
「最近、親があまり食べていない気がする」
「デイサービスの日を変えたいけれど、ケアマネさんに言うこと?」
「電球が切れて困っている、なんて相談したら迷惑かな……」
ケアマネジャーに相談したいことがあっても、「こんな細かい話までしていいのだろうか」と迷うことがあります。
とくに、いつも忙しそうにしているケアマネさんを見ると、家族側が遠慮してしまうこともあるでしょう。
先に結論をいうと、本人の生活や安全、介護の続けやすさに関係することであれば、小さな変化でも相談してかまいません。
ただし、ケアマネジャーは何でも代わりに行ってくれる人ではありません。相談を受け、必要なサービスや専門機関につなぐことと、実際の作業を引き受けることは別です。
この記事では、ケアマネジャーに相談してよいこと、別の窓口へ直接連絡したほうがよいこと、頼むのが難しいことを、具体例とともに分かりやすく紹介します。
なお、この記事では、主に自宅で生活する要介護者を担当する「居宅介護支援事業所のケアマネジャー」を想定しています。施設入所中の場合などは、相談先や対応範囲が異なることがあります。
ケアマネジャーは「介護生活の調整役」
ケアマネジャーの主な役割は、本人や家族の相談を受け、心身の状態や生活環境に合ったケアプランを作成することです。
さらに、介護サービス事業所や医療機関、市区町村などと連絡を取り、必要な支援につなげます。
厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」でも、居宅介護支援について、ケアマネジャーが本人の状態や環境に応じたケアプランを作成し、サービス事業者などとの連絡・調整を行うものと説明されています。
つまり、ケアマネジャーは「何でも直接やってくれる人」ではなく、介護生活全体を見ながら、必要な人やサービスにつなぐ調整役です。
迷ったときは、次のように考えると分かりやすいでしょう。
本人の安全や生活、介護サービス、家族の介護負担に影響することなら、まず相談してよい
相談内容がケアマネジャーの担当外だったとしても、状況に応じて地域包括支援センターや医療機関、行政、民間サービスなど、適した相談先を教えてもらえることがあります。
ただし、相談先の案内や連携ができることと、ケアマネジャー自身が手続きや作業を代行することは同じではありません。
ケアマネジャーに相談してよい「小さな変化」
本人の変化は、一つひとつを見ると些細に感じるかもしれません。
しかし、小さな変化が重なることで、体調悪化や認知機能の低下、転倒、服薬ミスなどが見つかることもあります。
次のようなことは、遠慮せず伝えてよい内容です。
食事の量が減ってきた
「以前より食べなくなった」「同じ物ばかり食べている」「冷蔵庫に古い食品がたまっている」といった変化は、本人の健康や生活に関わります。
原因として、体調不良のほか、飲み込みにくさ、口腔内の問題、買い物や調理の負担、認知機能の変化なども考えられます。
ケアマネジャーが診断することはできませんが、必要に応じて主治医や歯科医師、訪問看護、管理栄養士、配食サービスなどへの相談を検討できます。
薬の飲み忘れが増えた
薬が残っている、同じ薬を重ねて飲みそうになる、服薬時間が分からなくなっている場合も伝えておきましょう。
薬の変更や飲み方について判断するのは医師や薬剤師ですが、ケアマネジャーが状況を把握することで、主治医や薬剤師、訪問看護師などとの連携につながる場合があります。
緊急性のある体調変化や、薬を多く飲んでしまった可能性があるときは、ケアマネジャーからの返事を待たず、医療機関や救急相談窓口へ連絡してください。
転びそうになった・小さな転倒があった
けががなかったとしても、「最近よくつまずく」「立ち上がるときにふらつく」といった変化は相談してよい内容です。
手すりや歩行器などの福祉用具、住宅改修、リハビリ、サービス内容の見直しが必要になることがあります。
ただし、頭を打った、強い痛みがある、歩けない、意識や様子がおかしい場合は、ケアマネジャーではなく、まず医療機関や119番へ連絡します。
入浴や着替えを嫌がるようになった
「お風呂に入りたがらない」「何日も同じ服を着ている」といったことも、単なるわがままとは限りません。
痛みや疲れ、寒さ、浴室への不安、認知症による混乱、介助されることへの抵抗など、さまざまな理由が考えられます。
本人を無理に説得する前に、ケアマネジャーへ様子を伝えることで、デイサービスでの入浴や訪問介護、福祉用具などを含めた方法を検討できます。
デイサービスへ行きたがらなくなった
一度休みたいだけなら、まずデイサービスへ欠席の連絡をします。
一方で、拒否が続いている、帰宅後にひどく疲れている、職員やほかの利用者との関係を気にしているような場合は、ケアマネジャーにも相談したほうがよいでしょう。
利用回数や曜日、事業所、過ごし方などを見直したほうがよい可能性があります。
家族の困りごとも相談していい?
ケアマネジャーは、本人だけでなく、家族の介護負担も含めて在宅生活を考えます。
そのため、次のような家族側の変化も相談してかまいません。
- 仕事と介護の両立が難しくなってきた
- 夜間の対応が増え、家族が眠れない
- 介護する家族の体調が悪い
- しばらく家を空けなければならない
- 家族だけでは入浴や移動の介助が難しくなった
- 介護費用の負担が重くなってきた
- 家族同士で介護方針がまとまらない
「もう少し頑張ってから」と我慢していると、本人の生活だけでなく、介護する家族の健康まで崩れてしまうことがあります。
ショートステイや訪問介護などの利用、サービス回数の見直し、公的な負担軽減制度などにつながる可能性もあるため、限界になる前に伝えることが大切です。
ただし、家族間のトラブルの仲裁、借金問題の解決、相続手続きなどを、ケアマネジャー自身に任せることはできません。必要に応じて行政や地域包括支援センター、社会福祉協議会、法律の専門家などへ相談することになります。
迷いやすい相談例|ケアマネに言ってもいい?
電球が切れて交換できない
相談すること自体は問題ありません。
本人が高い場所に上がろうとして危険、暗くて転倒しそうなど、安全に関係する場合は特に伝えておきましょう。
ただし、ケアマネジャー本人に電球交換を頼めるわけではありません。家族、地域の生活支援、民間サービスなど、対応できる方法を一緒に検討する形になります。
また、訪問介護で対応できるかどうかは、本人の状況やケアプラン、作業内容などによって異なります。「ヘルパーなら何でもしてくれる」とは限らない点にも注意が必要です。
病院の予約を取ってほしい
受診の必要性や通院方法について相談することはできますが、病院の予約代行はケアマネジャーの基本的な業務ではありません。
本人や家族による予約が難しい事情がある場合は、その事情を伝えたうえで、医療機関の相談員や訪問診療、通院介助など、利用できる方法を相談してみましょう。
買い物に行ってほしい
ケアマネジャー自身に買い物を頼むことはできません。
ただし、本人が買い物に行けず生活に支障が出ている場合は、訪問介護や配食、移動販売、地域の生活支援サービスなどを検討するための相談ができます。
「買い物をしてください」ではなく、「買い物ができず食べる物がなくなることがあります」と困っている状況を伝えるのがポイントです。
介護サービスの職員に不満がある
これはケアマネジャーに相談してよい内容です。
職員との相性、説明不足、サービス内容がケアプランと違う、希望が伝わっていないなどの問題があれば、事業所との調整やサービス内容の確認を依頼できます。
ただし、ケアマネジャーに一方的な謝罪や処分を求めるのではなく、「いつ、どのようなことがあり、何に困ったのか」を具体的に伝えると状況を確認しやすくなります。
暴力、虐待、金銭の持ち出しなどが疑われる場合は、通常の不満とは分けて、できるだけ早くケアマネジャーや事業所の管理者、市区町村、地域包括支援センターなどへ相談してください。
介護保険外のサービスを探してほしい
介護保険だけでは解決できない生活上の困りごとについて、相談することはできます。
ただし、地域にどのようなサービスがあるか、事業所がどこまで情報提供や連絡調整を行えるかには差があります。紹介された民間サービスの契約内容や料金は、本人や家族が確認して決める必要があります。
ケアマネジャーに直接頼むのが難しいこと
次のようなことは、原則としてケアマネジャー本人が行う仕事ではありません。
- 掃除、調理、買い物、電球交換などの家事
- 食事、排泄、入浴、移乗などの直接介助
- 病院への送迎や長時間の付き添い
- 現金や通帳、暗証番号の管理
- 日常的な支払いや振り込みの代行
- 身元保証人や連帯保証人になること
- 相続、借金、離婚などの法律問題の解決
- 家族間の連絡係や仲裁を継続的に引き受けること
- 救急搬送が必要な場面での医療判断
- 24時間いつでも電話に対応すること
ケアマネジャーの業務範囲を超えた生活支援は、いわゆる「シャドーワーク」として負担の大きさが問題になっています。
厚生労働省の検討会でも、ケアマネジャーが本来の役割を超えて多様な生活支援を担っていることや、業務範囲を整理する必要性が議論されています。
困りごとを伝えるのはかまいませんが、「相談すること」と「ケアマネジャーに作業をしてもらうこと」は分けて考えましょう。
ケアマネではなく、先に別の窓口へ連絡する場面
次のような緊急時は、ケアマネジャーからの連絡を待たず、適切な窓口へ連絡します。
- 意識がない、呼吸が苦しそう、急なまひなどがある:119番
- 転倒して頭を打った、強い痛みがある:医療機関または119番
- 薬を大量に飲んだ可能性がある:医療機関や救急相談窓口
- 火事、事故、行方不明、犯罪のおそれがある:119番または110番
- 今すぐ安否確認が必要:近くの家族や協力者、警察、消防など
- サービス当日の欠席や時間変更:まず利用先の事業所
緊急対応が済んだあと、今後の介護サービスに影響することはケアマネジャーにも報告しておきましょう。
相談するときは「起きていること」を具体的に伝える
ケアマネジャーへ相談するときは、「どうしたらいいですか」とだけ伝えるより、次の内容を簡単にまとめると状況を判断しやすくなります。
- いつから始まったか
- どのくらいの頻度で起きているか
- 以前と何が変わったか
- 本人はどう話しているか
- 家族は何に困っているか
- 緊急性があるか
- いつまでに相談したいか
たとえば、次のように伝えます。
ここ1週間ほど、夕食を半分以上残す日が続いています。本人は「食欲がない」と言っています。体重も少し減ったように見えるため、受診やサービスの見直しが必要か相談したいです。
電話をするほど急がない内容なら、次回の訪問時に相談したいことをメモしておくのもよいでしょう。
反対に、転倒や急な体調変化、介護者が限界に近いときは、次の訪問日まで待たずに連絡してください。
「相談したら迷惑かも」と遠慮しすぎなくて大丈夫
本人の生活に関係することであれば、細かく見えることでも相談してかまいません。
ケアマネジャーにとっても、本人や家族からの情報は、ケアプランや支援内容が現在の状態に合っているかを確認するための大切な手がかりになります。
ただし、ケアマネジャーがすべてを直接解決できるわけではありません。
相談するときは、「これをやってください」と頼むよりも、「このようなことで困っています。どこに相談すればよいでしょうか」と伝えると、お互いの役割を保ちながら必要な支援を探しやすくなります。
よくある質問
ケアマネさんへ何度も電話しても大丈夫ですか?
必要な連絡はしてかまいませんが、緊急でない内容を短時間に何度も連絡するのは避けたほうがよいでしょう。
相談したいことをメモにまとめ、電話に出なかった場合は、事業所の連絡方法に従って折り返しを待ちます。緊急時はケアマネジャーではなく、119番や医療機関などへ連絡してください。
家族の悩みだけでも相談できますか?
本人の在宅生活や介護の継続に関係する悩みであれば相談できます。
介護疲れ、仕事との両立、家族が対応できない時間帯などは、サービス調整に必要な情報です。一方、介護と直接関係しない家族自身の悩みについては、別の相談機関を案内されることがあります。
ケアマネさんによって対応範囲が違うのはなぜですか?
ケアマネジャーの法令上の役割には共通部分がありますが、事業所の体制、地域の社会資源、本人の状況、契約内容などによって、実際にできる連携や対応は異なります。
以前のケアマネジャーがしてくれたことを、別のケアマネジャーにも当然に頼めるとは限りません。迷った場合は、契約時の重要事項説明書を確認し、担当者や事業所へ尋ねましょう。
まとめ
ケアマネジャーに相談してよいか迷ったときは、「本人の安全や生活、介護サービス、家族の介護負担に関係するか」を一つの目安にしましょう。
食事量の低下、服薬ミス、転倒、サービス拒否などは、小さな変化に見えても支援の見直しにつながることがあります。
一方で、ケアマネジャーは家事代行や直接介助、金銭管理、身元保証、緊急対応を引き受ける人ではありません。
困っている状況を相談し、必要なサービスや専門機関へつないでもらうことと、ケアマネジャー本人に作業を依頼することは別です。
「こんなことを聞いていいのかな」と抱え込まず、まずは事実と困りごとを伝えてみましょう。それが本人と家族に合った支援を考える第一歩になります。
記事作成にあたっては、厚生労働省の介護サービス情報公表システム「居宅介護支援」、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準、ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会・中間整理を確認しています。

