない場合は、困っていることをメモにまとめて渡せないか、事前に担当者へ相談してみましょう。
Q.認定結果に納得できない場合はどうすればよいですか?
まずは市区町村の介護保険担当窓口へ連絡し、認定結果について説明を受けましょう。
結果に不服がある場合は、都道府県の介護保険審査会へ審査請求を行う方法があります。また、認定後に本人の状態が変化した場合は、区分変更申請を検討できます。
Q.要介護認定の申請に費用はかかりますか?
要介護認定の申請、認定調査、主治医意見書の作成に、申請者の費用負担はありません。
ただし、主治医意見書のために改めて診察を受ける場合は、通常の診察料がかかることがあります。詳しくは医療機関や市区町村へ確認してください。
Q.要介護認定に有効期限はありますか?
はい。要介護認定には有効期間があり、期間は認定結果通知書や介護保険被保険者証に記載されています。
有効期間後も引き続き介護保険サービスを利用する場合は、満了前に更新申請を行います。
Q.本人が要介護認定を嫌がる場合はどうすればよいですか?
本人が「まだ介護は必要ない」と申請を拒むことは珍しくありません。無理に説得しようとすると、かえって反発が強くなることもあります。
まずは家族だけで地域包括支援センターへ相談して構いません。本人への伝え方や、訪問してもらえるかなど、状況に合った方法を一緒に考えてもらえます。
まとめ|要介護認定を考えたら早めに相談しよう
要介護認定の申請は、本人が住んでいる市区町村の介護保険担当窓口で行います。
初めてで手続きがわからない場合は、地域包括支援センターへ相談すると、申請先や必要な準備について案内してもらえます。
要介護認定のポイントは、次のとおりです。
- 申請前に必要なものを自治体へ確認する
- 主治医の氏名や医療機関名を確認しておく
- 認定調査では普段の状態を具体的に伝える
- 急いで支援が必要な場合は暫定ケアプランについて相談する
- 結果が出たら認定区分に応じた相談先へ連絡する
「今の状態で申請できるのかわからない」という段階でも、相談して構いません。
本人や家族だけで判断せず、市区町村や地域包括支援センターへ早めに相談しましょう。


