介護が始まると、思っていた以上に負担となるのが紙おむつや尿取りパッドの費用です。
一度の購入額はそれほど高く見えなくても、毎日使い続ければ月々の出費は積み重なります。交換回数が多い方や、紙おむつと尿取りパッドを併用している家庭では、家計への負担を感じることもあるでしょう。
「介護のおむつ代に助成はないの?」
「医療費控除の対象になると聞いたけれど、誰でも申告できる?」
「家族が購入したおむつでも大丈夫?」
このような疑問を持つ方も少なくありません。
介護のおむつ代には、主に次の2つの負担軽減策があります。
- 市区町村による紙おむつの支給・購入費助成
- 一定の条件を満たした場合の医療費控除
ただし、自治体の助成制度と医療費控除は、対象となる条件や申請先が異なります。また、普段からおむつを使用しているだけで、すべての方が医療費控除を受けられるわけではありません。
この記事では、介護のおむつ代を少しでも抑えるために確認したい制度や、医療費控除の条件、必要書類、申請時の注意点を分かりやすく解説します。
結論|最初に確認したいのは2つの制度
介護のおむつ代が負担になっているときは、まず次の2つを確認します。

1.市区町村の紙おむつ助成・支給制度
市区町村によっては、在宅で介護を受けている方を対象に、紙おむつや尿取りパッドを支給する制度を設けています。
支援方法は自治体によって異なり、主に次のような形があります。
- 紙おむつなどの現物を自宅へ届ける
- 利用できる助成券を交付する
- 購入費の一部を助成する
- 一定額を給付する
ただし、全国一律の制度ではありません。要介護度、所得、年齢、在宅か入院中かなど、対象条件も市区町村によって異なります。
2.おむつ代の医療費控除
傷病によっておおむね6か月以上寝たきりで、医師の治療を受けており、おむつの使用が必要と認められた場合は、おむつ代が医療費控除の対象になることがあります。
医療費控除は、おむつ代そのものが支給される制度ではありません。
1年間に支払った対象医療費をもとに所得控除を受ける制度で、申告する方の所得や納税状況などによって、所得税の還付や翌年度の住民税の負担軽減につながる可能性があります。
なお、所得税を納めていない場合などは、申告しても所得税の還付が発生しないことがあります。
自治体の紙おむつ助成・支給制度とは?
高齢者の紙おむつに対する支援は、介護保険の全国共通サービスではなく、市区町村が独自に実施している事業が中心です。
そのため、同じ要介護度でも、住んでいる地域によって利用できる制度や支援額が異なります。
自治体でよく見られる対象条件
自治体によって違いがありますが、次のような条件が設けられていることがあります。
- 市区町村内に住所がある
- 要介護認定を受けている
- 常時、紙おむつを必要としている
- 自宅で介護を受けている
- 市町村民税非課税世帯である
- 本人または世帯の所得が基準以下である
- 入院中や施設入所中ではない
例えば、要介護4・5の方を対象とする自治体もあれば、要介護1以上や要介護3以上など、異なる基準を設けている自治体もあります。
「要介護認定を受けているから利用できる」とは限らないため、個別の確認が必要です。
支給される用品も自治体によって異なる
対象となる介護用品には、次のようなものがあります。
- テープ式紙おむつ
- パンツ型紙おむつ
- 尿取りパッド
- おむつカバー
- 使い捨て手袋
- 清拭用品
- 防水シーツ
紙おむつと尿取りパッドだけに限定されている地域もあれば、カタログの中から毎月の限度額まで選べる地域もあります。
利用者の体に合わない製品が届くと使い切れないこともあるため、サイズや吸収量、パンツ型・テープ型の違いを確認してから申し込みましょう。
入院中や施設入所中は対象外になることがある
自治体のおむつ助成は、在宅介護を支援する目的で実施されていることが多いため、病院への入院中や介護施設への入所中は対象外となる場合があります。
一方で、入院中の方へおむつ代の助成金を支給するなど、別の制度を用意している自治体もあります。
施設の場合は、おむつ代が施設サービス費に含まれていることもあるため、施設へ個別に確認しましょう。
制度の探し方
自治体の公式サイトで、次の言葉を組み合わせて検索すると見つけやすくなります。
〇〇市 高齢者 紙おむつ 助成
〇〇区 介護用品 支給
〇〇市 おむつ代 給付
見つからない場合は、市区町村の高齢福祉担当窓口や地域包括支援センター、担当のケアマネジャーへ尋ねてみましょう。
制度があっても自動的に案内・適用されるとは限りません。原則として申請が必要で、申請前に購入した分は対象にならない場合もあるため、早めの確認がおすすめです。
おむつ代が医療費控除の対象になる条件
介護で紙おむつを使用していても、購入したおむつがすべて医療費控除の対象になるわけではありません。
国税庁では、傷病によりおおむね6か月以上寝たきりであり、医師の治療を受けている方のおむつ代について、治療を受けるために直接必要な費用として認められる場合に医療費控除の対象としています。
主なポイントは次のとおりです。
- 傷病により、おおむね6か月以上寝たきりである
- 医師による治療を受けている
- 治療上、おむつの使用が必要と認められている
- 「おむつ使用証明書」などの必要書類を用意できる
- 購入したおむつ代を確認できる領収書等がある
単に失禁がある、日常的に紙おむつを使っているというだけでは、対象になるとは限りません。
対象になるか分からない場合は、まず治療を受けている医療機関へ「おむつ使用証明書を発行してもらえる状態か」を相談します。
要介護認定を受けている方は、市区町村が発行する確認書を利用できる場合もあるため、介護保険担当窓口にも確認してみましょう。
おむつと一緒に購入した介護用品も対象になる?
紙おむつを購入する際、おしり拭きや防水シーツなども一緒に買うことがあります。しかし、これらがすべて医療費控除の対象になるわけではありません。
一般的な取り扱いの目安は、次のとおりです。
| 介護用品 | 医療費控除の取り扱い |
|---|---|
| 紙おむつ | 本人の状態などの条件を満たせば対象 |
| 尿取りパッド | 本人の状態などの条件を満たせば対象 |
| おしり拭き・清拭用品 | 原則として対象外 |
| 防水シーツ | 原則として対象外 |
| おむつ処理袋・消臭袋 | 原則として対象外 |
| おむつ用ゴミ箱 | 原則として対象外 |
同じ店舗で一緒に購入しても、医療費控除へ含められるものと、含められないものがあります。レシートに複数の商品が記載されている場合は、対象となる紙おむつや尿取りパッドに印を付けておくと、申告時に集計しやすくなります。
個別の商品が対象になるか迷う場合は、申告前に税務署へ確認してください。
初年度でも市区町村の確認書を使える場合がある
以前は、おむつ代の医療費控除を初めて受ける年には、原則として医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要でした。
しかし、2025年1月1日以後に2024年分以後の確定申告を行う場合は、初年度でも一定の条件を満たせば、次の書類を「おむつ使用証明書」の代わりに使用できるようになっています。
- 市区町村が主治医意見書の内容を確認して発行する書類
- 一定の要件を満たす主治医意見書の写し
ただし、要介護認定を受けていれば、誰でも市区町村の確認書を発行してもらえるわけではありません。
初年度に確認書を使うための主な条件
初めておむつ代の医療費控除を受ける方が、市区町村の確認書などを使用する場合は、主治医意見書に一定の記載があり、対象となる要介護認定の有効期間が合計6か月以上になることなどが条件です。
主治医意見書では、主に次の内容が確認されます。
- 障害高齢者の日常生活自立度が一定の基準に該当する
- 失禁への対応としてカテーテルの使用、または尿失禁の発生可能性がある
実際に確認書を発行できるかどうかは、市区町村が保有する主治医意見書の内容によって決まります。
窓口では、次のように尋ねると伝わりやすいでしょう。
おむつ代の医療費控除に使う確認書を発行してもらえますか?
確認書を発行できない場合は、治療を受けている医療機関へ「おむつ使用証明書」の作成を依頼します。
2年目以降も確認が必要
おむつ代の医療費控除が2年目以降の場合も、市区町村の確認書や一定の条件を満たす主治医意見書の写しを利用できる場合があります。
ただし、前年に利用できたからといって、その後も自動的に対象になるわけではありません。
要介護認定の期間や主治医意見書が作成された時期などによって扱いが異なるため、申告する年ごとに市区町村へ確認しておくと安心です。
おむつ代の医療費控除を申告する手順
おむつ代を医療費控除に含める場合は、次の順番で準備します。
1.対象になるか確認する
まず、かかりつけ医または市区町村の介護保険担当窓口へ相談します。
要介護認定を受けている場合は、市区町村の確認書を発行できるか先に尋ねると、医療機関で証明書を作成してもらう必要がない場合があります。
2.必要書類を用意する
本人の状況に応じて、次のいずれかを準備します。
- 医師が発行した「おむつ使用証明書」
- 市区町村が主治医意見書の内容を確認して発行した書類
- 要件を満たす主治医意見書の写し
医療機関へおむつ使用証明書を依頼する場合、文書料がかかることがあります。
3.領収書やレシートを保管する
購入日、商品名、金額、販売店などを確認できる領収書やレシートを保管します。
レシートに日用品などが一緒に記載されている場合は、おむつ代に印を付けておくと、あとで集計しやすくなります。
領収書の宛名について迷う場合や、購入した方とおむつを使用する方が異なる場合は、誰のために購入したものか分かるよう、メモを残しておくと安心です。
4.医療費控除の明細書を作成する
1月1日から12月31日までに実際に支払った対象医療費を集計し、「医療費控除の明細書」へ記載します。
おむつ代だけでなく、同じ年に支払った診察代、薬代、対象となる介護サービス費なども合算できます。
医療費控除額は、原則として次の計算で求めます。
実際に支払った医療費-保険金や助成金などで補てんされた金額-10万円
ただし、総所得金額等が200万円未満の方は、10万円ではなく、総所得金額等の5%を差し引きます。
医療費控除額の上限は200万円です。
5.確定申告を行う
医療費控除は年末調整では受けられないため、会社員や年金受給者でも確定申告が必要です。
確定申告書は、税務署への提出のほか、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」やe-Taxを利用して作成・提出できます。
おむつ代の領収書は、通常、確定申告書へ添付する必要はありません。ただし、税務署から確認を求められる場合があるため、申告期限などから5年間保管します。
おむつ使用証明書についても、所定の事項を医療費控除の明細書の欄外などに記載することで、添付または提示を省略できる場合があります。省略した証明書は、領収書と一緒に5年間保管してください。
家族が購入したおむつ代も対象になる?
医療費控除は、納税者本人だけでなく、納税者と生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費も対象になります。
そのため、離れて暮らす親のおむつを子どもが購入している場合でも、生活費や療養費を継続的に負担するなど「生計を一にしている」と認められれば、子どもの医療費控除に含められる可能性があります。
同居していることだけが条件ではありませんが、親が自分で支払ったおむつ代を、子どもの医療費控除へ自由に入れられるわけではありません。
原則として、実際にその費用を支払った方が申告します。
家族の誰が申告するか迷う場合は、税務署や税理士へ確認すると安心です。
自治体の助成と医療費控除は両方使える?
自治体の紙おむつ助成を受けていても、条件を満たせば医療費控除を利用できる可能性があります。
ただし、自治体から助成された金額や、保険金などで補てんされた金額は、医療費控除の対象となる支払額から差し引きます。
例えば、年間のおむつ代が12万円で、自治体から3万円の助成を受けた場合、医療費控除の計算に含められるおむつ代は、原則として実際に自己負担した9万円です。
現物支給された紙おむつは、自分で購入して支払った費用ではないため、その金額を医療費控除へ含めることはできません。
入院・施設入所中のおむつ代はどうなる?
入院中の場合
入院中に病院から請求されたおむつ代については、その内容や請求方法によって医療費控除の対象になることがあります。
一方、家族が病院へ持ち込むために購入したおむつについては、在宅で購入する場合と同様に「おむつ使用証明書」などが必要になる可能性があります。
病院の請求書で判断できない場合は、病院または税務署へ確認しましょう。
介護施設に入所している場合
特別養護老人ホームなど、一部の介護保険施設では、おむつ代が施設サービス費に含まれており、施設が入所者へ別途請求することはありません。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などでは、紙おむつ代を実費で負担することがあります。
また、施設へ支払った費用のうち、医療費控除の対象になる範囲は施設の種類によって異なります。施設から交付される領収書に「医療費控除対象額」が記載されている場合は、その金額を確認しましょう。
制度以外でおむつ代を抑える方法
自治体の助成や医療費控除の対象にならない場合でも、紙おむつの選び方や使い方を見直すことで、毎月の負担を抑えられることがあります。
尿取りパッドを上手に組み合わせる
排尿のたびに紙パンツやテープ式おむつを交換すると、使用枚数が増えて費用も高くなります。
本人の身体状態に合っていれば、紙おむつの内側に尿取りパッドを使用し、汚れたパッドだけを交換する方法があります。
ただし、吸収量を増やそうとしてパッドを何枚も重ねると、隙間ができて漏れやすくなったり、蒸れや皮膚トラブルにつながったりする場合があります。本人に合った吸収量やサイズを選び、基本的には製品の使用方法に従いましょう。
最初から大量に買わない
同じサイズ表記でも、メーカーによってフィット感や股上、吸収部分の形が異なります。
価格だけを見て大量購入すると、本人の体に合わず、漏れたり余ったりすることがあります。初めて使う商品は、少量パックやお試しサイズから選ぶと無駄を防ぎやすくなります。
昼用と夜用を使い分ける
一日中、吸収量の多い夜用製品を使うよりも、交換しやすい昼間は薄型、長時間交換できない夜間は吸収量の多いタイプに分けたほうが、費用を抑えられる場合があります。
ただし、交換回数や尿量、本人の睡眠状態によって適した製品は異なります。漏れが続く場合は、ケアマネジャーや訪問看護師、福祉用具を扱う事業者などへ相談してみましょう。
よくある質問
おむつ代はいくら使えば医療費控除を受けられますか?
おむつ代だけに決められた最低金額があるわけではありません。
その年に支払った対象医療費を合算し、保険金や助成金などで補てんされた金額を差し引いたうえで判定します。
原則として10万円を超えた部分が医療費控除の対象ですが、総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%を超えた部分が対象になります。
なお、医療費控除は支払った医療費がそのまま戻る制度ではありません。
紙おむつや尿取りパッドなら、何でも医療費控除の対象になりますか?
紙おむつや尿取りパッドを購入しただけでは、医療費控除の対象にはなりません。
傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで、医師がおむつの使用を治療上必要と認めており、「おむつ使用証明書」などの必要書類を用意できる場合に対象となります。
おしり拭き、防水シーツ、おむつ処理袋、おむつ用ゴミ箱などは、通常、おむつ代の医療費控除には含まれません。
要介護認定を受けていなくても対象になりますか?
要介護認定を受けていなくても、医師から「おむつ使用証明書」の交付を受け、ほかの条件も満たせば、おむつ代が医療費控除の対象になる可能性があります。
ただし、市区町村が主治医意見書をもとに発行する確認書を利用するには、要介護認定に関する条件があります。
通販で購入したおむつでも対象になりますか?
Amazonや楽天市場などの通販で購入したものでも、医療費控除の条件を満たしていれば対象になり得ます。
購入履歴だけに頼らず、注文日、支払額、商品名などを確認できる領収書をダウンロードして保管しておきましょう。
ポイントを利用した場合など、実際の支払額が分かりにくいときは、申告前に税務署へ確認すると安心です。
おむつ使用証明書は毎年必要ですか?
おむつ代を医療費控除へ含める年ごとに、必要な証明を用意します。
要件を満たせば、おむつ使用証明書の代わりに、市区町村の確認書や主治医意見書の写しを利用できる場合があります。
前年と同じ書類をそのまま使えるとは限らないため、市区町村や医療機関へ確認してください。
自治体から紙おむつが届く制度は、申請前の分も受け取れますか?
多くの自治体では、申請が認められた後の支給となり、申請前に自分で購入した分までさかのぼって支給されるとは限りません。
制度に気づいた時点で、市区町村の高齢福祉担当窓口やケアマネジャーへ早めに相談しましょう。
医療費控除を申告すれば、おむつ代が全額戻りますか?
全額が戻るわけではありません。
医療費控除は、条件を満たす医療費を所得から差し引いて税負担を軽減する制度です。実際に戻る金額は、申告する方の所得や税率、ほかの控除、すでに納めた税額などによって異なります。
まとめ
介護のおむつ代を安くするために、まず確認したいのは次の2つです。
- 市区町村による紙おむつの支給・購入費助成
- 条件を満たした場合のおむつ代の医療費控除
自治体の助成制度は全国共通ではなく、要介護度や所得、在宅介護かどうかなどの条件が地域によって異なります。
また、おむつ代を医療費控除へ含めるには、傷病によっておおむね6か月以上寝たきりであることや、医師の治療を受け、おむつの使用が必要と認められていることなどが条件です。
現在は一定の要件を満たせば、初年度でも市区町村の確認書や主治医意見書の写しを「おむつ使用証明書」の代わりにできる場合があります。
制度は自動的に適用されるものではありません。
おむつ代が負担になっているときは、レシートを保管したうえで、市区町村の窓口やケアマネジャー、かかりつけ医へ相談してみましょう。毎月必要になるものだからこそ、利用できる支援を一つずつ確認することが、介護費用の負担軽減につながります。


