
「最近、物忘れが増えた気がする」
「同じことを何度も聞かれるようになった」
「自宅でできる認知症テストを試したほうがよい?」
家族や自分自身にこのような変化を感じると、認知症ではないかと不安になるものです。
インターネット上にはさまざまな認知症チェックがありますが、セルフチェックだけで認知症かどうかを診断することはできません。結果がよくても認知症を否定できるとは限らず、反対に該当項目が多くても、認知症以外の原因が隠れていることがあります。
この記事では、自宅で確認できる変化の例、医療機関で行われる認知機能検査、受診や相談を考える目安についてわかりやすく解説します。
自宅で確認したい認知機能や生活の変化
自宅でのチェックは、認知症を診断するためではなく、普段との変化に気づくために行います。
本人や家族に、次のような変化がないか振り返ってみましょう。
- 同じことを何度も聞いたり話したりする
- 出来事の一部ではなく、出来事そのものを忘れる
- 財布・通帳・鍵など、大切なものをなくすことが増えた
- 日付や曜日がわからなくなることが増えた
- よく知っている場所で道に迷う
- 買い物やATMの操作が難しくなった
- 薬の管理や支払いがうまくできなくなった
- 料理や家事の手順がわからなくなった
- 以前より意欲や興味が低下した
- 怒りっぽさ、不安感など、性格や気分の変化が目立つ
いくつ該当すれば認知症という基準ではありません。
項目の数が少なくても、以前はできていたことが難しくなったり、日常生活に支障が出たりしている場合は、かかりつけ医などへ相談しましょう。
一方で、疲労、睡眠不足、薬の影響、うつ状態、身体の病気などによって、似た症状が現れることもあります。セルフチェックだけで原因を判断しないことが大切です。
医療機関ではどのような検査をする?
医療機関では、問診や認知機能検査、身体検査などを組み合わせて、認知機能が低下した原因を調べます。
代表的な認知機能検査には、次のようなものがあります。
長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
年齢や日時、場所、言葉の記憶、簡単な計算などの質問を通して、認知機能の状態を確認する検査です。
MMSE(ミニメンタルステート検査)
日時や場所の理解、記憶、計算、言語などを確認する検査です。国内外の医療現場で利用されています。
これらの検査は、認知機能の状態を確認するためのもので、点数だけで認知症と診断するものではありません。
必要に応じて、次のような検査も行われます。
- 本人や家族への問診
- 血液検査
- MRIやCTなどの画像検査
- 日常生活の状態を確認する検査
- うつ状態やほかの病気の確認
認知症に似た症状を起こす別の病気が見つかることもあるため、自己判断せず、医師による総合的な診断を受けることが大切です。
どのようなときに受診や相談を考える?
次のような変化が続いている場合は、かかりつけ医やもの忘れ外来などへの相談を検討しましょう。
- 以前はできていた家事や金銭管理が難しくなった
- 物忘れによって日常生活に支障が出ている
- 同じ質問や話を繰り返すことが増えた
- 道に迷う、火の消し忘れなど安全面の不安がある
- 本人が物忘れに強い不安を感じている
- 家族から見て、以前とは明らかに様子が違う
- 症状が少しずつ強くなっている
チェック項目の数だけで受診の必要性を判断する必要はありません。「いつもと違う」「生活に支障が出始めた」と感じた段階で相談して構いません。
急に様子が変わったときは早めに医療機関へ
認知機能や言動の変化が突然現れた場合は、ゆっくり進行する認知症だけでなく、脳卒中、感染症、脱水、薬の影響、せん妄などの可能性もあります。
次のような症状が突然現れた場合は、通常の認知症チェックで様子を見ず、速やかに医療機関へ相談してください。
- ろれつが回らない
- 顔や手足の片側に力が入らない
- 急に会話が成り立たなくなった
- 意識がもうろうとしている
- 発熱や強い体調不良を伴っている
家族だから気づける変化もある
認知機能の変化は少しずつ現れることがあり、本人が気づきにくい場合もあります。
家族は、以前の様子と比べることで、
- 同じ話が増えた
- 家事の失敗が目立つ
- 支払いや服薬が難しくなった
- 外出を嫌がるようになった
- 性格や気分が変わった
といった変化に気づくことがあります。
気になることがあれば、「認知症じゃない?」と決めつけるのではなく、「最近、薬の飲み忘れが心配だから一度相談してみない?」など、具体的な困りごとをもとに声をかけましょう。受診や相談をするときは、いつごろから、どのような変化があったかをメモしておくと伝えやすくなります。
セルフチェックで誤解しやすいこと
結果に問題がなければ認知症ではない?
セルフチェックの結果だけで、認知症ではないと判断することはできません。
初期段階では変化が結果に表れにくいこともあります。日常生活の変化が続いている場合は、結果にかかわらず相談しましょう。
物忘れがあれば認知症?
物忘れには、加齢、疲労、睡眠不足、薬の影響、うつ状態など、さまざまな原因があります。
物忘れがあるだけで、すぐに認知症と決まるわけではありません。
早く相談しても意味がない?
早めに相談することで、治療できる別の病気が見つかったり、本人の状態に合った治療や生活支援につながったりする可能性があります。
認知症と診断された場合も、今後の生活や介護について、本人の希望を確認しながら準備を始められます。
認知症と“加齢による物忘れ”の違い
加齢による物忘れと認知症による記憶障害には、一般的に次のような傾向があります。
| 項目 | 加齢による物忘れ | 認知症で見られることがある変化 |
|---|---|---|
| 忘れ方 | 出来事の一部を忘れる | 出来事そのものを忘れる |
| ヒント | ヒントがあれば思い出せることがある | ヒントがあっても思い出せないことがある |
| 自覚 | 忘れたことを自覚していることが多い | 忘れたことへの自覚が乏しい場合がある |
| 日常生活 | 大きな支障は少ない | 家事や金銭管理などに支障が出ることがある |
ただし、現れ方には個人差があり、この表だけで認知症かどうかを判断することはできません。
物忘れの内容だけでなく、「以前と比べて変化しているか」「日常生活に支障が出ているか」も大切なポイントです。気になる変化が続く場合は、専門家へ相談しましょう。
認知症が心配なときの相談先
「いきなり専門病院へ行くのは不安」という場合は、身近な窓口から相談できます。
かかりつけ医
普段の健康状態や服薬内容を把握しているため、最初の相談先として利用できます。必要に応じて、もの忘れ外来や認知症の専門医療機関を紹介してもらえます。
もの忘れ外来・認知症外来
認知機能の検査や画像検査などを行い、認知症だけでなく、似た症状を起こす別の病気についても確認します。
地域包括支援センター
高齢者の介護・医療・生活に関する地域の相談窓口です。本人が受診を嫌がる場合や、どこの医療機関へ行けばよいかわからない場合にも相談できます。
認知症疾患医療センター
認知症に関する専門的な診断や相談、地域の医療・介護機関との連携などを行っています。利用方法は地域によって異なるため、自治体や地域包括支援センターへ確認してください。
認知症かもしれないと思ったときの流れ
認知症が心配になったときは、次のように進めましょう。
- いつから、どのような変化があるかを記録する
- 日常生活への影響を確認する
- かかりつけ医や地域包括支援センターへ相談する
- 必要に応じて専門医療機関を受診する
- 診断後は治療や生活支援、介護サービスについて相談する
セルフチェックは、変化を整理するための補助として利用できます。ただし、チェック結果がよいからといって、気になる症状をそのままにする必要はありません。
まとめ|認知症テストは診断ではなく相談のきっかけ
自宅で行う認知症チェックは、本人や家族が認知機能や生活の変化に気づくための手がかりです。
ただし、項目の数や点数だけで、認知症かどうかを判断することはできません。
大切なのは、次の点です。
- 以前と比べて変化しているか確認する
- 日常生活に支障が出ていないかを見る
- セルフチェックの結果だけで安心・判断しない
- 気になる変化が続く場合は専門家へ相談する
物忘れや認知機能の低下には、認知症以外の原因が隠れていることもあります。
「なんとなく以前と違う」と感じたら、かかりつけ医や地域包括支援センターなど、身近な窓口へ相談してみましょう。
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