高齢者の介護を自宅でしていると、最も怖いのが「転倒」です。
転倒による骨折や打撲は、寝たきりや認知症の進行にもつながりかねません。
特に高齢者は筋力・バランス感覚が低下しており、一度の転倒で生活が一変してしまうこともあります。
この記事では、自宅で転びやすい場所と、その具体的な対策・おすすめの福祉用具について、わかりやすく解説します。
■ 介護中に転倒が多い場所ベスト5

以下は、在宅介護における「特に転倒が多い」とされる場所です。
転倒しやすい場所 | 主な原因 |
---|---|
① トイレ | 狭くて手すりがない/急いで移動しがち |
② ベッドの周辺 | 立ち上がり・歩き出し時にバランスを崩す |
③ 浴室・脱衣所 | 滑りやすい/床が濡れている |
④ 廊下・階段 | 夜間の移動/手すりがない/段差がある |
⑤ キッチン・居間 | 物が散らかっていて足を引っかける |
特に多いのが、夜中のトイレ中の転倒と、寝起き直後のベッド周辺でのふらつきです。
普段、生活している『身近な空間』にこそ、注意が必要だと言えます。
■ すぐに使える!転倒防止に役立つ福祉用具5選
転倒を防ぐには、「環境」と「補助具」を整えることが非常に効果的です。ここでは家庭で導入しやすい福祉用具を5つ紹介します。
福祉用具 | 活用シーン |
---|---|
① ベッド用手すり | 起き上がり・立ち上がり時の支えに |
② ポータブルトイレ | 夜間の移動を減らして転倒リスクを軽減 |
③ 滑り止めマット | 浴室・脱衣所の床に設置し、足元の安定感を確保 |
④ 廊下用手すり(突っ張り式) | 工事不要で設置可能。移動時の安定に |
⑤ 歩行器・シルバーカー | 室内外の歩行サポート。荷物も載せられるタイプも |
市区町村の介護保険制度を使えば、一部の福祉用具はレンタル・購入補助が可能です。

我が家も、介護福祉保険制度を利用し、階段とお風呂場に手すりをつけました。
まずはケアマネジャーに相談してみましょう。
■ 転倒対策には「介護保険制度」も活用できます
転倒防止のための福祉用具や住環境の改善は、「費用がかかるのでは…」と心配になる方もいるかもしれません。
実は、介護保険制度を利用すれば、手すりやスロープの設置、福祉用具のレンタル・購入などに補助が出る場合があります。
たとえば…
- 手すりや段差解消の工事費 → 最大20万円の住宅改修費が支給(自己負担1〜3割)
- 歩行器やポータブルトイレなどの用具 → 月額レンタル料金の一部が介護保険で負担
申請には要介護認定が必要ですが、ケアマネジャーを通じて手続きできます。
まずは、「転倒が増えて心配なんです」と伝えるだけでOKです。
■ 家族でできる「見守り」の工夫も大切
機器や用具だけに頼らず、家族の工夫で転倒リスクを下げることも可能です。
- 起床・就寝前後にはそっと声かけをする
- 室内での移動をなるべく見守る(特に夜間)
- 本人が歩くときに、軽く支える or 手を添える
また、最近では「見守りセンサー付きベッド」や「転倒検知機能付きスマートカメラ」なども登場しています。状況によっては、こうした機器を一時的に取り入れるのも一つの方法です。
■ 転倒は「起こる前の対策」が鍵
高齢者の転倒は、「ある日突然」ではなく、「じわじわと危険が増している」ことが多いです。
「最近ちょっとバランスが悪いな」
「夜トイレが間に合わなくなってきたな」
そんな些細な変化に気づいたら、それが対策を始めるサインです。
転倒は防げる事故です。家族みんなで安心して過ごせるように、できることから少しずつ整えていきましょう。
■ 転倒予防のためにできるちょっとした工夫
● 1. 室内を「バリアフリー」に近づける
- 小さな段差にスロープやテープ
- カーペット・コード類は撤去
- 床に物を置かない
● 2. 足元の見えやすさを意識する
- 夜間照明やセンサーライトを設置
- 靴下は滑り止め付きタイプを選ぶ
● 3. ご本人の体調や行動の変化を見逃さない
「最近、ふらつくことが増えた」「つかまりながら歩いている」などの様子が見られたら、早めに対策を検討しましょう。
■ 「転ばせない」ことが、在宅介護を続ける第一歩です
転倒は、一度起きてしまうと取り返しのつかない事態になりかねません。
だからこそ、「まだ大丈夫」と思っているうちから対策を始めることがとても大切です。
高齢の家族が転倒してしまうのは、
「いつか起こるかも」
と、心のどこかで不安に感じていたとしても、実際に起こるまではなかなか行動に移しづらいものです。
しかし、小さな段差を取り除くことや、ひとつの手すりをつけるだけでも、転倒は大きく減らすことができます。
そして何より、こうした備えをすることは、「大切に思っている」という気持ちの表れにもなります。
介護は先が見えず、不安もつきものですが、まずは家の中の“つまずきポイント”を一緒に見直してみませんか?
家族が安心して過ごせる毎日のために、今日からできる一歩を踏み出していきましょう。
介護されるご本人だけでなく、介護する側の不安も減らすために、福祉用具や住環境の工夫を取り入れていきましょう。