
親の施設入所を考え始めると、介護サービスの費用に加えて、食費や部屋代も気になりますよね。
「補足給付」は、所得や預貯金などが一定の条件に当てはまる方について、介護保険施設やショートステイの食費・居住費(滞在費)の負担を軽くする制度です。
ただし、すべての老人ホームで使えるわけではありません。対象となる施設や申請方法、注意点を分かりやすく説明します。
補足給付とは?お金が振り込まれる制度?
補足給付の正式な名称は「特定入所者介護(介護予防)サービス費」です。
施設の食費・居住費には、所得に応じた「負担限度額」が設けられています。認定を受けた方は、その限度額に応じた費用を施設に支払い、基準となる費用との差額が介護保険から施設へ給付されます。
通常は、本人に現金が振り込まれる形ではなく、認定された負担限度額をもとに施設での支払額が軽減されます。また、軽減されるのは食費・居住費であり、介護サービスの自己負担や日用品代などがすべて無料になるわけでもありません。
どの施設が対象になる?
主な対象は、次の施設やサービスです。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院
- ショートステイ(短期入所)
地域密着型の特別養護老人ホームも対象に含まれます。一方、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホームなどは、原則としてこの補足給付の対象ではありません。
「介護施設に入っているから使える」と判断せず、利用する施設やサービスの種類を確認しましょう。
対象になる人の条件
基本的には、次のような条件を確認します。
- 本人を含む世帯全員が住民税非課税であること
- 配偶者がいる場合は、別世帯でも配偶者が住民税非課税であること
- 本人と配偶者の預貯金などが、区分ごとの基準内であること
つまり、「本人の年金が少ない」という理由だけで決まるわけではありません。世帯の課税状況に加え、本人と配偶者の資産も確認されます。
また、配偶者と住民票上の世帯を分けていても、配偶者が課税されている場合は原則として対象になりません。
預貯金はいくらまで?
2026年8月からの主な資産基準は、次のとおりです。
| 利用者負担段階 | 年金収入などの目安 | 預貯金などの基準 |
|---|---|---|
| 第2段階 | 年間82万6,500円以下 | 単身650万円以下/夫婦1,650万円以下 |
| 第3段階① | 年間82万6,500円超~120万円以下 | 単身550万円以下/夫婦1,550万円以下 |
| 第3段階② | 年間120万円超 | 単身500万円以下/夫婦1,500万円以下 |
第1段階には、生活保護を受けている方や、一定の条件を満たす老齢福祉年金の受給者などが含まれます。また、40~64歳の介護保険利用者には資産基準の扱いが異なる場合があります。
表の「年金収入など」には、遺族年金・障害年金などの非課税年金や、その他の所得も判定上含まれます。正確な区分は申請先の市区町村で確認してください。
食費や居住費はどのくらい軽くなる?
負担限度額は、本人の段階に加え、施設の種類、部屋のタイプ、ショートステイかどうかで変わります。
例えば、2026年8月以降、施設入所時の食費の負担限度額は1日あたり次の金額です。
| 利用者負担段階 | 食費の負担限度額 |
|---|---|
| 第1段階 | 300円 |
| 第2段階 | 390円 |
| 第3段階① | 680円 |
| 第3段階② | 1,420円 |
ショートステイの食費は別の限度額です。居住費も部屋の種類によって金額が異なります。
なお、表の金額は食費についての1日あたりの限度額です。「施設に支払う総額がこの金額になる」という意味ではありません。施設を選ぶ際は、介護サービスの自己負担、食費、居住費、日用品代などを合わせた月額の見込みを確認しましょう。
申請方法と必要なもの
補足給付を受けるには、本人の介護保険を担当する市区町村へ「介護保険負担限度額認定」を申請します。施設へ申し出るだけでは認定されません。
一般的には、申請書とともに、本人と配偶者の預金通帳の写しなど、資産を確認できる書類を提出します。必要な書類や提出方法は自治体によって案内が異なるため、申請先のホームページや介護保険の窓口で確認してください。
認定されたら「介護保険負担限度額認定証」が交付されます。施設やショートステイの事業所に提示しましょう。
申請はいつすればいい?毎年更新が必要?
施設への入所やショートステイの利用が決まったら、早めに申請の準備を始めましょう。
認定の適用は原則として申請した月の初日からで、それより前の月までさかのぼれるわけではありません。書類の準備や審査にも時間がかかるため、利用開始が近い場合は自治体に相談すると安心です。
認定証の有効期限は通常、毎年7月31日までです。引き続き軽減を受けたい場合は、更新の案内も確認しましょう。
よくある疑問
世帯分離をすれば対象になりますか?
世帯分離だけで対象になるとは限りません。別世帯の配偶者についても課税状況や預貯金などを確認します。「世帯を分ければ必ず使える」と考えず、申請先へ相談してください。
有料老人ホームやグループホームでも使えますか?
原則として、この補足給付の対象ではありません。食費や家賃の負担が重い場合は、施設の相談員やケアマネジャー、自治体に、利用できる別の支援がないか相談しましょう。
高額介護サービス費とは違いますか?
別の制度です。高額介護サービス費は、主に介護保険サービスの自己負担額が月ごとの上限を超えた場合の制度です。補足給付は、対象となる施設やショートステイの食費・居住費の負担を軽くします。
まとめ
補足給付は、条件に当てはまる方が介護保険施設やショートステイを利用するとき、食費・居住費の負担を軽くできる制度です。
対象となる施設は限られ、世帯の課税状況や預貯金などの審査があります。また、利用には申請が必要です。親の施設入所やショートステイを考えているなら、費用の見積もりとあわせて「負担限度額認定の対象になるか」を自治体に確認しておきましょう。
※この記事は2026年9月時点の制度に基づいています。判定や必要書類は、本人の介護保険を担当する市区町村でご確認ください。
参考資料

