
「最近、親が同じことを何度も聞くようになった」
「さっき話したことを覚えていない」
「物忘れが増えた気がするけれど、これって年齢のせい?」
こうした変化に気づいたとき、家族としてはとても心配になりますよね。
ただ、まず知っておきたいのは、物忘れがあるからといって、すぐに認知症とは限らないということです。認知症は、さまざまな原因によって認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態を指します。つまり、単なる「うっかり」や加齢による記憶力の低下とは、少し意味が違います。
加齢による物忘れでは、「朝ごはんに何を食べたか思い出せない」といったように、体験の一部を忘れることがあります。一方、認知症では「朝ごはんを食べたこと自体を忘れる」など、出来事そのものの記憶が抜け落ちる特徴があると、厚生労働省と国立長寿医療研究センターは説明しています。
この記事では、家族が気づきやすい認知症の初期症状チェック10を、わかりやすく丁寧にご紹介します。なお、これはあくまで目安であり、診断ではありません。気になる変化があれば、早めに医療機関や地域包括支援センターへ相談することが大切です。
認知症の初期症状チェック10
1.同じことを何度も聞く・話す
認知症の初期では、新しいことを覚えにくくなるため、同じ質問を繰り返したり、同じ話を何度もしたりすることがあります。国立長寿医療研究センターでも、記憶障害の例として「同じことを何度も言ったり聞いたりする」ことが挙げられています。
2.しまい忘れではなく、探し回ることが増えた
年齢とともに「置いた場所を忘れる」ことはありますが、認知症では物をどこに置いたかだけでなく、どうやってそこまで来たのかがたどれないことがあります。CDCも、物をなくして手順をさかのぼれなくなることを警戒サインの一つとしています。
3.時間や日にち、場所の感覚があいまいになる
今日は何日か分からない、約束の日時を何度も間違える、慣れた場所で迷う。こうした変化は、認知症でみられる見当識障害の可能性があります。時間や場所、周囲の状況を正しく認識する力が落ちることは、認知症の代表的な症状の一つです。
4.料理・支払い・服薬管理など、段取りが必要なことが難しくなる
認知症では、計画を立てて順序よく行動する「実行機能」が低下することがあります。そのため、以前は普通にできていた料理、買い物、請求書の支払い、薬の飲み分けなどでミスが増えることがあります。厚労省の資料でも、買い物・食事の支度・服薬管理は早期から低下しやすい生活機能とされています。
5.慣れていた家事や操作に戸惑う
掃除機の使い方が分からなくなる、電子レンジの操作に時間がかかる、いつもの道順や手順で戸惑う。CDCでは、家庭や仕事、趣味などの慣れた作業が難しくなることを警戒サインに挙げています。
6.言葉が出にくい、会話がかみ合いにくい
「あれ」「それ」が増える、物の名前が出てこない、話の途中で何を言いたかったか分からなくなる。認知症では言語の理解や表出に障害が出ることがあり、会話のしにくさとして表れる場合があります。
7.判断力が落ち、不自然なお金の使い方が増える
不要な買い物が増えた、訪問販売や詐欺にひっかかりやすくなった、季節に合わない服装をしている。CDCは判断力の低下を重要なサインとしており、認知症では社会的認知や判断の障害が起こることがあります。
8.外出や人付き合いを避けるようになる
以前は楽しんでいた趣味や近所付き合いに消極的になり、家にこもりがちになることがあります。CDCでも、仕事や社会活動から身を引くことは警戒サインの一つとされています。単なる「疲れ」や「面倒」と決めつけず、変化の背景を見ることが大切です。
9.怒りっぽい、不安が強い、性格が変わったように見える
認知症では、記憶や理解力の低下そのものだけでなく、不安、抑うつ、意欲低下、興奮などの心理・行動面の変化が出ることがあります。以前より疑い深くなった、急に怒りやすくなった、落ち着きがなくなったと感じたら注意が必要です。
10.「何かおかしい」が何度も重なる
一つひとつは小さな変化でも、複数のサインが続くときは見過ごせません。認知症は記憶だけの病気ではなく、注意、判断、言語、視空間認知など、さまざまな認知機能に影響が及びます。ですので、「物忘れだけ」で判断せず、生活全体の変化を見ることが大切です。
「年齢のせい」との違いはどこ?
大きなポイントは、日常生活に支障が出ているかどうかです。
加齢による物忘れは誰にでも起こりますが、認知症では記憶以外の機能も低下し、家事、金銭管理、服薬、移動などに影響が出やすくなります。
また、「物忘れ」はあってもまだ認知症ではないMCI(軽度認知障害)の段階もあります。国立長寿医療研究センターは、MCIを「軽度の認知機能低下が見られるが、認知症ではない状態」と説明しています。厚労省の資料でも、MCIは健常と認知症の中間の状態で、回復する人もいるとされています。
気になったとき、家族が最初にすること
まずは、叱ったり責めたりせず、いつから・どんな場面で・何が増えたかをメモしておきましょう。受診時にも役立ちます。
そのうえで、かかりつけ医、もの忘れ外来、認知症疾患医療センター、地域包括支援センターなどに相談するのが安心です。厚生労働省は、地域包括支援センターが全市町村に設置されており、認知症に関する相談先として案内しています。
症状が軽い段階で気づき、適切な治療や支援につながれば、進行を遅らせたり、今後の生活を整えたりしやすくなります。CDCも、早期診断は原因の特定や早期治療、今後の計画に役立つとしています。
まとめ
親の物忘れが増えると、とても不安になります。
ですが、物忘れ=すぐ認知症ではありません。大切なのは、「以前と比べて変化があるか」「生活に支障が出ているか」を落ち着いて見ることです。
同じことを繰り返す、時間や場所が分からなくなる、家事やお金の管理が難しくなる、人柄が変わったように見える――こうしたサインが重なっているなら、早めに相談してみてください。
家族が早く気づくことは、本人を追いつめるためではなく、安心して暮らし続けるための第一歩になります。
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