
突然、親が救急車で運ばれることになると、気が動転して「何を持って行けばいいの?」「病院では何を聞かれるの?」と頭が真っ白になってしまう方も少なくありません。
特に高齢者は、転倒や持病の悪化、熱中症などにより、急に救急搬送が必要になることがあります。
このようなときは、すべてを完璧に準備しようとせず、本人の安全と救命を最優先にすることが大切です。そのうえで、搬送先や服用中の薬、持病などを確認しておくと、その後の診療や手続きが進みやすくなります。
この記事では、親が救急搬送されたときに家族がすることを、「救急車が到着するまで」「病院へ持って行くもの」「医師に確認したいこと」「入院や退院が決まったとき」に分けて、わかりやすく解説します。
救急車が到着するまでに家族がすること
119番通報をした後は、救急車が到着するまで、できる範囲で準備を進めましょう。
ただし、本人の意識や呼吸の状態が悪い場合は、持ち物を探すよりも、119番の通信指令員から伝えられた応急手当を優先してください。
家族に余裕がある場合は、次のことを確認しておくと救急隊を案内しやすくなります。
- 玄関の鍵を開ける
- 救急隊が通れるように玄関や廊下の荷物を移動する
- 可能であれば家族の一人が建物の入口や道路まで迎えに出る
- マイナ保険証や資格確認書、お薬手帳を準備する
- 服用中の薬や持病、アレルギーを確認する
- 体調を崩した時刻や当時の様子を整理する
本人を一人にする必要がある場合や、状態が変化した場合は、準備を中断して本人のそばに戻りましょう。
搬送先の病院名を確認する
救急車への収容後は、可能であれば搬送先の病院名を確認し、メモしておきましょう。
ただし、搬送先はすぐに決まるとは限りません。本人の症状や緊急度、医療機関の受け入れ状況などによっては、救急車内で搬送先を探すこともあります。
搬送先が決まったら、次の内容を確認しておくと安心です。
- 搬送先の病院名
- 病院の所在地や連絡先
- 家族が向かう場所や受付窓口
- 救急隊から伝えられた連絡事項
治療を優先するため、病院へ到着してもすぐに詳しい説明を受けられない場合があります。病院から連絡が入ることもあるため、携帯電話は着信に気づける状態にしておきましょう。
病院へ持って行くと役立つもの
病院では、本人確認や診療、入院手続きのために必要なものがあります。
すべてそろわなくても救急診療は受けられます。すぐに準備できるものだけを持参し、見つからないものは病院の指示に従って後から届けましょう。
| 持ち物 | あると役立つ理由 |
|---|---|
| マイナ保険証または資格確認書 | 本人確認や健康保険の資格確認に使う。マイナ救急で医療情報を確認する際は、マイナ保険証が活用される |
| お薬手帳 | 服用中の薬や過去の処方内容を確認できる |
| 服用中の薬 | 薬の名前や量、飲み方を正確に伝えられる |
| 診察券 | 搬送先がかかりつけ病院の場合に役立つ |
| 本人確認書類 | 入院などの手続きで必要になることがある |
| 医療証や受給者証 | 自治体などの医療費助成を受けている場合に使用する |
| 携帯電話・充電器 | 病院やほかの家族との連絡に使用する |
| 財布や支払い手段 | 交通費や診療費、入院時の日用品の購入などに備える |
マイナ救急では、救急隊員がマイナ保険証を使って過去の受診歴や薬剤情報などを確認し、処置や搬送先の選定に役立てることがあります。救急隊員は原則として本人に同意を求めますが、意識不明などで同意を得ることが難しく、生命や身体を守る必要がある場合は、同意なしに医療情報を閲覧することがあります。
利用には、健康保険証の利用登録をしたマイナンバーカードが使われます。2026年4月からは、マイナ保険証を搭載したスマートフォンも利用できるようになりました。ただし、意識不明時などに備えるため、カードも携帯しておくと役立ちます。
カードや資格確認書が見つからなくても、救急車の要請や治療を遅らせてはいけません。まずは本人の安全と治療を優先してください。
病院で家族が聞かれること
病院に到着すると、医師や看護師から、本人の症状や普段の生活について質問されることがあります。
すべてを正確に覚えていなくても問題ありません。分かる範囲で伝え、分からないことは無理に推測せず「分かりません」と伝えましょう。
主に確認される内容は次のとおりです。
- 現在飲んでいる薬
- 高血圧・糖尿病・心臓病などの持病
- 薬や食べ物のアレルギー
- かかりつけ医や通院中の病院
- いつから、どのような症状が現れたのか
- 倒れたときの状況や救急車を呼ぶまでの経過
- 最後に食事や水分を取った時間
- 普段の歩行・会話・食事・排泄などの状態
- 本人の意思表示が難しい場合の緊急連絡先
特に高齢者の場合は、「普段と比べて何が違うのか」が診療の参考になることがあります。普段は一人で歩けるのか、会話はできるのか、認知症の症状があるのかなど、いつもの状態も伝えましょう。
お薬手帳や持病の情報、緊急連絡先を家族で共有しておくと、突然の救急搬送にも対応しやすくなります。
医師から説明を受けるときのポイント
診察や検査が終わると、医師から現在の状態や今後の治療について説明があります。
突然の出来事で緊張していると、説明を一度聞いただけでは理解できなかったり、後から内容を思い出せなくなったりすることもあります。
分からない言葉や判断に迷うことがあれば、遠慮せずに確認しましょう。
主に確認しておきたい内容は次のとおりです。
- 現在どのような状態なのか
- 考えられる病気やケガの内容
- 緊急性や重症度はどの程度か
- 入院が必要なのか、帰宅できるのか
- これから行う検査や治療
- 治療によって期待できることや主な注意点
- 家族が準備すること
- 今後、病院から連絡が入る可能性があるか
説明を受けるときは、聞いた内容をメモしておくと、ほかの家族にも正確に伝えやすくなります。
録音を希望する場合は、医師や病院スタッフに目的を伝え、事前に許可を得ておくと安心です。
その場ですぐに判断することが難しい場合は、「家族に確認する時間はありますか」「いつまでに返事をすればよいですか」と尋ねましょう。ただし、緊急性が高く、治療を急ぐ必要がある場合もあります。
入院が決まったら確認しておきたいこと
入院が決まった場合は、病院から手続きや必要な持ち物について案内があります。すべてをその日のうちにそろえようとせず、優先順位を確認しながら準備しましょう。
主に確認しておきたい項目は次のとおりです。
- 入院する病棟や病室
- 家族から病院へ連絡するときの窓口
- 病院から連絡を受ける家族の代表者
- 面会時間や面会方法
- 現時点で分かる入院期間や治療の見通し
- 入院手続きに必要な書類
- 着替えや日用品などの持ち物
- 現金や貴重品の取り扱い
- 衣類の洗濯を家族が行う必要があるか
- 付き添いが必要か
- 入院費の支払い方法
- 退院や転院について相談できる窓口
病院によって、持ち込める物や面会方法、洗濯、付き添いなどのルールは異なります。必要なものを自己判断で買いそろえる前に、入院案内や看護師からの説明を確認しましょう。
病院との連絡役を決めておく
家族が複数いる場合は、病院から連絡を受ける代表者を一人決めておくと、情報の行き違いを防ぎやすくなります。
代表者が医師や看護師から説明を受け、その内容をほかの家族へ共有する流れを決めておきましょう。
本人が一人暮らしの場合は、自宅の戸締まり、火の元、ペット、郵便物、新聞、利用中の介護サービスなども確認が必要です。ただし、病院での手続きや本人の状態確認を優先し、難しい場合はほかの家族や周囲の人にも協力を求めましょう。
入院費が心配な場合は相談窓口を確認する
突然の入院では、治療費や入院費がどのくらいかかるのか不安になることもあります。
医療費が高額になりそうな場合は、高額療養費制度を利用できることがあります。マイナ保険証を利用している場合、対応する医療機関では、限度額情報を確認してもらうことで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられることがあります。マイナ保険証を利用できない場合の手続きも含め、病院や加入している健康保険の窓口に確認しましょう。
差額ベッド代や入院時の食費、日用品代などは、高額療養費制度の対象外です。費用や手続きについて分からない場合は、病院の医療相談窓口や医療ソーシャルワーカー、加入している健康保険の窓口へ相談しましょう。
退院後は介護や見守りが必要になることもあります
病気やケガの内容によっては、治療が終わっても、すぐに以前と同じ生活へ戻れるとは限りません。
退院後に次のような状態が見られる場合は、介護サービスや見守り、福祉用具の利用などを検討する必要があります。
- 一人で歩くことが難しくなった
- 食事や着替え、入浴、排泄に介助が必要になった
- 物忘れや混乱など、普段と異なる様子が見られる
- 薬を一人で管理することが難しい
- 転倒や体調悪化を防ぐための見守りが必要になった
- 通院や買い物など、一人での外出が難しくなった
退院後の生活に不安がある場合は、退院が決まってからではなく、入院中の早い段階で病院へ相談することが大切です。
病院によっては、医療ソーシャルワーカー(MSW)や退院支援看護師などが、退院後の生活や介護サービス、転院先について相談に応じています。
すでに介護保険サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーにも入院したことを伝えましょう。入院前とは身体の状態が変わり、ケアプランや利用するサービスの見直しが必要になることがあります。
まだ要介護認定を受けていない場合は、病院の相談窓口や、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターへ相談できます。本人の状態によっては、入院中に要介護認定の申請を検討することもあります。
退院後に家族だけで支えようとすると、介護する側の負担が急に大きくなることがあります。一人で抱え込まず、退院前から支援につながっておきましょう。
熱中症で救急搬送された場合に気を付けたいこと
高齢者は、暑さや喉の渇きを感じにくく、体内の水分量も少ないため、室内にいても熱中症になることがあります。
熱中症で救急搬送された後は、一時的に症状が落ち着いたように見えても、脱水や食欲不振、体力の低下などが続くことがあります。
入院せず帰宅した場合や退院後は、医師から受けた説明に従いながら、次の点を確認しましょう。
- 水分を無理なく取れているか
- 食事が取れているか
- 尿の回数や量が極端に減っていないか
- めまい、頭痛、吐き気、強いだるさがないか
- 受け答えや行動に普段と違うところがないか
- エアコンなどを使用し、涼しい環境で過ごせているか
- 室温が高くなりすぎていないか
水分は一度に大量に飲ませるのではなく、本人の状態や医師の指示に従って補給します。
意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい、自力で水分を飲めない、けいれんがあるなどの場合は、無理に飲ませてはいけません。誤って気管に入る危険があるため、すぐに119番へ連絡してください。
また、帰宅後に症状が再び悪化した場合は、無理に様子を見続けず、説明を受けた医療機関へ連絡するか、緊急性が高い場合は救急車を要請しましょう。
心臓病や腎臓病などの持病があり、水分や塩分を制限されている方は、自己判断で摂取量を増やさず、必ず医師の指示を確認してください。
親が救急搬送されたときの確認チェックリスト
突然の救急搬送で慌てたときは、次の項目を上から順番に確認してみましょう。
救急車が到着するまで
- □ 本人のそばで意識や呼吸、症状の変化を確認した
- □ 119番の通信指令員から受けた指示に従った
- □ 玄関の鍵を開け、救急隊が通れる場所を確保した
- □ 体調を崩した時刻や当時の様子を整理した
- □ 持病・アレルギー・かかりつけ医を確認した
- □ マイナ保険証や資格確認書、お薬手帳、服用中の薬を準備した
救急車の出発前後
- □ 搬送先の病院名を確認した
- □ 病院の所在地や家族が向かう場所を確認した
- □ 家族が救急車へ同乗できるか確認した
- □ 同乗しない場合の移動手段を確認した
- □ ほかの家族へ搬送されたことを連絡した
病院へ到着した後
- □ 医師へ持病や服用中の薬、普段の状態を伝えた
- □ 医師の説明や今後の予定をメモした
- □ 入院するのか、帰宅できるのか確認した
- □ 入院する場合の手続きや持ち物を確認した
- □ 帰宅する場合の薬や過ごし方、再受診の目安を確認した
- □ 病院から連絡を受ける家族の代表者を決めた
退院後の生活に不安がある場合
- □ 一人で歩行・食事・着替え・排泄ができるか確認した
- □ 自宅で見守りや介助が必要か確認した
- □ 医療ソーシャルワーカーや退院支援担当者へ相談した
- □ 担当のケアマネジャーへ入院したことを伝えた
- □ 必要に応じて地域包括支援センターへ相談した
すべてを完璧にそろえる必要はありません。本人の安全と治療を最優先にし、分かることから救急隊や病院へ伝えましょう。
よくある質問
救急車に家族も一緒に乗れますか?
本人の状態や救急車内のスペース、救急隊の判断によっては、家族が救急車に同乗できることがあります。
ただし、必ず同乗できるとは限りません。救急隊から同乗できないと伝えられた場合は、搬送先の病院名と家族が向かう場所を確認し、自家用車やタクシーなどで向かいます。
自家用車で向かう場合も、救急車の直後を無理に追いかけたり、信号を無視したりしてはいけません。事故を起こさないよう、落ち着いて安全運転を心がけましょう。
搬送先の病院は家族が選べますか?
救急搬送では、家族が希望した病院へ必ず搬送されるとは限りません。
本人の症状や緊急度、必要な治療、医療機関の受け入れ状況、搬送にかかる時間などを踏まえ、救急隊が搬送先を調整します。
かかりつけの病院や通院歴のある病院がある場合は、救急隊へ伝えましょう。ただし、その病院が治療に対応できない場合や、受け入れが難しい場合は、別の病院へ搬送されることがあります。
マイナ保険証やお薬手帳が見つからない場合はどうすればよいですか?
マイナ保険証や資格確認書、お薬手帳が見つからなくても、救急車の要請や治療を遅らせてはいけません。
まずは本人の安全と治療を優先し、見つからないものがある場合は、その旨を救急隊や病院へ伝えましょう。必要な書類は、病院の案内に従って後から持参できる場合があります。
お薬手帳が見つからない場合は、服用中の薬や、薬の名前と飲み方が書かれた薬袋を持参すると役立ちます。
薬そのものを持参するときは、別の容器へ移し替えず、できるだけ処方された袋や包装のまま持って行きましょう。
救急車で運ばれたら、すぐに診てもらえますか?
救急外来では、単純な到着順ではなく、症状の緊急度や重症度によって診察や治療の順番が決まることがあります。
そのため、救急車で搬送されても、検査の開始や医師からの説明まで時間がかかる場合があります。
また、本人はすでに診察や検査を受けていても、治療を優先しているため、家族への説明まで時間が空くこともあります。
待っている間に本人の症状が変化した場合や、家族が新たに気づいたことがある場合は、すぐに病院スタッフへ伝えましょう。
入院せずに帰宅する場合は、何を確認すればよいですか?
入院せずに帰宅することになった場合は、帰宅後に再び体調が悪化する可能性も考え、次の内容を確認しておきましょう。
- 帰宅後の過ごし方
- 食事や水分についての注意
- 処方された薬の飲み方
- 入浴や運動などの制限
- 次に受診する日時や診療科
- 再受診が必要になる症状
- 夜間や休日に体調が悪化した場合の連絡先
- 帰宅後、本人を一人にしてもよいか
- 自家用車やタクシーなど、どのような方法で帰宅すればよいか
説明書や処方箋を受け取った場合は、帰宅後に本人だけでなく、家族も内容を確認しましょう。
本人の体調が再び悪化した場合は、無理に様子を見続けず、案内された医療機関へ連絡してください。意識や呼吸の異常など緊急性が高い症状がある場合は、再び119番へ連絡しましょう。
離れて暮らす親が救急搬送された場合はどうすればよいですか?
すぐに病院へ行けない場合は、まず搬送先の病院名と連絡先を確認しましょう。
病院へ電話をするときは、本人の氏名、生年月日、本人との続柄、救急搬送されたおおよその時刻を伝えます。ただし、個人情報保護や本人の状態などにより、電話では詳しい病状を教えてもらえない場合があります。
近くに住む家族や親族がいる場合は、病院へ向かってもらえるか相談しましょう。また、本人が介護サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーにも入院したことを伝えてください。
病院へ向かう前に、面会の可否や来院時に必要なものを確認しておくと安心です。
まとめ
親が突然救急車で運ばれると、誰でも不安になり、何から手を付ければよいのか分からなくなるものです。
そのようなときは、すべてを完璧に準備しようとせず、まず本人の安全と治療を最優先にしてください。
余裕があれば、搬送先の病院名、体調を崩した時刻や当時の様子、持病、アレルギー、服用中の薬などを確認しておくと、救急隊や医療機関へ状況を伝えやすくなります。
入院が決まった場合は、家族の代表連絡者や必要な持ち物、病院の相談窓口を確認しましょう。入院せずに帰宅する場合も、薬の飲み方、再受診が必要な症状、本人を一人にしてよいかなどを確認しておくことが大切です。
高齢の親は、病気やケガをきっかけに、退院後の介護や見守りが必要になることもあります。
家族だけで抱え込まず、病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援担当者、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどにも相談しながら、退院後の生活を整えていきましょう。
※この記事は、救急搬送された高齢者の家族が確認しておきたい一般的な情報をまとめたものです。実際の応急手当や治療、入院・退院後の過ごし方については、救急隊や医師、医療機関から受けた指示を優先してください。


